当時は、ラジオ番組もベストテンものが大流行で、土曜・日曜ともなると週間総合ベストテン、
ベスト100とかのオンパレード。
しまいには、ベストテン番組の後がベストテン番組みたいなこともあったに思う。
そうなると、いくつかの曲は「本日のピックアップ」としてフルでかかることもあるわけで、
また、そういうのをエアチェックする趣味の人もいたりする。
ラジカセ小僧はエアチェックをする率が非常に高かったので友人中にも
「俺は最新の流行の曲は大抵録音してあるぜ」なんて奴が一人はいた。
ガッツリ録音しているA君の家に初めて遊びにいった。
当然、録音したものを聴くことになり、これまた当然に彼のラジカセが登場する。
彼のメカは、なんと!!
例のミシンメーカーだと思っていたブラザーのラジカセだった。
彼が使っていたテープも、また王道から少し外れたヘンテコリンなもので、
メジャーなsonyやTDK、ナショナルなんてのはほとんどなく、替わりに当時の俺は聞いたこと無いBASFとか
FUJIとか、それフィルムメーカーじゃないか!!
それ以外は、たぶん安売りのだろうメーカー名もよくわからないものばかりだった。
そして、再生された音はというとI君のMAC-GTを更にガッカリにした音で、
こうなっちゃうと最早テープのせいなんだかマシンのせいなんだか、それとも彼の管理の問題なんだかサッパリだ。
俺は一時間くらいで聴くのが辛くなって「外で遊ぼう」とはぐらかしながら逃げてしまった。
ラジカセの音がガッカリだった、、、ただ、それだけの理由で、それ以来A君の家には遊びに行かなかった。
俺は真剣だったのだ。
説破詰まっていたのだ。
だって、俺だけラジカセ持ってない!!
FMレコパルも買ってカセットのインデックス貯めたり、
少しでも良いもの買おうと学校の勉強放ったらかしでラジカセの勉強してるのに!!
そんな俺にこんな音、聴かせるなんて!!
・・・とは言えなかった。
だから近づくのをやめた。
日夜、カタログを見ているうちにナショナルやスタンダード、ソニーにも「ステレオラジカセ」というものがあることに気がついた。
ステレオ?
ステレオは、うちにもある。。。
そういえば、FM放送もステレオだっていってた。
FM放送は、そういえば音がAMより全然良かったな。
家のステレオも普通のラジカセより全然音がいいな。
あっ!
そっか!!
音がいいのは「ステレオ」って言うんだ!!
・・・と、全く独自の解釈に納得して突き進んでいった。
それと、もう一つ気になったことがあった。
電気店のオーディオコーナーにいつも通りラジカセのカタログを貰いに行った時、
すぐ近くのオーディオのスピーカーネットが外して展示してあった。
30cmくらいの大型のスピーカーに少し小さいスピーカー、
そしてそれより更にうんと小さいスピーカーが一つのスピーカーボックスに付いていた。
そのスピーカー丸見せの潔さと格好良さ、メカメカしい雰囲気に俺はすっかり飲まれてしまっていた。
こんなのカッコイイけれど大人じゃないと所有は無理だし、とんでもなく高いんだろうな。
ラジカセでこういうのあればいいな
・・・って、確かあるじゃん!!
家に帰って覚えのあるナショナルのラジカセカタログを見てみた。
あった・・・これだ!!
そこには、例の勘違いで覚えているステレオの文字と共にスピーカーグリルが外れ、
四つのスピーカーが丸見えになっている黒い大型のラジカセの写真が載っていた。
他にもHが買ったMAC-foの廉価版で大ヒット作のMAC-ffや縦型の新型MACが載っていたが、こいつに比べれば迫力が雲泥の差だった。
これがあれば、あの見栄っ張りなHの鼻をあかせると思った。
が!
値段を見てたまげてしまった。
価格は59,800円!!
あのS君が欲しがっていたsonyの高級機より更にずーっと上だった。
ステレオラジカセは高いんだ・・・
きっと良い音だから高いんだ。。。
ことラジカセという限られたジャンルの中では、あながち間違っているわけではないのだが、
根本を勘違いしたままの思いこみなので、また、おかしな知識の土坪にハマっていく俺だった。
つづく
・・・・・・写真の解説
A君の家にあった、俺が全然気に入らなかったブラザーのラジカセは、実は三洋のOEM機種
だったらしい。
ともかく、VUメーターといい、ダイヤルゲージのグリーンといい、フロントのジャックの赤といい
一目みてカラーリングセンスが最低だと思った。
ましてや、音たるやA君はクリーニングカセットやらキットといったものを知らなかったらしく
磁性体で茶色に染まったピンチローラーを見て、またもや幻滅したのだった。
ラジカセ持ってないやつから管理状況で幻滅されるなんて、まるでヘタ打ってる旧車のオーナー
(;´Д`)
話を戻そう。
サンヨーでの機種名はMR-5800
41,800円と価格も高いが、値段相応のフル装備でスペックも良いはずなのだが・・・
これ以来、俺の中ではサンヨーの製品だけはやめておこうというおかしな決意をしたのだが、
後に、一番大事なシーンで、そのサンヨーの製品の高性能さに舌を巻くことになるのである。
カタログを見てため息をつくしかなかったのが、このナショナル RS-457
このスピーカーグリルが外れるというギミックのみでやられてしまった。
そして、やられたのみで全然手が届かない存在であった。
しかし、入手していたら色々とガッカリしていただろうことは想像に難しくない。
キュー&レビューはおろかポーズすらないのである。
カセットの操作ボタンも「グワッチャン!」「バイィーーン!!」ってな具合に粗野な部分満載だw
マイク入力は左右2系統、ゆえにミキシングボリュームも二つとなっている。
この時は、ステレオ=いい音ってな具合だったのだが、実際に入手してみるとスピーカーが2ウェイ
とはいえ、かなり小さいので音質自体は今時の小型ラジオ程度である。
しかし、この機種だけに搭載されているステレオワイドレンジにセレクターを入れた途端に状況は
一変する。
ラジカセを正面にすると、あさっての方向から音が聞こえてくるのである!
ビクターのバイホニックにもビックリしたが、それよりも遥か昔にこんな音響を作りだしていたとは
二度ビックリである。