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2024年03月08日 イイね!

「帝国と宗教」

島田裕巳 著
講談社現代新書

歴史に登場したさまざまな帝国が、その発展のため宗教をいかに利用してきたか。
逆に、宗教がその発展のため、いかに帝国を利用してきたかを追っていくという内容。

各論は
第2章 ローマ帝国とキリスト教
第3章 中華帝国
第4章 イスラームとモンゴル帝国
第5章 ローマとコンスタンティノープル
第6章 オスマン帝国とムガル帝国
第7章 海の帝国から帝国主義へ
となり、地域別に進むため非常に理解しやすい。
イスラームについては前回の本で触れたので、今回は中華帝国、そしてその影響を強く受けた日本について少し書きたいと思う。

中国について論じる時、中華思想と儒教は避けて通れない。
この「中華」の定義する地理的範囲は時代によって異なるが、中国の歴代王朝はこの思想を以て、周辺国を朝貢というシステムによって緩やかな連合体を形成した。
朝貢は、中華王朝よりむしろ周辺国にとって経済的にメリットがあるもので、一方的な支配体制ではない。
中華の皇帝は、その「徳」の高さを周囲に知らしめ、その文明を広めていくことが責務だと考えられていた。
この「徳」という考え方こそが儒教である。

孔子が説いた相手は一般大衆ではなく、為政者だった。
儒教の面白いところは、死後については一切語らず、あくまで現実世界での問題にのみ集中している点である。
為政者が徳を失った時、地上を支配する「天」は易姓革命によってその地位を奪う。
だから皇帝を支える官僚たちは、科挙によって儒学的教養を極めた者が選ばれた。

日本でも、江戸時代に入ると儒学のなかでも身分や上下関係を重視する朱子学が幕府によって盛んに広められる。
現代イメージされる日本人像は、この時期に出来上がったといえる。
漢字、仏教、律令制、貨幣など、日本は中国や朝鮮からの影響を絶えず受け続け、文化を形成してきた。
これに反発したのが、本居宣長らの国学だ。
その柱は、天皇と神道である。

『現在でこそ神道は宗教の一つとされていますが、第二次世界大戦前の日本では神道は「国家の宗祀」と位置づけられ、宗教の枠からは外されていました。(中略)神道は宗教の枠から外されることで国民道徳として強制されました。』(211頁より)

なぜ海外にも多く存在した神社はほとんど廃れたのか。
なぜ神道の信仰は中国、朝鮮、台湾、東南アジアに根付かなかったのか。
それは、神道とは創始者も明確な教義も無い、儀礼だけの宗教だからだ。
自発的にせよ強制的にせよ、神社に参拝することで神秘的な感覚を味わうことはあっても、神道にはもとからの信仰を捨て去せるほどの説得力は無く、人の内面を変えるまでには至らないということだ。

昨今、「伝統」という言葉が溢れ、さまざまなことに合理性をもたせる説明に使用されている。
だが、そこには本当に歴史的裏付けがあるのか?
それは理論立てて説明ができるのか?
皆さんご自身で、よくよく吟味していただきたい。
Posted at 2024/03/08 22:38:51 | コメント(2) | 読書録 | 日記

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