
7月の半ばに青い森を訪問したとき、「ロードスター伝承館」で夜遅くまで白神さんと語り合いました。そのとき、なぜかこの映画(『リプリー』)のことが話題となったのですが、よーのすけはその時点ではまだこの映画を見ていなかったのです。それは、アラン・ドロン主演の『太陽がいっぱい』の印象が強すぎて、リメイク版は最初から見るに値しないと勝手に決めつけていたからです。
しかしながら、『リプリー』はより原作に忠実に作られていて、ジャズが重要な「小道具」として使われているほか、イタリアの海やヨット、鉄道やクルマなどよーのすけが好きそうなもののカタログみたいな映画だと白神さんがおっしゃるので、DVDでも借りていつか見てみようと思っていたのです。
先週、ヤフオクで『リプリー』のDVDを格安で入手したので、この土日に懐かしい『太陽がいっぱい』のレーザーディスクと見比べてみました。
『リプリー』(1999年アメリカ映画)
監督、脚本:アンソニー・ミンゲラ
出演:マット・デイモン、グウィネス・パルトロー、ジュード・ロウほか
(参考)
『太陽がいっぱい』(1960年フランス、イタリア合作映画)
監督:ルネ・クレマン
出演:アラン・ドロン、マリー・ラフォレ、モーリス・ロネほか
音楽:ニーノ・ロータ
『リプリー』のあらすじは、
1950年代のニューヨーク。貧しく孤独な青年トム・リプリー(マット・デイモン)は、ピアノ弾きの代役として出向いたパーティで、借りて着ていたジャケットのために、大富豪のグリーンリーフ氏に息子のディッキー(ジュード・ロウ)と同じプリンストン大学の卒業生と間違われる。とっさにディッキーの友人を装ったトムは、グリーンリーフ氏にすっかり気に入られ、地中海で遊び呆けているディッキーを連れ戻すように依頼される。これをチャンスと思ったトムは、ジャズが好きというディッキーと話を合わせるためにジャズに関する知識を猛勉強し、イタリアに向かう・・・
ジュード・ロウがとにかくカッコイイです。ヨーロッパで遊び呆けるアメリカの上流階級のボンボンという役柄を天性のものとして演じきっているかんじ。『太陽がいっぱい』ではモーリス・ロネが演じていた役で、それはそれでカッコよかったのですが、見比べてみると、『太陽がいっぱい』の登場人物はアメリカ人になりきれていない(フランス人だから当たり前か)のです。
1950年代後半という時代設定はどちらも共通なのに、時代の最先端の空気感を醸し出すためにモダン・ジャズをふんだんに使った『リプリー』と、ニーノ・ロータの哀切なメロディーが秀逸な『太陽がいっぱい』。どちらも甲乙付けがたい傑作です。
物語の筋立てとエンディングの見事さという点では、やはり『太陽がいっぱい』の方が上だと思いますが、『リプリー』にはジャズ・ファンを喜ばせる小ネタがいっぱい散りばめられていて、例えばLPレコードのジャケットがさりげなく画面に登場するところなど心憎いばかりです。
映画に登場するクルマにもちょっと気になったものが有りました。『リプリー』はニューヨークの場面から映画が始まるので、古いクルマが沢山登場しますが、よーのすけが気になったのはこれ。
1955年製 アルファロメオ・ジュリエッタ・スパイダー
放蕩息子ディックの友人で、やはりイタリアで遊んでいるアメリカ人のフレディがはじめて登場するローマでのシーンです。真っ赤なアルファロメオがいかにもという感じで、金持ちで遊び人のアメリカ人の性格付けに効果的に使われているのです。この直後、車から降りてきたフレディはでっぷりと太った赤ら顔で真昼間から酒をあおり、下品な話をする粗野な人間として描かれています。こんな下品な奴にアルファロメオに乗って欲しくないと思うほどです。
このシーン、『太陽がいっぱい』ではどうだったかなと、確認するためにレーザーディスクも見てみたというわけです。
『太陽がいっぱい』ではフレディの登場シーンにはクルマは出てきません。が、トム・リプリーはディック(『太陽が・・・』ではフィリップという名前になっている)を殺した後、ディックになりすましてその財産を奪おうとしているとき、異変に気づいたフレディをも殺してしまう。フレディの遺体を彼が乗って来た車に乗せて棄てに行くシーンがあって、そこに出てくるのがこれです。
1950年製 フィアット1400
フレディはがさつで、(トムにとっては)意地悪な人物として描かれているのですが、乗っている車がこれだと、イタリア駐在のビジネスマンかなにかで、案外実直な人物かもって思ってしまいますよね。一応高級車なので、金持ちではあるかもしれないが、少なくとも遊び人には見えません。
小道具の使い方という点では『リプリー』の方が圧倒的に成功しているなと感じた次第です。

『太陽がいっぱい』は、アラン・ドロンの圧倒的な魅力が何といっても最大の見ものです。モーリス・ロネもマリー・ラフォレもそれぞれ素敵で、よーのすけの中では1~2を争う傑作中の傑作です。

『リプリー』も素晴らしい良い映画です。ただ、マット・デイモンがジミー大西か宮川大輔に見えてしまうのだけはいかんともしがたいです。
ブログ一覧 |
映画の中のクルマ | 日記
Posted at
2011/08/28 22:46:34