Tom Catさんが平成30年11月15日、ご逝去なされました。
謹んでお悔やみ申し上げます。

Tom Catさんは、私の大切なバイク仲間・カメラ仲間であり、峠からサーキット、写真活動までお付き合いさせて頂いておりましたが、平成30年11月4日の交通事故によるダメージが原因で帰らぬ人となりました。

いわゆる、右直事故でした。
事故の概要は、Tom Catさんがバイクで直進中、対向車線を走行中の車が前方をよく確認せずに右折したことにより、Tom Catさんが車の側面に衝突したというものです。
警察によれば、Tom Catさんはスピードを大して出していなかったとの事です。
また、事故の目撃者の証言によれば、右折といっても速度を落とさなくては曲がれないような直角の交差点ではなく、スピードを落とさずにそのまま進入できるような形状の右折ポイントであったようです。そして、加害車両には右折ポイントにて減速するような動きは無く、そのまま曲がってきたとの事でした。
最終的に加害者の刑事裁判が確定しなくては詳細な事故態様はわかりませんが、圧倒的大部分は加害者の過失が原因と思われます。

Tom Catさんは、ライディング・テクニックという点もさることながら、交通状況の把握という点においても優秀なライダーでした。街中など交通量の多い道路では、慎重な走りに徹する方でしたが、彼ほどのライダーであっても避けることが相当に困難であったのだろうと思います。
事故当時のTom Catさんは、サーキット走行時と同様のフル装備ではありましたが,衝突により心肺停止。病院での人工呼吸器でなんとか心臓が動いておりましたが、間もなく脳死との判定を受けました。
私は脳死(植物状態とは異なる)について詳しくなく、ネットで調べたところによれば、脳死となった場合、およそ10日前後が残された時間という事であり、誠に残念ながら、事故から11日後にご逝去なされました。
無念でなりません。
【故人との思い出】
Tom Catさんとの付き合いは、隼駅祭りがキッカケでした。

当時、私が31歳にして突然ライダー宣言をして、初めて買ったバイクがNinja250でしたが、その頃から隼に憧れており、32歳のときに隼を買いました。
そして、隼では初となる隼駅祭りに参加しまして、その時にマットブラックのヤマハR1があり、なんと「隼」の文字の張り紙がカウルに貼り付けてあったのに気付きました。
「面白いコト考えるな〜」
と思いつつ撮影してみんカラで紹介したところ、それがTom Catさんのバイクであり、ご本人よりコメントを頂きましたのがファーストコンタクトでした。

その後もコメントのやり取りを続け、翌年の隼駅祭りのタイミングで、「一緒に行きましょう!」とお声がけ頂いたのです。
ドキドキの対面。
遠くからアクラボビッチのマフラー音が聞こえてきて、カッコいいR1が颯爽と登場。
真夏だけど…サーキットと同様のフル装備にはビビリました。
安全に徹する方ですので、Tom Catさんの影響で私も常にフル装備をするようになりました。
Tom Catさんは人付き合いがお好きな方で、「どうも〜初めまして〜」という感じの優しいお話しぶりであり、この頃から随分とお世話して頂きました。

この時に撮った写真が、のちに隼駅祭りの公式ホームページの表紙を長らく飾ることになりました。
Tom Catさん、大変喜んでおられました。
Tom Catさんは、隼以外のバイクに「隼」文字の張り紙を貼るパフォーマンスの創始者であり、後続者が多発するという面白い現象が起きておりました。
思えば、この頃からカメラに関心を持ち始めたご様子でした。

しばらくは手持ちの古いデジカメや携帯電話で撮影を続けておられましたが、ある時、Tom Catさんから「どんなカメラがいいでしょうか?」とのご相談を頂きましたので、私としては、バイクでの持ち運びのため小さいのが良いと考え、「OLYMPUS製OM-D EM-5 マークⅡ」をオススメしました。これが、Tom Catさんの相棒となったのです。
ご自身の愛車のみならず、友達の愛車、自然の風景、植物、カフェの店内など、特定のジャンルにとどまらず幅広く撮影されておられました。

走りについては、若い頃から取り組んできたミニバイクレース活動の経験があり、その後はオフ車、そして大型に興味を持たれてからは最終的にR1という事で、私とは比較にならないくらい格上も格上。
まさに鬼神の如き走りでした。
結局、一度も後ろについて走る事ができませんでした。

峠での練習にはよくお付き合い頂いておりまして、休憩の合間のバイク談義,カメラ談義は最高に面白かったです。
Tom Catさんは,ますますカメラに熱心になられており,最近始めたInstagramがお気に入りでした。私もTom CatさんがキッカケでInstagramを始めたところです。
親しみやすく,好奇心旺盛な性格でしたので,SNSを通じて様々な方とコミュニケーションを取られておられ,ぐんぐん交友関係を広げておられました。
そういう新しい人との出会いを大切になさる方だからこそ,みんカラ上で私ともコンタクトを取って下さったわけで,私としましては最高の出会いであったと思います。

11月16日のお通夜,11月17日の告別式では,これまでの色んな思い出が頭をよぎりました。
Tom Catさんの遺影,そしてご遺体を見ながら,これが最後のお別れだと己に言い聞かし,最後までTom Catさんのお顔を目に焼き付けました。
棺の中のTom Catさんは、すっかり冷たくなっていました。
人工呼吸器の装着による口周りの圧迫が原因で、口元が腫れ上がっていました。
彼のご遺族、ご友人たちと一緒に、Tom Catさんが大好きだった花々を棺の中いっぱいに埋めました。
各々が別れの挨拶を言い、私は「どうか見守っていて下さい。」と声なき声で述べました。
最後は、ご遺族の承諾を得て、霊柩車に棺を運ぶ出棺のお手伝いをさせて頂きました。
Tom Catさんの人生は、これで幕を下ろしたのであります。

Tom Catさんに教えて頂きたい事はたくさんありましたし、これからも一緒に走っていけると思っていましたので、今回の件はいまだに信じられない事態であります。
私のバイクライフがどのような結末を迎えるのか知る由もありませんが、どうか天国から見守って頂きたいと切に願います。そして、ゆくゆくは私がTom Catさんの年齢を超えた時、元気にやっていますよと墓前で報告できれば嬉しいものです。
改めて、故人のご冥福をお祈り申し上げます。
【バイクライフ考察】
私としましては,Tom Catさんの死を悼みつつも、このことから何かを学び取らなければならないと思っています。
そのため,自らの安全を如何に確保していくか,そして,最悪の事態に至った場合に備えての各種整理など,バイクライフについて考察していきたいと思います。
もし、以下の考察が少しでもライダーの皆様のお役に立つことができれば、Tom Catさんに対するせめてもの供養になると信じております。
①エアバッグについて
ライダーという生き物は本当に困ったもので、親しい友人がこのような事態に遭われても,バイクを辞めることができません。
故にライダーは,バイクと分離することのできない「死」を常に己の傍らにおきながら公道やサーキットを走るわけですが,どれだけ技術を磨いても,また,その時々の走行環境に応じて適切な走りを選択するという判断能力をどれだけ磨いても,どうにもならない事もあります。
私たちの努力でコントロールできない「どうにもならない事」に遭う場合、それはもはや「運命」というしか無いのかも知れません。
しかしながら,今回,Tom Catさんが「どうにもならない事」に直面してしまった(少なくとも,私はそういう事故態様であったと考えている。)事で,ご遺族やご友人等の深い悲しみを目の当たりにし,この「どうにもならない事」に直面しても徹底的に「死」に逆らい,命を繋ぐ機会を少しでも手繰り寄せることができないであろうか,との思いに至りました。
その具体的な方法としましては,「バイクから完全に引退する」という選択肢もあるのですが,前述のとおり,多くのバイク愛好家にはその選択肢は無いと思われます。
となりますと,エアバッグ装備しかないと思っています。
それでも「どうにもならない事」が消え去ることはありませんが,これを更に小さくすることはできるので,この意味は極めて大きいと考えます。
私は扶養家族のいない独身ですので,私がこの世から消えることによる周囲への影響は比較的小さく収まりますが,特に未成年のお子さん等の扶養家族がいらっしゃる方におかれましては,死ぬに死ねないでしょう。
また,会社を経営されている方におかれましては,従業員の生活も抱えているものと思われます。
あるいは,会社の重要な地位にいらっしゃる方におかれましては,会社の業務に大きく穴をあけることになります。
このような社会的責任を負う立場の方がバイクに乗る場合,事故の影響を最小限に抑える努力が必要であり,もはやエアバッグ装着は義務と言っても差し支えないものと思料いたします。

私たちは,運のいいことにMotoGp選手に供給されている最先端のエアバッグシステムを利用する事ができます。
これには,ダイネーゼ「D-Air」とアルパインスターズ「TECH-Air」のエアバッグシステムがあり,それぞれ公道用とサーキット用があります。
(正確には,「TECH-Air」に関しては,商品は一つだが公道用とサーキット用のアルゴリズムが別々に用意されており,「D-Air」に関しては用途別に商品が用意されている。)。

さらに,日本国内には,いち早くバイク用エアバッグを開発した無限電工㈱の「hit-air(通称,着用するエアバッグ)」もあります。
値段や使い勝手,走行シチュエーションの違いによるものと思われる防御範囲・防御方法など,各商品で違いがあります。
一度,是非ともエアバッグ装着をご検討されてみてはいかがでしょうか。
なお,私は,ダイネーゼの最新作エアバッグ内蔵ツナギ「D-Air」を購入する予定です。
(ただし,ダイネーゼ本社の製造過程にトラブルがあり,日本へのデリバリーが遅れています。本来であれば今月中旬には買うつもりだったのですが。場合によっては,アルパインスターズ「TECH-Air」に変更するかも知れません。)。
②リビングウィルについて
前述のエアバッグを装着していても,事故態様によっては死を免れることができず、植物状態になる可能性があります。
この場合,生命維持装置による延命を実施するか否かが常に問題になります。
死生観は人それぞれですので,もしあなたが延命措置を望まないのであれば,その意思を明示することができなくなる前に何らかの形でそれを明示しておく必要があります。
その方法は様々ですが,最も身近なものとしては,運転免許証の裏面にある署名欄(臓器提供の体裁ではありますが、リビングウィルの一つの形です。)に記載したり、遺書に記載したりする等、様々な方法があります。

と言いますのは,私は,家族の精神的負担を軽減させるために必要ではないか,と考えているのです。
すなわち,厚生労働省のガイドラインによれば,本人の意思が確認できない場合は「家族等が本人の意思を推定できる場合,その推定意思を尊重し,本人にとって最善の方針をとる」とありますので,もし本人がリビングウィルを実施していない場合,家族が本人のこれまでの生き方・考え方から延命措置を臨むような人間であったか否か等を判断することになり,己の人生であるにもかかわらず,その終末の決断の重みを家族に背負わせることになります。
それをさせないために,己で最初から決めておく,という考えです。
皆様の人生観に多く関わるところですが,一度,リビングウィルの実施をご検討されてもよろしいかと思います。
③保険契約の見直し(特にサーキット・ライダー)
現在,ある保険会社(以下「本件会社」といいます。)に対して,サーキット走行時の負傷における傷害保険の補償について質問を行っているところです。
私は扶養家族のいない独身ですので,とりあえず生命保険までは不要であろうと考えており,傷害保険について聞いています。また、サーキット走行料に保険代も含まれていますが、それだけでは足りないかも知れないと思っております。
本件会社には、サーキット特約がありました。
ただ,サーキット特約を付帯させた本件会社の傷害保険に加入した場合でも,「レース走行及びレース走行のための練習における負傷に関しては、補償ができない」という事です。
ただし,特殊な保険契約や特約が存在するかも知れませんので,詳細はご契約されている保険会社へお問合せ下さい。
問題は,私のようにレース走行及びレース走行のための練習はしないが,ライセンスの有無を問わずフリー走行枠を走ったり,バイクショップ等主催の走行会で走ったりする場合(以下「本件走行」といいます。)はどうなのか,という事ですが,本件会社の窓口の方に聞いても,回答が曖昧で要領を得ません。
まず,サーキット特約を付帯させていない通常の傷害保険の場合,本件走行中に負傷した場合に補償が受けられるのか否か。
原則として「競技・競争・興業(これらに準ずるものおよび練習を含みます。)」における事故については,通常の傷害保険では補償対象外ですので,先般のレース走行及びそのための練習をされる場合の補償はまず無理です。
この「これらに準ずるもの」というのが極めて厄介です。
本件走行が「競技・曲技・興行」に該当するとは思えませんが,「これらに準ずるもの」に該当する可能性がありそうです。ただ,なかなか本件会社が明確に回答してくれず,さっぱり分かりません。これに該当するか否かで,通常の傷害保険でも足りるのか,サーキット特約を付帯させなければならないのか,判断が分かれます。
さらに悩ましいのでは,サーキット特約を付帯させたとしても,事故態様によっては補償ができない事もある,との指摘があった点です。
一体どういう形態の走行を本件会社が考えているのか,何度聞いても分かりません。
ここは,それぞれの保険会社に根気よく問い合わせるしか手はないと思います。
皆様の走行形態を詳細に保険会社に伝え,その形態の走行中における負傷について補償を受けられるのか否か,確認してみるのもいいと思います。
④自身の情報の整理
Tom Catさんの場合,携帯電話のロックを解除する事ができず、緊急事態を各方面に伝えることにご家族が難儀されておられました。
改めて考えてみると、迅速に各方面に連絡を取る事は意外に難しいです。
そこで、緊急時連絡リストを用意しようかと思っています。
友達、職場の上司など、名前、部署名、電話番号、メールアドレス等をエクセル等で整理しておけば、やりやすいかも知れません。
その他にも、皆様が契約している全ての保険契約の内容が分かる書類など、もし自身に不幸があった場合に家族が速やかに重要情報にアクセスできるような体制作りをしていても損はありません。
併せて、管理方法には気を付けなければなりませんが、家族にしか分からない形にて、携帯電話のロックやパソコンのログイン情報など、どこかに添えておく事もいいかも知れません。
【最後に】
おそらく私は、本日をもって公道走行から引退し,サーキットのみ走る事になると思います。
まだ悩んでいますが・・・。
ナンバーを切ると,ライセンスの種類が異なってきて,私にはハードルの高い走行になる可能性が高いです。
公道は走らないまでも,ナンバーは残すかも知れません。
それから,上記①〜④に関して、何か具体的な知見をお持ちの方は、是非コメント下さい。
それが多くのライダーを救うことに繋がれば幸いです。

以上です。
ご拝読ありがとうございました。