
調布市に住んでいる
旧友に会いに行く。
懐かしい友人の名は
N氏。
N氏は難病中の難病である
筋ジストロフィーを患っている。
39年前に同じ合宿所で運転免許を取った
掛け替えのない友である。
N氏が借りている一軒家には小生のS4号の駐車スペースがないため、
調布市文化会館たづくりで会おうということになった。
実は、N氏邸にはギリギリS4号が入る位の土地はあるらしいのだが、
小生の運転技術を熟知しているN氏が咄嗟に機転を利かせて、S4号を
ガリ傷から未然に守ってくれたのである。
N氏とはそういう優しい男なのだ。
10時ジャストに自宅を出発。
TBSラジオの交通情報によれば中央道が工事で混雑していて、調布まで二時間半などと阿南京子(あなみきょうこ)さんが
物騒なことを言っているので、16号・17号・環八・甲州街道と久しぶりに雨の一般道をひた走る。
トヨタヴォクシーの背後に迫る不気味な影・・・。
11時45分、調布市文化会館に
トウチャコである。
障害者用スペースに止めさせて頂く。
N氏は、付き添いの介護人であるOさんとともに既にトウチャコしていた。
まずは
乃木将軍とステッセルよろしく、やあやあと言いながら握手をかわす。
小生が思っていた以上に元気なN氏。
電動車椅子のその巧みな操作ぶりは、
小生をはるかに凌駕する。
「最後に会ったのはいつだっけ・・・?」
しばし二人で考える。
「23年前に昭和女子大の人見記念講堂で、琉球音楽の
ネーネーズを聴きに行ったときじゃない?」
との結論に落ち着く。
昼飯を食べながら、昔話やら近況報告やらをしようということになる。
12階にあるバイキング形式のレストランを、N氏が予約してくれていた。
18歳の頃から、
実に気が利く男なのである。
小生も見習えばよかったとつくづく思う。
介護人のOさんも優しい方で、小生の分も持って来て下さる。
早速パクつく。
思えば、互いに
紅顔の美少年であった18歳の頃からのつきあいである。
当時は身体障害者が運転免許を取得すること自体珍しく、
教習所の受入れの問題やら免許の
限定条件の厳しさやら色々とクリアしなければならない課題があったのだが、クルマを
操ることのできる喜びに比べればそれは些細なことである。
そして、決して障害者用には作られていなかった合宿所でともに寝起きし、同じ釜の飯を食い、法令の勉強をし、見たことのない府中試験場のコースを予測し、風呂場で背中を流し合い、理想の恋愛を語り合ったあの頃の
充実感は、まさに小生とN氏の人生の春の時代を
象徴するものであった。
以前は10年ひと昔とよく言ったものだが、時の流れが速い今では3年ひと昔位だろうから、39年前と言えばどのように表現したらよいのだろうか・・・。
いずれにせよ、同じ時代に同じ目標を共有したという意味からも、
不思議な縁(えにし)で結ばれた二人であることに疑いはない。
「そういえば、あの頃寮で背中に
見事な彫り物をした車椅子の人がいたね~!」
合宿所内はまさに
ドラマ人間模様。
18歳の我々には少々刺激が強すぎたことも、還暦近くともなれば
「なるほど。今考えればそういうことだったわけね・・」
と、いちいち
合点がいくのも面白い。
昔話と互いの近況報告を終え、
将棋を指そうということになる。
何でもN氏は、ここ2年将棋に凝っていて、月2回レッスンプロに教えを乞うているというではないか。
小生も売られた喧嘩は買わずばなるまい。
11階にある「みんなの広場」のテーブル席をお借りして、
対局開始。

奥側に位置するN氏は、
持ちやすく改良したストローを使って器用に駒を動かす。
動かしづらいところは介護人の方がサポートするのである。
局面は
中盤の難所。
1局指してみての感想は・・・
将棋を覚えて
たった2年でこれだけ指せれば大したもの!
というところである。
あとは3手詰め・5手詰めの詰将棋をいっぱい解いて、終盤を強くすれば初段までは間違いなしだ。
「是非また指そうね!」と約束し、16時半に調布市文化会館をあとにする。
24時間介護を必要としながら、地域で
いきいきと自立生活を営むN氏。
久し振りに会えてよかったと心から思ったのである。
Posted at 2014/05/22 01:55:29 | |
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