性善説の誤用

孟子の性善説。性とは生まれつきの心、人が持つ本性のこと。
性善説では人は先天的に善の兆しを備えているということ。

性善説は生まれつきの性質を述べたのであって終生善行を為すことではない。

つまり性善説であっても、悪い環境に染まれば悪行を為す。
逆に性悪説であっても、矯正や感化を受けて善行を為す。

生まれつきがどちらにせよ、後天的な環境や教育で人は善行も悪行も為す。

不祥事が起きるとよく「性善説が前提」と言い訳するが、これは「お人好し説」だろう。抜け穴だらけの制度設計は生まれつき善人であっても悪への誘惑になる。制度設計の無為無策の言い訳に使われる「性善説」は誤用でしょう。

しかし間違いを根絶やしにしようとガチガチの仕組みを作ると融通が利かず物事が一向に進まない面もある。そういう場合は事後的に正当性をチェックして間違いを排除する。公的規制を嫌う業界の自主規制や、査読を通して発表して事後的に検証する学術の世界とか。
報道や出版となると情報の鮮度や流行を追って出鱈目が横行。頭から疑ってかかりますが。

排ガス規制や燃費の不正は元の制度設計に抜け穴があり、さらに事後的なチェックが手薄で「環境や使用条件が違えば性能が出ない」を隠れ蓑にして悪行を蔓延らせたのでは。実使用とかけ離れた燃費スペック競争が温床になったでしょう。

企業に「性善説」を求めても仕方がない。自ら仕事の正当性を担保する仕組みが作れない組織は退場を余儀なくされる。温存しても悪行は繰り返す。

二度あることは三度ある。三度あることは何度でもある。