LPジャケット・シリーズは本編で
50枚まで続けたところで中断しておりましたが、この先どこまで行けるかはわかりませんが、不定期で再開することにします。
第51弾
『ビル・エヴァンス/アイ・ウィル・セイ・グッバイ』(1977年5月録音)
ビル・エヴァンス(1929~1980)は、40年前、高校生だった私がJAZZを聴くきっかけになったピアニストで、よーのすけの中ではマイルス(tp)と並ぶ特別な存在です。あるとき、原因不明の熱と腹痛にやられて数日間起き上がれず、気弱になっていた私ですが、深夜ふと枕元のFMラジオから流れてきた音楽に耳を止めました。それは両親の影響で子供の頃から聴かされていたクラシック音楽とはもちろん、当時の友人たちの影響で聞き始めていたローリング・ストーンズなどのロックともちがう、新鮮な驚きに満ちた音楽でした。リズミカルでかつリリカルなピアノにベースとドラムがからむその不思議な感覚に頭が冴えて、元気を出さなきゃと思いました。ラジオのアナウンサーが曲目と演奏者を紹介するのを聞いて、そのピアニストがビル・エヴァンスという人であることを知ったのでした。その時のレコードは
『トリオ'65』というアルバムで、エヴァンスのレコードの中では特に注目される作品ではありませんが、それがよーのすけがいちばん最初に買ったJAZZのLPであり、やはり特別な1枚なのです。
ビル・エヴァンスのLPはディスコグラフィーによればリーダー・アルバムだけでも70枚超ということになりますが、ジャケットにクルマが描かれているものが全く見あたらないのです。この1枚を除いて。
このレコードはエヴァンスがファンタジー・レーベルに残した最後の作品です。1977年5月にこれを録音した後、彼はワーナー・ブラザース・レーベルに移籍し、トリオのメンバーも変えて最晩年の珠玉の作品群を生み出していくのですが、過渡期と言えるこのアルバムも晩年の作品群に劣らず完成度の高い内容となっています。
エヴァンスはミュージシャンとしての地位は比類のないものでしたが、晩年は決して幸せだったとは言えない状況でした。長年にわたるドラッグの常用で身体はボロボロ、指が膨れて演奏ができなくなることもこともあったほどだといいます。このレコードの録音の少し前には、内縁関係にあったエレイン夫人との別れ(その後、彼女は地下鉄に飛び込んで自殺してしまう)や、兄のピストル自殺という悲劇が続き、どのような精神状態でこの録音に臨んだのかと思うと言葉になりません。
このレコードがファンタジーから発売されたのは1980年1月のことでした。素晴らしい内容にも拘わらずファンタジーは3年近くも発売を見合わせていたというわけです。(ピアノ・トリオは日本では大人気ですが、アメリカでは売れないという事情があったようです。)そして、このレコードが発売されたその年の9月にエヴァンスは急逝しています。肝硬変ということになっていますがドラッグが原因でしょう。
ジャケットの写真が印象的です。
橋の上を遠ざかっていくクラッシックなセダンの後ろ姿( 車種は不明です)。
ウェス・モンゴメリの遺作
『ロード・ソング』のジャケット写真に通ずるものがあるように思います。
I will say goodbyeというタイトルはミッシェル・ルグラン作曲の収録曲のタイトルなので、エヴァンス自身がことさら何らかのメッセージを込めたのかはわかりませんが、このジャケットのデザインとタイトルがなんとも意味深です。
Posted at 2012/05/17 18:25:19 | |
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JAZZのLP | 日記