
「無用の子に生まれたこの俺が、この世に無用の悪を斬る。流れ流れの無用ノ介、どうってこたぁねぇんだ、どうってこたぁ・・・・いや、ちがう!」
さいとう・たかをの『無用ノ介』。
(画像は
さいとうプロのHPからの借用)
昭和42年(1967年)から45年(70年)まで少年マガジンに連載された傑作時代劇漫画(漫画じゃなく劇画と言わないといけないのかも。)です。
昭和44年には伊吹吾郎主演でTVドラマ化もされている。冒頭の台詞はTV版『無用ノ介』のオープニングで流れる主人公自身の独白。
手塚治虫の絶大な影響下にあった少年マンが界に、明らかに異質な作風で登場したさいとう・たかをのインパクトは強烈でした。
賞金稼ぎを生業とする無用ノ介(その設定自体がすでにありえないので、作品全体から受ける印象はイタリア製の「マカロニ・ウェスタン」に近い。)は、彼に追われる犯罪者《賞金首》たちから畏怖と侮蔑をこめて《用なし犬》と呼ばれている。父親から片目を斬られ、その父親が殺されるところを目撃したという悲惨な生い立ち、あげくに《用なし犬》と呼ばれる徹底したアウトローは、さぞかし冷えきった性格かと思いきや、これが案外涙もろく、優しい。
後にさいとうプロの代表作となるゴルゴ13よりも初期の作品であるが故にか、主人公の抱える虚無が徹底されていないのである。冒頭のTV版の独白も、最後に「・・・いや、ちがう!」と否定することで、アナーキズムに堕ちていくのをかろうじて踏みとどまっている心情を吐露した台詞として秀逸だと思うのです。そんなセンチメンタリズムが、今読み返してみるとほっとするものを感じさせてくれます。
しばらく前に、古本屋の店頭で何気なく手にとった単行本。よーのすけにとって『無用ノ介』は、今、ブームなのですが、しばらく楽しめそうです。
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徒然 | 日記
Posted at
2010/08/07 00:10:59