• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2019年09月15日

擁壁

擁壁  ニュース専門チャンネル「TBS NEWS」(旧「TBS NEWSBIRD」)内のローカルトピックス「列島レポート」から、本日視聴したRSK山陽放送のコンテンツ「豪雨から1年 復旧手つかず」に注目。

 なお当該コンテンツは先月製作し、最初の放映に供されたもので、TBS・RSKともに現在は動画配信を行っていない。
 代わりに、ほぼ同じ内容をトレースし、登場する専門家も同じ地方紙・山陽新聞のコンテンツ『土砂崩れ庭が崖に…復旧手つかず 豪雨で岡山・富原地区 苦悩の住民』を参照されたい。


 専門家として現地に派遣されていたのは、日本技術士会岡山県支部に所属する技術士(応用理学部門・地質)の小林昇氏で、なかなか一般向け報道ではお目に掛からない肩書にして、若輩ながら同じく技術士(建設部門)を名乗る者として、ついつい番組に見入ってしまった。

 ちなみに小林氏は、地質調査会社に所属するエンジニアと伺っているが、取材には「日本技術士会」として応じているので、委託料を頂いての調査業務ではなく、技術士の社会貢献策の一環として、傷害保険料および交通費を負担してもらう程度の実質「手弁当」で現場入りされたのではと想像する。

 士業のうちでも、弁護士や公認会計士などに比して社会的認知度の低い「技術士」のプレゼンスを向上させるため、このような報道に触れる機会が増えてほしいものである。



 私は地質の専門家ではなく、即ち擁壁崩壊のメカニズムを物理的に分析する立場にないが、建設エンジニアの立場で、公表されている資料や、放映された現場画像から擁壁崩壊現場の分析を試みたい。


 岡山市北区富原地区における宅地擁壁崩壊の現場は、児島湖(=児島湾に面した汽水域)に注ぐ笹ケ瀬川沿いの低地(=沖積低地)に突き出した、半島のような洪積台地上にある。
 低地は地下水位が高く(-1m未満)、極めて軟弱な地盤であるが、現場宅地が拓かれた高台は礫質の締まった地盤で、比較的良好である。
 しかし宅地開発に際し、切土・盛土を施して大規模に改変されており、原地盤の強度がそのまま維持されているものではない。

 被害のあった5軒は、1970年代末に後から造成・建築されたようで、1975年に国土地理院が撮影した航空写真には、被害を受けていない東側および北側上段の家しか写っていないが、1980年撮影の航空写真では被害家屋が出揃っている。
 特に西側から3軒は、他の家屋に比して南側へ張り出して造成されており、擁壁高さも他の敷地より大きかった可能性がある。

 国土地理院の地図を参照すると、崩落現場北側上段(被害家屋のレヴェルからは数m上か)に建つ家屋に20mの等高線、崖下の工場((株)オカダ岡山工場)の建屋に10mの等高線があり、擁壁そのものの高さは、報道とは異なり恐らく10mに満たない。

 報道で映った擁壁の崩落跡を見るに、コンクリート製の間知ブロックを積み上げた構造のようだが、規則上および安全上間知ブロックだけでは5mまでの擁壁しかできず、仮に10m近い高さがあった場合、その上数m分は別構造の擁壁が乗っていたものと思われる。
 
 崩落は、異論を差挾む余地なく豪雨が要因であるが、建屋はほぼ完全な状態で残っていることから、宅地造成や住宅基礎の施工面で欠陥や瑕疵は無い。
 造成に問題があれば、建屋ごと地盤全体が滑り落ちるか、大量の水分を含んで土圧が増し擁壁を押し出す形で崩れ、建屋は真下へ沈み込んでいただろう。
 擁壁周辺だけが薄く剥がれ落ちるように崩れており、間知ブロック擁壁の基礎部分(標準的には、法尻の地表を掘り下げて砕石を敷き均し締め固め、その上に型枠を組み生コンクリートを流し込んで築造する)が豪雨の影響で最初に崩れ、擁壁が自重で落下•破壊されたものと考えられる。
 地図には、10m等高線に沿って水路らしきものが描かれ、南側には水田が広がっていることから、崖下から程なく沖積低地の軟弱地盤が始まっていよう。


 擁壁を築造した当時の施工方法が不明なので確定的なことは言えないが、基礎部分の地盤にセメント系の改良材を混和するなどして改良するか、コストが許すなら地滑りの抑止を兼ねて鋼管杭等を打ち込んでおけば、崩落は防げたものと推測する。
 復旧に際しては、更に崩落の恐れがある不安定な崖地と、崖下の工場に挟まれた狭隘な場所に、強固な基礎を築造する工程・工法の慎重な検討から始める必要がある。


 なるほど、違う分野の技術士が分析しても、大筋で結論は同じとなりそうだ。
 現状の分析が済んだら次はいよいよ、被災者の本格的な救済に取り掛からねばならない。

 技術的な面だけでなく、経済的・法律的な面からのアプローチ=他のプロフェッショナルの参画も求められる。

 官民の別なくあらゆる分野のエンジニアおよびプロフェッショナルがフルに知恵を出し合って、被災地を佳き方向へ導いていければと願う。


関連情報URL : http://www.geobrain.com/

イイね!0件



タグ

今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

H1cupをWebニュースで取り上 ...
ハピワンさん

ついに来ました。
ヒデノリさん

【物欲日記】アシックスのさまざまな ...
bijibijiさん

写真編集用自作PCの謎カスタム
灰色さび猫さん

3日連続で昼からゴロゴロ⚡️鳴りゆ ...
S4アンクルさん

みんカラ開発チームからは音沙汰無し
キャニオンゴールドさん

この記事へのコメント

コメントはありません。

プロフィール

「育児 http://cvw.jp/b/1043160/47663127/
何シテル?   04/18 19:29
 建設業界で禄を食む文系出身(経済学専攻)のプロフェッショナル・エンジニアが、愛車整備・政治経済・文化学術・スポーツそして土木施工の現場で日々記した野帳を公開し...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/8 >>

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

愛車一覧

メルセデス・ベンツ Gクラス カブリオ メルセデス・ベンツ Gクラス カブリオ
 G320カブリオ(V6・ミッドナイトブルー)を愛車にしています。  息の長いGクラスで ...
その他 その他 その他 その他
 サントレックスの軽規格折りたたみトレーラーです。以前所有していたキャンピングトレーラー ...
メルセデス・ベンツ Gクラス ジュラシックワールド・オフィシャル (メルセデス・ベンツ Gクラス)
G550 as a movie star! Coming soon.
メルセデス・ベンツ Gクラス ドイツ連邦軍多目的車輌「ヴォルフ」 (メルセデス・ベンツ Gクラス)
 ドイツ連邦軍が1989年~1994年にかけて10,000両以上もの大量調達を果たした軍 ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation