KFエンジンのオイル漏れ修理 と タイミングチェーン交換 その⑬ 作業編 6・完
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長文になり過ぎたので2分割にしました。
前項からの続き。
すべての組み立てを問題なく終えると、最後にエンジンオイルと冷却水を補充して、LLCクーラントのエアー抜きを極力おこないます。手が結構疲れます。
今回はシリンダーブロック内の冷却水も落としているので、ヒーターコアー内に残っている分以外はほぼ抜けていると思われます。
ちなみに私は極力クーラントの性能を保持するため、LLC濃度は寒冷地仕様よりもさらに幾分か濃い55%濃度にしてます (凍結温度-50℃前か)。
ただ濃くすればいいというものでもないため、防錆・消泡・潤滑などの添加剤と、冷却効率のバランスも考え55%濃度にしています。まあこの濃度なら、真冬に北海道のどの地区にいっても安心ではありますが。
当然LLCを割る水も古河薬品製の、ろ過されたうえイオンも含め不純物がすべて取り除かれた超純水=精製水を用いてます。水道水などすすぎも含め一切使いません。
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その次にエンジンルームの中にあるヒューズボックス内のEFI用の15Aのヒューズをいったん外し、セルモーターを幾度か回してオイルポンプを稼働させ、あらかじめエンジン各部にエンジンオイルを充填しておきます。当然ですがエンジンは稼働しません。クラッキングのみです。
ただ一度に何回も連続でクラッキングをすると過放電でバッテリーが弱ってしまうので、適当に間隔をあけておこなうのが良いです。
こうしてエンジンオイルが各部に充填されると、次にクラッキングした時には魔法のランプのような、オイル警告灯が消灯していると思います。
こうしてあらかじめ本始動の前にクーラントとエンジンオイルを各部にいき渡らせておきます。そうしてから抜いていた15Aのヒューズを再装着しエンジンを始動させます。
この瞬間が最もドキドキと緊張する瞬間ですが、今回はすぐに無事にあっけなくエンジンがかかってトラブルも無く稼働しました。
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これでなんとか無事、我が初となった重整備となるタイミングチェーン交換とオイル漏れ修理は完了。難題だったオイル漏れは完治し、これで廃車まで乗り切れるものと安堵したのもつかの間。
この大修理を終えてからしばらくすると、冷間始動時のみエンジンからカタコトと音がするように。30万kmを目前に、とうとう恐怖のピストンリングが弱ってきたようで、更に乗り続けるためには、どうやら腰下整備もやらなければならぬはめに。
こちらの写真はすでに入手済みのピストンキットより、ピストンリング部分をマクロ的に撮影。新品なので張力がしっかりとあるようです。
少し古い時期からの保管部品だったようなので、ピストンリングはR1・R2の表示、つまり今は無いらしいリケン製のピストンリングを使っています。
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でもタイミングチェーンカバーまで取り外し、チェーン交換をやって組み立て完了して修理は済んだのに、またすぐに再び腰下整備までやるなら、
最初から30万円ほど出して(エンジン丸ごとの単価のみ)、とっとと丸ごとエンジン自体を新品交換しておいた方が遥かに良かったと思ったのだが、すでに後の祭り。
この作業の半年後の涼しくなる頃に、もうサンデーメカニックの域を超えた、整備屋のレベルに近い腰下整備を主に行う予定です。
ダイハツのKFエンジンは燃費を向上するためなのか、ピストンリングの張力が下げられてしまい、そのせいで少しでもオイル管理が悪いと、ピストンリング固着によるオイルトラブルが多発、
整備士が交換修理作業をやりやすいように、すでにすべてが組み込まれた純正ピストンセット3本 (掲載写真)=1台分が用意されており、これを使えばやっかいなピストンピンやピストンリングの挿入作業などしなくても済むので、整備のハードルはかなり下がりますね。
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大きく仕様変更された最新のエンジンは知りませんが、コンテ(2008~2017年、特に最初期の頃)が売られていた頃のダイハツのこのKFエンジン(2005年登場)、聞くところによると、シリンダーとピストン(ピストンリング) とのクリアランスが、現代のエンジンとは思えないほど過大なのだとか。
そのうえ燃費対策としてピストンリングのフリクションが弱められたのだからトラブル多発もうなずけそうです。戦後や高度成長期と違い、この現代で腰下交換多発なんて信じられませんが。
ちなみに参考までに修理書を見ると新品同士の組み合わせで
オイルクリアランス 0.028~0.052mm、
使用限度 0.1mm
となっていまして、これつまり新品部品同士や工場組み立て時でさえ100分の5ミリ、50ミクロンものクリアランスが設定されているということですね。
トヨタ流のコストダウンのせいなのか基準が相当甘く、現代の新品エンジンで熱膨張も考慮しても50ミクロンのクリアランスはいかがなものかと思われますね。
ちなみに新品部品の製造基準は、
シリンダボア径 63.000~63.012mm
ピストン外径 62.690~62.972mm
参考までに書きますと、ピストンリングの合口すきまの使用限度も(メーカーにより新品時のすきま基準が違う)、
No.1 0.60mm(新品0.25mmあたり)
No.2 0.70mm(新品0.50mmあたり)
オイルリング 0.59mm(新品0.30mmあたり)
だそうです。この基準が甘いと見るかは人それぞれですが、オイル交換をしっかりとしてなければ、リングが固着してシリンダー壁面を削ってしまい、エンジンがすぐダメになる確率が高そうですね。
ちなみにいくら熱で膨張すると言っても、トップリングやオイルリングの合口すきまが0.6mmも開けばオイル上がりは激しく、エンジンオイルはみるみるまに減ってしまうことでしょうね。
新車から6万kmまでを除き、良質のエンジンオイル交換を3000km毎に必ず交換し冷間始動も極力避けてきた我が車でさえ、30万kmあたりで冷間始動時にわずかに異音を出しはじめたため、不具合が出る前に腰下交換しなければならなくなった理由が、この甘い製造基準によるといえましょう。
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これらがトラブルが多発したKFエンジンの元となったのでしょうね。その後に保証修理が多発したことは世間に大きく知られることとなり、結局コストダウンどころか大損し、しかもネットのこの時代、悪評がたくさん書かれたことによりイメージも悪化したと思いますよ。
大トヨタから落下傘部隊のようにきた経営幹部連中たち、もちろん彼らはレンチなど握って汗水流してエンジン整備などしたことのない、現場の苦労も知らない連中だろうから、目先の欲に走りみんな迷惑していることでしょうね。俗に言う自己保身に走る大企業病です。
以前トヨタ車でも中国で組み立てた中国製のエンジン(2AZ-FE) を使って、トラブル多発、ありましたね。近年大規模なリコールが多いのも、質の悪い外国製の部品を使うからでしょう。ほどよいタイミングで、特に高額修理となるエンジン内やエアコンで車がトラブったり壊れると新車が売れますし。
結果的に今回のタイミングチェーン交換とオイル漏れ修理は、次に予定しているエンジン腰下整備の予行演習みたいになっちゃいました。ちゃんちゃん。
完 & 次へつづく。
また今回の重整備に関し、いろいろとご助力を頂きました、みん友さんのEnna様に対し、遅くなりましたが厚く御礼申し上げます。
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