先日アバルト595に再試乗してみて、改めてコンパクトで速いクルマの楽しさを確認すると共に、昔乗っていたクルマの記憶が蘇ってきました。
1990年代に販売されていた輸入車の中で一番身近で手に入れ易い存在だったのは、ローバー時代のMINIでした。
当時は未だ20代でしたが、学生の頃から憧れだったMINIに、1.3Lエンジンを積んだ"COOPER"が復活したのもこの頃です。
(この時のエンジンは未だインジェクションではなくキャブレター仕様)
そして1.3 COOPERと同時期に発売されたのが"MINI ERA TURBO"です。
かなりのレア車なので、
知らない方も多いのではと思います。
"ERA"とは、イングリッシュ・レーシング・オートモビルズ (English Racing Automobiles, ) の略称で、イギリスのレーシングカーコンストラクターですが、当時ERAのトップだった人物の提案で、ミニERAターボのプロジェクトが立ち上がったとも言われています。
販売時期は90年10月から92年まで、総生産台数は500台余り。
そのうち330台程が日本向けだったとの事。
(当時、日本でのミニの販売台数は、英国本国を凌ぐ程でした)
日本向けのボディカラーはフレイムレッドとブリティッシュレーシンググリーンの2色。
で、私はブリティッシュレーシンググリーンの個体を、91年から98年まで所有していました。
当時の車両価格は、1.3 Cooperが189万円でしたが、ERAの価格は凡そ2倍の359万円。
(当時のソアラ3.0Gリミテッドと近い金額)
もう一台MINIが買える程の価格差が有りますが、当然それに見合う(と思われる)違いが有ったのです。
当時のカタログがこれ。
(画像はお借りしました)
紛れもなく正規ディーラーで販売されていたカタログモデルです。
所有していた当時は未だカメラ付携帯電話も無く、現在のように気軽に車の写真を撮る事ってあまり無かったように思います。
家の中を探してみたけど車だけで撮った写真が一枚もありませんでした😅
外観はエアロパーツで武装。
バンパーと一体のオーバーフェンダーは片側が+9㎝、トレッドもそれに合わせて拡大され、専用の13インチホイールを装着。
Hellaのカバー付ドライビングランプもカッコ良かった。
今見てもフェンダーの張り出し具合はスゴいなと思います。
ダンパーはSPAX製の減衰力調整式、ブレーキはAPロッキードの4ポッドキャリパーで武装。
一方内装は、VDO製のメーターがズラリと並び、インパネは最早MINIとは思えない程。
(画像はお借りしました)
インパネもシートもグレーのコノリーレザー貼りという贅沢な仕立てで、更に日本仕様にのみクーラーが装着されていました。
なので、エンジンルームは何が何だか分からない位にギッチギチで、これが後々トラブルを呼ぶ元となるのでした。
(画像はお借りしました)
元々この時代のミニはラジエーターが縦置き(左前輪と平行に取付)で走行風が当たり難く、冷却には不利な構造なので、ERAでは熱対策の為、グリルの裏にサブのラジエーターまで付いていた程です。
このクルマの肝、エンジンはと言うと、MGメトロ ターボ用のエンジンを流用して搭載しています。
(画像はお借りしました)
↑これがMG メトロ ターボ。
排気量1275cc にギャレットT3タービンをSUシングルキャブレターと合わせています。
スペックは、最高出力95ps、トルクは12kg.mと、数値自体は大したことありませんが、ノーマルの1.3Cooperが61ps、9.6kg.mしかなかったので、馬力は5割増、トルクで3割増と、MINIとしては充分にパワフルで、車重も760kgと軽量だったので、信号で流れをリードする事も容易かったですし、乗り心地もガチガチではなく、寧ろ通常のミニよりも重い分ドッシリした乗り味で、普段使いも苦では無かったです。
私が所有している間、普段使いで大きな故障は無かったですが、一度ショップ主催のイベントでサーキット走行をした時、思いもよらない出来事が有りました。
2周目までは水温や油温、油圧計の表示も安定していましたが、3周目に入った頃、水温計の表示が急に上がってきたので、ピットストップした後アイドリングのまま暫くクールダウン。
その後エンジンを停めてエンジンルームを覗き込むと
、"そこにある筈の物"が付いていません。
一瞬、「見間違いか?!」と思いましたが事実でした。
ギチギチなエンジンルームの熱に耐えきれず、樹脂製のラジエーターファンの羽根が一枚残らず付け根から溶け落ちてしまっていたのです。
只でさえ熱が抜け難いところにタービンの熱も加わるのですから、一般道はともかく、吊しのままサーキットを全開で走るのは無理が有ったんですね。
で、その日サーキットからどうやって帰ったかというと、窓を開けヒーター全開(蒸し暑い6月ですw)、極力エンジン回転を上げずに自走で帰ったのを鮮明に覚えています😅
(その後、修理ついでにラジエターのコア増しをしました)
冬場は殆ど冬眠だったりと、思えば不便なところも沢山有ったけど、所有したクルマの中では断トツで乗っていて楽しいクルマでした。
既に販売終了から凡そ30年が経ちます。
元々台数が少ない希少車な上、通常モデルよりもコンディション維持が大変なクルマだったので現存台数はかなり少なく、また所有している方も手放さないので中古車市場には殆ど出てきませんが、もし程度の良いタマが有ればもう一度所有したいなと思うクルマです☺️
*タイトル画像のエンブレムは、当時ERAのボンネットに付いていた純正品。
Posted at 2021/03/27 20:13:05 | |
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