積載

　地方紙・静岡新聞社と地方局・SBS静岡放送が共同で運営するニュースサイト｢＠S(アットエス)｣の配信記事から『重量超過で初の告発　中日本高速、静岡県警に』に憤る。


　過積載と言えばかつては、建設業界が抱える悪弊の代名詞のように言われたが、業界挙っての対策が奏功し、最近はあまり問題になることが少なかったように思う。

　この度の告発は運搬を引き受けた側のみで、荷主は対象となっていないようだが、トレーラーの積み荷は明らかに基礎工事用のコンクリートパイル(杭)。運ぶよう依頼したのはコンクリート製品メーカーか、或いは施工業者か、何れにしても建設業界の重要な構成員である。
　この業界の悪弊が、また再発したようだ。


　もっとも以前の過積載は、砕石・砂といった基礎的な素材、または解体工事に伴って発生した廃材の運搬が中心だった。そちらの業界では、過去への反省から法令順守が徹底し、ゼロではないにしろ違反は減っている。
　同じ建設業界とは言え、違反の主体は変遷している。

　

　仕事に絡んで関係者からお話を伺うと、主に土砂を運ぶダンプカーは荷役に力作業を要さない(バックホウやホイールローダーが積んでくれる)こともあって、女性ドライヴァーの参入が目覚ましく、比較的確保しやすい。
　一方で鋼材や重機を運ぶ大型トラック・トレーラー等は、運転操作の難しさや荷役作業の厳しさからドライヴァーが慢性的に不足気味で、燃料高騰・高齢ドライヴァーの離職・環境規制強化に伴う老朽車輌の更新といった事業環境の悪化と相まって、事業継続を諦める企業も多いと聞く。
　
　違法な過積載を直接的にやらかした、運送会社およびドライヴァーが検挙されるのは当然だが、堅調な公共投資で潤う荷主側：建設業界と、人手および車輌不足に悩む運輸業界とのギャップが、悪質な違反を惹き起す背景にあることを理解せねばなるまい。

　
　
　併せて、報道機関および記事を読む人に要望したい。
　冒頭の静岡ローカル記事は、地元企業に阿ったか企業名を明示していないが、他報道では「丸和運輸倉庫」と企業名を示している。ちなみに静岡ローカル記事も、添付写真にはしっかりと企業名が写りこんでいる。

　建設業界だけでなく運輸業界の監督も担う国土交通省は、事業者名を挙げて処分を発表するので、マスコミが敢えて隠す必要性は全くない。全て報道すべきだ。

　ただ、その際は企業名が正確に示されなければならない。
　一部で「丸和運輸」と省略して報じた例が見られた。

　類似または完全に同じ商号を持つ運送会社は、全国に多数存在する。
　「お前の所か？えげつない違反させてるのはぁ！」と苦情の電話が殺到しているかもしれない。

　ただでさえ経営が厳しいのに、他者の粗相まで背負い込まされては、たまったものではなかろう。