(ブルームバーグ): トヨタ自動車が世界最大の自動車市場である中国で積極姿勢に転じ、生産や販売を大幅に伸ばす方針を掲げている。2030年ごろまでに現地での生産を年間350万台規模まで増やすことを視野に事業を強化していく。特に得意とするハイブリッド技術を中心に電動車を拡充させる方向で、出遅れていた中国で巻き返しを図る。
複数の事情に詳しい関係者が、匿名を条件に明らかにした。現地生産350万台のほか日本などからの輸入50万台の計400万台を中国から供給していく方向性が取引先に伝えられているという。そのうち輸出にどれだけ振り向けるかは明らかになっていない。
トヨタの昨年の中国販売台数は129万台だった。18年は8.5%増の140万台と設定している。中国での足元の生産能力は116万台で、今後10年余りで3倍程度に拡大する計算だ。2人の関係者によると、それに先立ち、まず20年代初頭には生産台数を200万台程度に増やす方針でプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)などの生産を拡充させていく。
中国では、19年から年間3万台以上を生産・輸入する自動車メーカーに対して総販売台数の10%以上をEVなど新エネルギー車とするよう求める規制が始まる。それとは別に導入される燃費規制を達成するためには純粋なEVだけでは難しくハイブリッド車(HV)やPHVが重要となる。関係者2人によると、中国では政府の後押しでEVの普及が進められているが、充電インフラなど課題も多く、トヨタが得意とするHV技術が求められてきているという。
ブルームバーグ・インテリジェンスによると、今年1-6月の中国でのPHVの販売台数の前年比の増加幅の平均は2.6倍と、2倍弱のEVを上回っており、EV以外の方式の電動車の需要は高まっている。
トヨタは、中国での新車販売台数で、独フォルクスワーゲンや米ゼネラル・モーターズなど海外メーカーに、大きく水をあけられているほか、日産自動車やホンダなど、国内の競合にも後れを取っている。関係者らによると、トヨタは今年5月に中国の李克強首相が、同社の北海道の拠点を視察したことなどを契機に、中国事業に対して積極姿勢に転じたという。
トヨタ広報担当のジャンイヴ・ジョー氏は、中国について「グローバルでの重要地域と位置付けており、中国事業加速に向けた、体制強化を検討している」としたものの、具体的な計画については現時点ではコメントできないとした。
■ 天津工場の能力増
東海東京調査センターの、杉浦誠司アナリストは電話取材で、トヨタは1980年代前半に中国政府から、自動車業界への貢献を依頼された際に、取り合わなかったとされる経緯などから進出が遅れたと指摘。ここ最近の流れをみると、「関係は修復されつつあるようで、ポジティブな印象」と評価した。トヨタの世界販売が、1000万台で頭打ちとみられていたなか、将来的に中国で400万台となれば「台数成長の余地が開けてくる」とし、さらに米国で関税問題を抱えていることも考えると、「中国に成長もシフトとなれば、米国に対する抵抗力にもなる」と話した。
トヨタは現地合弁相手の、第一汽車集団と天津市で既存工場の、年間生産能力を12万台分増強する方針。そのうちPHVを11万台、EVを1万台生産する。
7月にはもう一つの、合弁相手である広州汽車集団が、トヨタとの24億5000万元(約400億円)規模の合弁事業を承認。さらに26日付の日本経済新聞朝刊は、トヨタが広州市に年産20万台規模の新工場を建設する予定だと報じた。中国での生産能力は21年までに、170万台となるという。また、広東省で発行される、政府系新聞の南方日報は7日、トヨタで中国事業の責任者を務める上田達郎専務が、省内に工場を新たに建設する計画を明らかにし、同省をアジアへの新エネルギー車の、輸出拠点にすると述べた、と報じていた。
トヨタは19年に中国で、「カローラ」とその兄弟車「レビン」のPHVを生産する方針。20年までにこの2種を含めて10の電動車を追加する計画で、現地生産化を進める。20年にはEV導入を目指している。昨年12月には30年までに、世界で550万台の電動車を販売し、そのうち走行中に排ガスを出さないEVと燃料電池車(FCV)は、計100万台以上を目指す計画を発表していた。
トヨタ幹部は、中国事業について良い局面になってきていると指摘したうえで、今後は中国事業の振れ幅を小さくしたい、と安定的な成長を目指す意向を示した。
トヨタの29日の株価は、前日比下落で取引を開始したあと上昇に転じ、一時前日比0.5%高の7062円まで買われた。その後再び下落に転じ午前10時18分現在では7041円となっている。
(トヨタ関係者やアナリストのコメント、株価情報を追加しました.)
--取材協力:Masatsugu Horie、馬杰、Kae Inoue、Kevin Buckland.
記事に関する記者への問い合わせ先:Tokyo Masatsugu Horie mhorie3@bloomberg.net;東京 佐野七緒 nsano3@bloomberg.net;Tokyo Kae Inoue kinoue@bloomberg.net
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©2018 Bloomberg L.P.
2018/08/29 10:20
Posted at 2018/08/30 07:03:17 | |
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