
思い出のクルマ第4回です。
乗り継いだ車と違い順不同で書けるのがこのシリーズのいいところ(笑)。
このクルマに関しても、多々解説したくて筆がかなり進んだのですが、もう少し端的に書こうと再構成。
まだまだ試行錯誤の真っ只中なのです。
今回の記載にあたって、当時の開発者(主査は、後年同社の副社長となる和田明広氏)へのインタビュー記事を読み返したのですが、このクルマの開発コンセプトは、
1.カリーナのお客様は上級移行されやすい(ローヤルティ30%以下)
2.同系列のクラウンじゃちょっと大き過ぎるけれども、粋なクルマが欲しいという声がある
というトヨタ店からの要望への対応だったそうです。
それに加えて・・・
3.カリーナとクラウンの中間に存在できる
4.同じコンセプトでセダンとHTを作るとどちらかに片寄ってトータルで伸びないので、そうならない
5.以前からセリカあるいはクーペが欲しいんだけれど、ドアは4つ欲しいという要望に応えられる
クルマを作りたかったとも。
そんな背景で生まれた隙間商品だったはずなのですが、販売目標台数以上の大成功を収めます。
さらに低全高HTという新たなジャンルを築き上げ、80年代末期から90年代初頭にかけてセダン全体を巻き込んだ一大ムーブメントとなるのは、ご存知の方が多かろうかと。今の視点で、その是非を問うのは野暮だと思います。
私の周りでも、中学生時代、仲の良かった同級生の家で、3代目マークIIからの乗り換えとして、登場早々に1800Xの白にアルミを付けて購入します。カリーナEDの前は、マークII3兄弟やブルーバードマキシマを検討していたそうですので、上級クラスとの比較でも、あえて選ばせるクルマだったのです。
前置きは、このくらいにして、ここから1985年(昭和60年)11月のカタログを紹介。
2015/5/17 画像を全て更新すると共に一部追加をしました。
最初の見開きは、やはり最大の売りとなるスタイルの紹介
当時のコピー「4ドア新気流」がトップで謳われています。
左頁のイメージスケッチは、量産車より前衛的なのはもちろんですが、2代目を彷彿させる部分もあるのは興味深いところです。
右頁では透かし紙を使って、スタイルのポイントが解説されています。
透かしを開いてみると、夜景に佇む姿が鮮明になる構成です。
左頁には、見開き画像を編集する過程で宙に浮いてしまった画像を組み合わせてみました。
とてもミドルサイズセダンとは思えないオシャレな画が似合うクルマなのです。
美しいスタイリングが表に出がちですが、FRからFFへの転換も目玉の一つ。
「パフォーマンス新気流」という言葉と共に、当時のコピーである「LASRE&PEGASUS」が強調されています。
カムリ・ビスタに続いて搭載された2LのTWINCAM 16VALVE、3S-GEがトップエンジンでした。
先に軽く触れた見開きを掲載
トップグレードのG-Limitedとなります。
先の画像はリヤスポイラー未装着でしたが、こちらは装着した画像。
べた付けタイプは似合っていて、有無の判断を悩ませます。
最多量販と目された、1.8X
フロントマスクは、同系列だった初代ソアラ(特に後期)を髣髴させる、どちらかというとバタくさいデザインです。とあるディーラーの方はこのデザインを見て「あのクルマは日本じゃダメだと思った」という話が意外です。
バンパーやサイドシルをブラックアウトにして、ボディ全体が薄く見えるように工夫されています。(当時大人気だった2代目プレリュードの影響?)
カリーナEDのデザインは、この角度からが美しいと思います。ノーズが長い水平基調のロアーに富士山型のキャビンを乗せた8頭身型のプロポーション。
今の目線では、床下の高さが気になるかもしれませんね。
セリカをベースとしながらも前後の長さ等を制約することなく、デザイナーのやりたいようにやらせていた結果、このプロポーションが実現します。
充分な補強をされたセリカと共通のフロントピラーを使用し、屋根を小さくすることで、トヨタ初のピラーレスHTを採用しています。
初期からの決定事項だったそうですが、社内では異論もあったようです。
セリカと下半分を共通としながらも、上半分は独自のインパネ。
この時期、トヨタは長年の得意技だったインパネのデザインや質感でホンダの猛追を受けていたため、改めてそれらを見直した感があります。当時としては既に珍しかった6連メーターを備えます。
下のXグレードのインパネは、コロナ・カリーナに続いて採用した液晶デジパネをオプション装備したもの。こちらは現役時代から、あまり見かけることはありませんでした。
この三兄弟、トヨタ車にしてはシート生地等の趣味が垢抜けています。事前知識がなければ、当時大流行していたマルーンのモケットと同時期とは思えないはず。
要は、確認犯なのですね(笑)。
室内空間はヒップポイントから上だけ余裕があればイイということで、足元のスペース等は割り切ったとのこと。結果、4人までが何とか乗れる室内空間となるのですが、法規の関係で5人乗りに。
設計者曰く「4+1」(笑)。
見開きを使いつつで各種装備が紹介されています。
4ドアながらもファミリー色は全くなくて、あくまでもパーソナルが強調されています。
各グレードの紹介です。
一部改良後のカタログでは、G-LimitedとXも加わるのですが、当初は先に紹介済ということで省略されていました。
この中では、Fが売れたくらいで、あとは販売上も主役とはならなかったグレードたちです。
ここで使われたグレード表記は、現在に至るまでトヨタ車のグレード表記の基準であり続けていますね。

左頁は主要諸元表、右頁は主要装備一覧表となります。
左下には、カリーナEDと同時にセダンに追加されたGTのフルカラーホワイト仕様が紹介されています。セダンは、GT追加後半年余りでマイナーチェンジを受けているため、前期は希少だったりします。
さらにおまけで、2年前にトヨタ博物館を訪れた際に撮影した画像も掲載。
今見ると、ピラーの細さや屋根の低さに改めて驚きます。ブームの終息と共に街中でも急速に見ることが出来なくなったため、久方ぶりの再会。「美しい...」。
以下、諸考察
カリーナED初登場から30年近くを経過した昨年に登場したメルセデスのCLA、日本導入直後から大人気で納期が伸びている一方のようですが、その設計思想の中には、きっと上記の2と5はあったはずです。
他社も同じようなことを考えたことがあったはずなのですが、ここは思い切って投入したメルセデスの勇気を称えるべきですね。直接の対抗馬は、未だ存在しませんので、まだまだ人気を独占することでしょう。
惜しむらくは初代EDを作り上げたトヨタで、アクアあるいはレクサスCT200hをベースとした上級版3BOXを今からでも作ったら、意外と売れるんじゃないか、なんて真剣に思うのです。