
レーサーレプリカ時代に咲いた2ストの美学
1980年に登場したヤマハRZは「2ストロークの集大成」として、スポーツバイクの歴史を変える立役者でした。
RZシリーズは、1970年代後半の排ガス規制強化により2ストロークエンジンが逆風に晒される中、「最後に最高の2ストスポーツを作ろう」という技術者たちの熱意から生まれたバイクです。
ヨーロッパでは純粋な2ストスポーツを求める声が根強く、ヤマハは欧州向けに開発を決断して、誇りをかけて「集大成モデルを作る」という強い意志が共有されていました。
エンジンは市販レーサーTZ250/350譲りの水冷2ストローク並列2気筒。
RZ250は35ps、RZ350は45psを誇る当時最強のエンジン。
RD400比でエンジン12%、フレーム20%の軽量化を達成。樹脂素材を多用し、車体全体で軽快さを追求しています。
ロードスポーツ初のモノクロス(リアサス)を採用。
GKインダストリアルデザイン研究所による流麗なスタイリング。
1979年東京モーターショーでプロトタイプが公開され、ブースはファンで溢れかえりました。
1980年8月にRZ250が発売されると、予約が殺到して納車まで数ヶ月待ちの状況に。
翌年1981年にはRZ350が登場しシリーズとして大ヒット。
累計販売台数は10万台以上に達しています。
そんなヤマハRZシリーズは1980年代初頭、2ストロークスポーツバイクの革新をもたらし、バイク業界に「走り屋文化」や軽量高性能路線の流れを生み出し、その後のレーサーレプリカブームの発端となります。
また、みごとに2ストロークスポーツの復権をさせてしまいました。
水冷2スト並列2気筒エンジンと軽量な車体で、当時の750ccクラスに匹敵する加速性能を実現したRZ350は「ナナハンキラー」、RZ250は「ヨンヒャクキラー」と呼ばれました。
特にRZ250は価格が安く、性能は大型バイク並み。若者層を中心に爆発的な人気を集め、峠道での「走り屋文化」の火付け役となり、スポーツバイクの新たな潮流を生みました。
その後、順調にRZ-Rへのマイナーチェンジを果たすのですが、1980年代はバイク業界の技術革新が急速に進み、1年で型落ちとされるほどのスピード感でした。
RZ-Rの主なライバルは、1980年代前半に登場したホンダMVX250F/NS250R、スズキRG250Γ、カワサキKR250などの2ストロークスポーツモデルです。これらはレーサーレプリカ路線を強く打ち出し、RZ-Rとは異なる方向性で人気を集めます。
また、、ホンダCBX、カワサキZ400FX、スズキGSX-Rなどの4ストローク4気筒モデルが人気を集めており、2ストロークのRZ-Rは「古臭い」「時代遅れ」と見なされることもありました。RZ-Rは1983年に登場しましたが、1985年にはフルカウル&アルミフレームのTZR250が登場し、注目が一気にそちらに移ってしまいました。
RZ-Rが不人気とされた主な理由は、「時代の流れに乗り切れなかったこと」と「TZR250の登場による影響」です。性能面では優れていたにもかかわらず、注目されにくい立ち位置に置かれてしまいました。性能は決して悪くなかったのですが、初代RZのようなネイキッドスタイルでもなく、レーサーレプリカでもないRZ-Rは、見た目のインパクトに欠けたことが不人気へと繋がりました。
レーサー直系の技術を持ちながらも、街乗りやツーリングにも適した設計。フルカウル化やアルミフレーム化はされず、あくまで「ピュアスポーツ」としての立ち位置を守りましたRZ-Rは不運なRZだったとも言えます。
RZ-Rに続き2ストの王として君臨したのがRZV500Rです。
ホンダNS400R、スズキRG500Γと並び、GP500レプリカ三強の一角として登場しました。
ヤマハは唯一500ccにこだわり、400cc版を出さなかったことが「矜持」として語り継がれています。
500ccの2ストV4は、低速では穏やかでも、YPVSが開く高回転域では一気にパワーが炸裂して、戦闘機のスクランブル発進のようなGの加速をします。。
見た目のコンパクトさ通りでコーナリングは軽快そのもの。軽量な車体と高剛性フレームで切り返しは鋭いものの、パワーバンドが狭く、ピーキーなエンジンの扱いには慣れが必要でした。
チャンバーから放たれる乾いた排気音と、2ストオイルの香りが、乗る者をレーサー気分にさせるのがRZV500R。
RZV500Rに乗ることは「バイク乗りのステータス」でもあった時代でした。
RZの登場がなければ、きっとバイクブームは違う形で起きていたかも知れません。
2ストが早々に消えていたら、4ストレプリカがブーム中心になっていたのかな。
何にせよヤマハのRZが登場した意味はとても大きかったということです。
こういう動画観ていると若かったあの頃を思い出します。
今考えると無謀というか恐怖心がなかったんだなって。
 
				  Posted at 2025/10/31 07:08:50 |  | 
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