私が社会人になった頃の1980年代末期は、レコード針を使ったアナログのレコード盤の時代はすでに終わりに近づいていて、1982年に発売が開始されたCD(コンパクトディスクの略)は、数年もしないうちに音楽再生の主流となっていきました。
そんなCDが世に爆発的に普及し始めた頃に、私はちょうど社会人になったのですが、それまでの学生時代は小学生の終わりごろに買った大型ラジカセ(ラジオカセットの略)で、
もっぱらFM放送をカセットテープに録音して聴いていたのですが、その後はもらい物のオンボロセットのレコードプレーヤーとアンプとスピーカーで音楽を楽しんでいました。
でもレコード盤はキズが付きやすく静電気でパチパチと音を立て、しかもハウリングも起こりやすく、立派に再生しようと思えばレコード盤に刻まれた溝から電気信号に変換するために物理特性の良い、ある程度高価なレコードプレーヤーと再生針が必要なのがレコードでした。
それが扱いに不便で再生装置にお金がかかる針式レコードから、時代はデジタル記録され再生ボタン一つで非接触で再生される安定性の高いCDへと音楽愛好家は流れていきました。

(現在でも筆者が所持しているデンオンのDP-59L : DENON MUSEUMより)
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そんな折、たまたま知人宅で聞いた自分の所持していたCDの音質にビックリ。
そのCDは、かの有名なフルトヴェングラーが指揮し、名ソプラノのフラグスタートがイゾルテを歌った1952年にイギリスにてテープに収録され、生誕100年目となる1986年 2月に初CD化された東芝EMIのCD、ワーグナーのトリスタンとイゾルデでした。

(CD初出時のフルトヴェングラー指揮 トリスタンとイゾルデ : 筆者手持ちのCDより)

(約3年後の1989年7月に再発売された同録音 : 筆者手持ちのCDより)
アナログレコード時代は、最終的な塩化ビニールで出来た市販レコード盤を製作するのに、ダイレクトカッティングでなければ、レコード製作過程で編集とかもするために、恐らく3~5回ぐらいはアナログのオープンリールテープで収録テープから幾度もダビングしていたので、音質の劣化はかなり激しいかったです。

(アナログ時代の産物 LPレコード : ウィキペディアより)
ところが時代が大いに進んで、CD製作過程での全デジタルマスター化と最終メディアのCD化により、1952年にイギリスで録音された演奏が、当時の収録テープのままのような音質で甦りました。
その知人宅で聞いた最新のCDの音質と、当時単体のCDプレーヤーだけはすでに購入していたものの、自宅で使っていたもらい物の超~古いアンプとスピーカーとの音質差に落胆。
ちなみにこちらは フルトヴェングラー 1942年 3月演奏のベートーベンの第九交響曲
テープ録音の黎明期に、マグネトフォンにて実況録音された第二次大戦中の録音です。
上の動画は訳ありで、ここからは直接見れないため同じ音源を用いたと思われる別の動画。
ただしこちらの動画は、エコーとかがかなり付加されていて、
上の動画よりは音質は劣っているように見受けられます。
なおこの第九の音源ですが、ここにアップした人はどこから入手したのか分からないのだが、たくさん出回っている1942年 3月 22日-24日(同年の 4月19日の演奏のも混じっているかも)に収録されたと思われる大戦中の第九の音源の中で、今まで私が聴いた範囲では最も歪が少なくて高域が澄んでいる録音でした(特に上側の動画)。ただ多少のエコー付加やイコライジング等がなされているようです。

(ドイツが開発した交流バイアス方式のテープ録音機 マグネトフォン : ウィキペディアより)
今までこの第九のほとんどの音源は、ダビングを繰り返したような歪が多く濁った音のものばかりでいまいちだったのですが、オリジナルテープにより近いような、歪の少ない透明感あふれるこの音源を入手でき (第四楽章のトランペットが奏でる歓喜の歌のファンファーレなどは実に美しい)、
後年のバイロイトの第九などよりこちらのほうがオーケストラも格段の違いで、さらに演奏自体が円熟していて第三楽章の弦楽器の響きなどはもうこの世の物とは思えないほどで、私個人的には1951年のバイロイトや1954年のフィルハーモニアの第九などよりこちらのほうが好みです。
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そして当時発売されたばかの上記トリスタンのCDを聴いてビックリしたお話しは、私が社会人になって間もない頃でしたが、この体験により最新のスピーカーの購入と、思い切って自作の真空管式アンプを作ろうと決意、早速どのような設計がベストなのか知識のないなりに当時いろいろと自分で調べました。
現代ならネットがあるので、検索すれば調べ物はけっこう簡単に分かる場合も多いけど、当時は携帯電話すらないCD以外はほぼアナログの時代、本屋さんのオーディオコーナーで月刊誌やら製作記事の単行本をとにかくいろいろと探しました。
すると一冊の本を見つけました。
近年お亡くなりになられたらしい金田幸之助さん著 「タマアンプ Hi-Fi名器の再現を」 という本です。
この本は1987年に誠文堂新光社から発刊された単行本で(上記写真)、現在はどうやら絶版らしいのですが、当時はよく本屋さんに並んでいました。詳しくは当ページの「その他 その他」のフォトギャラリーにて解説付きで掲載です → そのサイトは
こちらです。
→
https://minkara.carview.co.jp/userid/1144014/car/964839/2839759/photo.aspx
この本の中には、いくつかのアンプの製作記事が掲載されていますが、
1.真空管には寿命があるので、入手しにくい球や高価な球の使用は一切避ける
2.歪率など考慮し、余裕を見越して出力がある程度有するアンプを作る
3.特殊な部品を一切使わないようにする
4.低域特性の良いアンプを製作する
5.NFBが軽めでアンプの内部抵抗が低いのを選択する
6.めったに修理することはないが、重たいアンプの保守をしやすいケースを使うこと
という条件をすべて満たす製作記事を探すと、
いちばん最後のページに掲載されている6550AのULPPパワーアンプでした。
この製作記事中のULPP(ウルトラリニアー)接続というのは、
PP用の出力トランスの1次側の巻数比43%ほどの位置に接続タップ(SG)が出ていまして、このタップをビーム管などの5極管のスクリーングリッドにつなぐと、真空管の出力の低下はあまり無いものの、出力管の動作が3極管接続に近づき内部抵抗が大幅に下がって、ダンピングファクターが良くなり歯切れ良くスピーカーを駆動するアンプになる、というものです。
簡単に言えば、出力は大幅に減るが真空管の内部抵抗が小さく歯切れが良くなる3極管接続と、増幅効率が良くてパワーが取れるが内部抵抗が高めの5極管接続との、それぞれの良いとこ取りみたいな回路です。そのせいかこの回路を採用している製作記事はかなり多いですね。
調べてみると1951年(太平洋戦争終了の6年後)に、アメリカのトランスメーカー アクロ・プロダクツ社というところが、このULタップ付きトランスを初めて発売し、この接続形態をとったアンプのことを「ウルトラリニアー接続」と呼んだようです。
この回路を考案した人、今と違ってコンピューターのシュミレーションなど全く無い時代に、いろいろと実験を積み重ねて地道にアンプの改良に取り組んだのでしょうね。
ちなみに1946年に登場したコンピューター「ENIAC」は、
真空管を17468本も使って回路を構成していたとか(下写真)。
ビル全体が真空管で埋め尽くされていたようですよ。まさに巨大な電熱器です。

(世界最初?のコンピューター ENIAC : ウィキペディアより)
しかしこの50年ぐらいの間に技術は大いに進み、ビル1棟分もの真空管回路が、現代の世になると微細化が進み細菌より小さな回路となって、全体でもわずか1~2cm角ぐらいの小さなCPUチップになりましたね。

(現代のコンピーターに使われるCPUの回路 : ウィキペディア)
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で結局、故 金田幸之助さんが設計し、その単行本で紹介されていた米GE(ジェネラルエレクトリック)社が開発した、大出力ビームパワー管6550Aを使ったパワーアンプを自作することにしました。
まず製作に必要な部品を1つも不足することなくすべて集めて、板金工作もしながらハンダゴテを連日握って製作したのがこのアンプなのですが、製作本の写真のように普通は観賞と放熱を兼ねて、外観は丸出しにすることが多い真空管アンプだけれども、
・ 我が家では部屋が狭くて、オーディオラックにしまわなければならないこと
・ 不用意に手が触れて火傷になったり、紙などが落ちて火災になるのを防ぐこと
・ 落下物とかで虎の子の真空管を破損しないようカバーをかけること
などを考慮し、当時あった鈴蘭堂という自作オーディオアンプのシャーシメーカーの製品で、最も大きなサイズの、放熱用天板付きDCトランジスターアンプ用のDC-5000というシャーシをチョイスしました。

(放熱のためたくさんの穴が開いている、シールドも兼ねた自作アンプの天板)
この上写真のように、天板が付属していた自作アンプ用の市販シャーシでは、この鈴蘭堂のDC-5000という名のシャーシがいちばん大きくてしっかりしていました。しかも重量30kgものアンプを安全に引き出すには、このオーディオラックの引き出せる棚板とともに、フロント部には取っ手も必要ですね。
ただ25年の歳月を経てご覧の通り、天板の塗装は錆びも少し浮き出てきて幾分やつれています。
収納ラックの横幅の制約で、フロントシャーシの両脇を各1cm弱ほど切断機で切り落としました。
そして残念ながらこの鈴蘭堂ですが、2007年5月10日に廃業したらしいです。

この写真は1984年(昭和59年)に発行されていた
筆者手持ちの鈴蘭堂のカタログより9ページ目をスキャナーでコピーしました。
プリーアンプには、SR-2 MKⅡ(11250円)
パワーアンプには、DC-5000(19980円) を買いました。
こうして仕事からの帰宅後に、何日もかかりながら製作したアンプがこれです。
当時の購入伝票を改めて見ると、先に製作したのがプリーアンプのようで、
費用のかかるパワーアンプは2ヶ月ほど遅れて製作したようです。
でも先にメインとなる6550A ULPPパワーアンプからご紹介していきます。

(製作本の記事を参考に自作した、金田式6550A ULPPバワーアンプの外観)
6550Aは大型の真空管なので出力も大きく取り出せるが、その分発熱も大きいので、
パワー管のソケットを直接シャーシに取り付けず、大穴を開けてから、
周囲に丸穴がたくさん開いているソケットアダプターを別途用意して取り付け。
このタイト製の高級ソケット、
私の製作アンプの場合に限れば、25年間使うも変色もなく今のところトラブルなしです。
たまに(年2回ほど)抜き差しして接触不良にならないよう気をつけていますが。

(発熱の大きい大型ビーム管の放熱のため、穴あきのソケットアダプターを使用)
それからシャーシの回路組み込み部分はピカピカに光っていたアルミ地丸出しでしたが、
ちょっとでも熱を吸収しやすいように、表面だけですが車用だったと思うけど耐熱用のブラック塗装を施しました。
またフォトギャラリーで質問がありましたが、
この発熱が大きな真空管アンプ、ソケットやその端子の劣化による通電不良は、
即アンプの故障と真空管の破損につながるので、
信頼性をなにより重視し、樹脂製のモールド型ではなく、
金メッキ端子採用、かつセラミックの焼き物で出来たタイト型ソケットを使用。
タイト製ソケットだとオーディオ用には過剰性能だとの意見も見ましたが、
上写真のように25年間使っていても、ソケットのセラミック磁器は変色もなにもないままです。

使用したソケットはこれです。
小型のMT管用には 「タイトMT-9P金下付き」
パワー管(GT管)用は 「タイトUS(GT)金メッキ」
パワーアンプ用の真空管ソケットだけで3200円(製作当時)も使いました。
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このアンプ、設計上の低域カットオフ周波数はなんと5Hzに設定されていて、
今は無きタンゴトランス(平田電気製作所)の優れたトランスの一つであった
FW100-3.5(1次側の負荷抵抗3.5kΩ/30Hzで最大100Wの容量)の採用もあって、
後で取り上げているソニーの平面スピーカーAPM-66ESで鳴らすと、低域から過不足無く音がスピーカーから出てきます。

(タンゴFW100-3.5の取扱説明書の表)

(タンゴFW100-3.5の取扱説明書の裏よりトリミング)
電源トランス&2つの出力トランスとも、しっかりとした物を使用したため、
このアンプの総重量は30kg!ほどにもなっちゃいました。簡単には動かせないです。
なお使用したトランス類はブリーアンプもパワーアンプも、
製作当時はごく一般的だったタンゴ(平田電気製作所)製のものをチョイス。
電源トランスは、管球式では容量最大級のMS-450D
出力トランスは、FW100-3.5 を2個
チョークトランスは、MC-1.5-500D
という品番をチョイスしましたが、どの製品も立派な艶消し角型ケース入りのものです。
製作前にトランスの重量を測ると、確か電源トランスは10kg、出力トランスは7kg/1個ぐらいだったと記憶しています。
よって、めったに裏返すこともないけれど、裏返すのも大変ながら撮影のため裏返しに。
でもこのケース、フロントに頑丈な3mm厚のアルミパネルにさらに取っ手まで付いているので、掃除とかでこのアンプを持ち上げやすくなっていて好都合です。
保守のときにも引き出しやすいですし、天板が付くためシャーシ全体に枠が設けられていて、アンプをそのまま逆さまにして回路を保守するときにも、真空管を破損することなしに点検整備できます。
シールド効果と放熱の空気取り入れ口も兼ねた底板カバーを外しますと、
アンプ回路部分となります。
プリント基板は一切使用していなくて、ラグ板を使用したディスクリート構成です。

(自作した、出力43W+43Wの6550Aパワーアンプの回路部分)
ここで使用したケース、
出力トランスの不要なトランジスターアンプ用のシャーシだったため、大きさ・サイズには不都合はなかったが、回路が載る平板アルミ板の厚みが2mm弱ほどしかなくて、合計30kg近くにもなるトランスとチョークの4個が平板アルミ板に乗っかかると、当然ですが平板アルミ板が大きくたわみました。
これには正直まいったけれど、ここでの掲載写真から分かるように、
ステンレス製の丈夫なL金具2個をトランスの付近に補強として取り付けました。
次にパワー管、このアンプの場合ですと6550Aの動作設定を決定する、
バイアス回路の調整用ボリュームの拡大写真も掲載です。
出力管のグリッドに印加する固定バイアス用-電源、
もしこの部分が破損しますと、一発で真空管が破損するので、
この調整用ボリュームは1個何十円とかの安物を使用せず、
経年劣化にも強そうな、コスモス製の大型のしっかりとしたボリュームを使用しました。
安物のボリュームではないためか滑らかに調節できるので、
アイドル時の各6550Aのプレート電流の設定値70mAに合わせ易いですよ。
ただこの作業、本当にごくまれにしかやらないため、調整方向を忘れてしまうので、
設定方向が分かるようにマジックで矢印を書き込んでいます。

それからこの精密電流計4個を使用して、
出力管の各ブレートに流れる電流値を、調整用ボリュームを動かして70mAに設定しました。
この大型の電流計、1個2200円もしたけど、
PPのステレオ構成なので、4個の真空管に流れる電流値をすべて正確に合わせますが、
これを正確に合わせると、出力トランスの直流磁化を防ぐことが出来、
トランス性能が最大限に発揮できるので、高かったけど当時思い切って買いました。
それから故障といえば、私が25年間使用した中での故障は2回のみで、
1回は6CG7のヒーター断線による交換、
もう一回はSGタップとスクリーングリッドの間に入れている
保護抵抗470Ω(容量1W)の断線でした。
この保護用抵抗はよく断線するらしいから、
より熱に強い酸化金属皮膜抵抗の470Ωの容量2Wのものへと、
4箇所ともグレードアップして交換しました。
後はこのアンプ、大型出力管を採用していることから発熱は大きい部類に入るので、使用頻度にもよりますが、数年ぐらいするとハンダがボロボロになってきます。5年に一度ほどハンダの流し込みが必要みたいです。
まあこんなところなので、あまりアンプの底板を開けてまで保守することは少ないですね。
またこのシャーシ、フロントの部分のアルミ板が大きすぎてノッペリとしてしまうので、電源ON時のオレンジに光るネオンランプと、Wメーターを取り付けて見た目に寂しくないようにはしました。インレタがはがれて少し醜くなっています。メーカー製のようにシルク印刷できればいいのだけど。
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そして先に製作したほうがこのプリーアンプですが、そもそもアンプにプリーアンプやパワーアンプと分かれているほうが理解しがたく、一体にできないのか不思議に思われる方もおられるかもしれません。
真空管アンプは、1個1個の部品そのものを組み合わせて製作するのが普通のため(ディスクリート構成)、部品の占有スペースが大きく、しかも製作した当時はレコード専用のフォノアンプも必要だったため、アンプ回路が大きすぎて、プリー部とパワー部とを分けて構成せざろうえませんでした。
そして、製作したプリーアンプの顔がこれ、鈴蘭堂のSR-2Ⅱという名のシャーシを使いました。
12Vのムギ球が仕込まれた、
プッシュ式のAC電源スイッチの大きさを間違えて大きく開けてしまい、
余分に削り取った部分は未だそのままです。
プリーアンプの天板、放熱を考慮して多数の放熱穴が設けられています
天板を取り外すと中にある真空管や電源トランスやチョークコイル、
ケミコンやセレクタースイッチ等が見えますね。

セレクタースイッチはアルプス製ですが、
極力たくさんの機器がつなげられるよう6セレクターのものを選択。
このブリーアンプ、最初はラックスマンの真空管全段SRPP構成のプリーアンプのキットA-505を買ってきて製作しようとしたのですが、このキットは当時すでに市場にはなくて、金田幸之助さんに回路図を分けて欲しいと頼みましたところ、わざわざラックスマンにまで頼んでくださって回路図を分けてくださいました。
でも結局、金田式6550Aアンプと組み合わせると増幅度が高すぎるため、2段増幅のところを前段はカソードフォロアー回路に変更し、増幅回路は後段の1段のみに変更して、必要なトーン回路用の増幅回路へと組み替えました。そして一部回路定数の変更もしました。
このプリーアンプ、元来NON-NFB回路なので回路定数を変更しても問題ないのですが、増幅段が1段減ると歪が大幅に減りとても驚いた記憶がありますね。
その変更以来、ずっと今日までこのプリーアンプも使い続けています。
次に電源スイッチとACコード取替えに合わせて、プリーアンプの裏面もDP1メリルで撮影
先ごろ25年の使用に耐えかねたのか、電源をオン・オフするプッシュスイッチが破損し、電源が切れなくなるトラブル発生。大阪へ用事で出かけたときに電子パーツ屋へ行って探してみると、未だに全く同じスイッチが売ってあったので、これ幸いとばかりに購入、先日劣化ぎみの電源コードとともに新品交換しました。
回路部分も撮影。あまり上手な配線はしていませんでゴチャゴチャしていますが。

この写真は電源スイッチ破損修理と電源コード交換直前のため、
タンゴのST-55電源トランスへACコードをヒューズBoxを通して直結状態に。
この写真の撮影後にもちろん修理をしまして、電源スイッチを新品に交換するとともに、
電源コードをアンプ裏板へ固定するところも取り付け穴を拡大加工し直して、
市販品の電化製品のようにコードブッシュを介して取り付けました。
以上が、私が愛用している自作アンプの大まかな全容です。
「その他 その他」のフォトギャラリーに、先日コメントがありましたので、ここのブログを大幅に加筆して書き換えました。
で、上記掲載の本のタイトルにも “タマアンプ” とタイトルがついていますが、
「タマ」とはもちろん「球」のことで、真空管のことを指しています。それに対して固形の半導体を使うトランジスターアンプのことを「石アンプ」と呼んでいました。
球と石、もちろん登場した時代が全然違うので、現代では単体の性能自体はもちろん石のほうが圧倒的に上なのですが、携帯やパソコンの超高周波帯域を使うのとは違って、音声信号はせいぜい20Hz~20000Hzという周波数がかなり低い領域を扱うので、設計が良くて出力トランス (フォトギャラリーに説明あり) にいいのを使えば、あまりにもたくさんの部品を使う石アンプよりも音はいいと言われていました。
ちなみに石のアンプ、つまりバイポーラ型トランジスターは、回路の初段から電流で絶えず増幅していくので電源の負担が大きく、しかも終段はたくさんのトランジスターを並列駆動して合成するので、素子のばらつきがあることも考えると、大きい音になると汚く歪むといった感じのように、当時私は思えました。
現在ではFETという入力電圧で増幅率を制御する素子も実用化され、アンプの電源の負担も軽くなり、設計によっては少ない増幅段数でも実用的な出力を出せるようになっているみたいですが、当方の自作タマアンプまだまだ現役でいけそうなので、浮気することは当分ないかな。
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次にこの写真はAPM-66ESという名が付いていた我が家にあるメインスピーカーですが、

これも詳しくは当ページの「その他 その他」のフォトギャラリーにて写真付で購入のいきさつを掲載しましたが、とにかくこのソニーが苦心して世に問うた、剛性が非常に高いアルミハニカムを採用した平面スピーカーはとても素晴らしい音質だ、と当時言われていました。
そもそも私がこのソニーの平面スピーカーに興味を持ったのはこの本が発端で、
講談社から1981(昭和56)年に初版発行された本です。
この本は、私が学生時代(相当昔になっちゃったが)に本屋で見つけて当時ずっと読んでいた本ですが、著者は中島平太郎さんという方で、もともとNHK技研におられた方ですが、その後ソニーに移られてPCM録音機・CDプレーヤーの開発・平面スピーカーなどの開発を手がけられたそうです。
この本の中に、その次世代型のスピーカーを開発するべく奮闘した話が記載されておりまして、その当時出来上がったのがCDの音質をあまなく伝えることができると言われた、この平面スピーカーだったのです。
この平面スピーカーの動作原理とすばらしい音質については、この本の中で詳しく触れられていますが、簡単に言えば受け持つ帯域の音の全域に渡って、スピーカー振動板全体が分割振動することなく均一に動く、といった内容です(特に低域を受け持つウーファー)。
これ以上の突っ込んだお話は、かなり専門的になるのとスペースの関係上割愛します。
よってこの平面スピーカーは、従来型の凹みのあるスピーカーよりも一桁ほど歪が少なく、しかもクセの無い音だと言われていました。
で、それを確認するべく、当時大阪の心斎橋にあったソニータワービルにもわざわざ出向いて、デモ用に置かれていた超大型の平面スピーカーのAPM-4(少し下の写真)の音も聞きに行った記憶もありますよ。
今も所有している、当時のAPM-66ESのカタログ
この当時のスピーカー製造メーカーは598戦争(59800円のこと/1本当たりの表示)を繰り広げていて、実際はステレオなので2本必要ですが、このような販売競争を各メーカーともやっていました。
そして電器店のオーディオコーナーでは実にたくさんのこの価格帯の中堅スピーカーが並んでいましたが、私はなんら迷うことなしに、このAPM-66ESだけに的を絞って探し、なんとか見つけて購入しました。
将来は分からないけど、いまの技術ではいくら音声のデジタル化が進んでも、スピーカーは電気信号を音に変換する要のところで、やはりここだけは未だ物理現象からは逃れられず、ある程度の大きさは必要なようです。
詳しくはフォトギャラリーに書き込んでいますが、音の立ち上がりの鋭さ、クセのない透明感のする音と20Hzの低い音まで安定して出せるこのスピーカーの実力に不足はなく、いまだずっと愛用しています……少しノロけすぎたでしょうか。

(ソニーの力作:APM-4)
本当はAPM-66ESよりさらに一級上の、この上写真の超大型スピーカーのAPM-4がずっと欲しくて、しかも長らくソニーのカタログにも掲載されていたけれども、左右セットで定価54万円は出せなかったのと、リスニングルームが狭いという問題もあり、とうとう買いそびれちゃいました。
でももし現在、復刻してくれたなら思い切って買っちゃうかも知れないですね。
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1980年代~1990年代までは現在よりも経済状況も良かったせいか、ステレオ装置購入とかにもお金が使えた時代のようで、音響メーカー各社とも単品製品が世に多く出ていました。
このCDプレーヤーは、
ソニーの十八番だったダイレクト選曲20キーが付属していた終盤頃の製品

(CDプレーヤー購入2代目にあたるCDP-911)
1年半ほど前にとあるハードオフ店にて見つけた、
中古のCDプレーヤー、ソニーのCDP-X55ES
CDP-911もCDP-X55ESにも標準装備されたダイレクト選曲20キー
こういったダイレクト選曲20キーなどは使い勝手もよく有益なのに、
デザイン性を重視したのか、はたまた製造コストかかかるからなのか、
いつの間にかこの選曲キーはプレーヤー本体から追放されちゃいましたね。
蛍光灯などでもそうですが、紐プルスイッチからいつのまにかリモコン式に、
これ案外使いにくいですよ、メーカーさん。
そして私は音楽好きという側面もあり、
アナログ時代のレコードプレーヤー DENON DP-59Lから、
デジタル化していったCDプレーヤーから、
チューナーやカセットデッキ・DAT・ビデオデッキにいたるまで、
高級品ではないが実用的価格帯の物をすべて単品でそろえました。

このオーディオラックの写真は、
私がひとつひとつ取り揃えていった物を現在も収納している大型ラックです。
【関連情報URL】には、真空管の動作原理を説明しているサイトをご紹介しています