いやらしかった携帯電話

携帯電話が世の中に出始めた頃。

当然の如く、それは一般の人が持つには高すぎる基本料と通話料だった。
そんな状況で目にしたのが、これ見よがしに携帯電話を使う人。
直ぐ横に電話ボックスがあるにもかかわらず、注目されたいのか、
おもむろに取り出し大声で喋り始めるのだ。

私はその人がこう言っているように思えた。

どうだ、俺は携帯電話を持っているんだぞ～～～～っ！！！


ななっ、なんて恥ずかしい。馬鹿の証明になるだけで誰も羨まないぞ。


携帯電話は汚らわしい、

携帯電話はみっともない、

携帯電話はいやらしいブルジョアジーの道具！！



そんな事を思いつつ、実は私もかなり早い段階から持っていたんですがね。
そして、これ見よがしに使う他人を軽蔑するくせに、私もいやらしい行為をしていた。
着信音を自分で鳴らし、掛かってきたふりをして大きな声で話し始める。


「もしもし私だ。何！？・・・・そうか、フムフム。よし分かった、あと100万株買い増してくれ。
○○商事の株価はどうなってる？・・・・・う～～ん、それじゃそれも200万株ほど買い増してくれたまえ。」


「今夜の会食は誰が来る？○○知事に○○議員か。遅れていくが待たしておいてくれ。」


「○○君！！調子はどうかね。・・・・・えっ？あの車はどうしたかって？？とっくに乗り換えたよ。
やっぱりフェラーリよりベンツだねぇ、ぐわぁ～～～～～～はははっ！！！」



・・・・・・



・・・・・・こんな事をして楽しんでいました。

周囲の人間から袋叩きに遭うか、迷惑条例違反で取り押さえられかねない状況。
でも私の場合はむしろ、好意的に受け取られていたと思います。
これがきっかけで、余り親しくなかった人と急に仲良くなったりもした。


大事にしまってあったその携帯電話。久しぶりに出してみました。
10年以上前のモデルにもかかわらず、今でもちゃんと電池が生きていて使える。
昔のように、掛かってきたマネをして楽しもうかと考えています。
その携帯がこれ↓

ＣＲＹＳＴＡＬ ＴＥＬＥＰＨＯＮＥ

携帯電話では珍しいスケルトンタイプ。軽くて長時間使用しても腕が疲れません。
それに昔の携帯はシンプルで使いやすいですね。