
思い出のクルマ第8回です。
スタンザ → カムリ → コロナと地味ながらも良質なクルマを続けましたが、たまにはメジャーなクルマを取り上げてみます。
今回も81と世代が重なる・・・というかお互い天敵的な扱いをしたりされたりするクルマですね(笑)。
両方好きというのは珍しいかもしれません。
節操が無いだけとか書かないように。
私、数ある歴代スカイラインの中で、「一番好きなのはどのモデル?」と問われたら迷わずにR32と即答します。
初代シーマを「トヨタが支配する天下泰平の時代に、突如おどり出た真田幸村」と称したのは(これはこれでスゴイ比喩ですね)、徳大寺有恒氏ですが、であれば、R32は真田十勇士だと思うわけです。
何が何やらの人にもう少し解説すると、
80年代末期のトヨタは、数の力を背景に細部の造り込みに力を入れていました。結果、完成度やら高級感では他社が(後年の自社すらも)追随できない領域に達するのですが、一方で金太郎飴とかツマラナイとか評されてもいたのです。
そんなトヨタ車に対して、一時期はトヨタに追随する形だったのに突如「走る楽しさ」や「美しいスタイル」等の違う側面から車の魅力を謳った(ある種ゲリラ戦を仕掛けた)のが当時の日産車でした。
これらは、コスト高となった部分も多くて、経営面からみると成功したとは言い難かったため、90年代に入るとまた迷走が始まってしまうのですが、商売から離れた作品の魅力という視点では、イイものが多数あり、多くのファンが存在するというのは周知の事実かと。
R32もトヨタが作れない(作らない)車の一つでした。
これまでのユーザー(予備軍を含む)の一部には、ローレルやグロリアを代わりに買ってください、その分担うべきユーザーには魅力的な商品を提供します、としてきたのです。選択肢から外されない車づくりを行っていた当時のトヨタではまず考えられません。。。
ここで、当時の開発者(主管は、ご存知の方も多い、伊藤修令氏)へのインタビュー記事から抜粋。このクルマの開発コンセプトは、、、
○スカイラインの復活。ただ単に古いスカイラインに戻すことではなくて、これからの、新時代のスカイライン
○高質の走りを徹底的に追求した高性能スポーツセダン
○7代目までを第一世代とするなら、第二世代ということでスカイラインの原点を明確に出したクルマづくりをしよう
だそうです。
伊藤氏は7代目の販売直前に主管となったため、8代目では原点に戻って考えた、というのは他誌での掲載もありましたから、比較的有名な話ですかね。
続いて後期のカタログ画像を掲載
2015/5/16 画像を全て更新すると共に一部画像を追加しました。
左頁には、作り手からのメッセージと受け取れる内容です。
右頁は、手前が4ドアの主力となる新追加のタイプXシリーズから、最上級となるGTS25 Type X・G。奥にはスポーツシリーズと新たに命名された中から主力となる2ドアGTS-t Type M。
4ドアGTS25 Type X・G。
マイナーチェンジの目玉は、ローレルに続く2.5Lの追加でした。同じく5E-ATと組合わされています。
4ドアGTS Type X。
ダークグリーンでは、内装色がソフトブラウンになるのですが、この組合せは珍しいですね。
GTS25 Type X・Gのインパネ。
マイナーチェンジの際、メーターの色やセンタークラスターの表面処理を変更して、質感の向上を図っています。ライトやワイパーのスイッチは、通常と異なりサテライトタイプを採用しています。
GTS25 Type X・Gの内装
新設定となったタイプXシリーズでは、ホールド感を保ちつつもゆったりくつろいで乗れるシートに変更されています。
同時期の81とは、明確に内装の目指すところが異なります。どちらが良いではなく、どちらが好みかで語れるのが重要なのです。
2ドアGTS-t Type M。
当初はGT-Rの専用色だったガングレーMが、GT-R以外にも拡大採用されています。当時の私のお勧めはこの色でした。
2ドアGTS25 Type S。
街中でみかけるスカイライン、特に2ドアはリヤスポ付が殆どでしたので、レス仕様はむしろ新鮮です。
4ドアGTS-t Type M
Type Xシリーズの登場に伴い、4ドアのスポーツシリーズは縮小されますが、R32を代表するグレードであるType Mは残されています。
赤が似合う貴重なセダンですね。
2ドアGTS-t Type Mのインパネ及び内装画像。
こちらは基本的に従来どおりですが、質感の向上は図られています。
ステアリング等は、無駄肉は取って軽量化しろという命題の元、生み出されたデザインとなります。
走りを強調したスカイラインと言えでも時代の要請には逆らわず、安全性が筆頭で紹介されています。
マイナーチェンジにより、フォグランプやエアバッグが追加されています。
新追加のRB25DEと従来のトップエンジンであるRB20DETがツートップ状態で紹介されています。名機RBが最も輝いていた時代です。
トルクカーブから読み取れるように、明確に性格の異なるエンジンだったのですが、予想以上にターボ派が多かったように思います。
名機RBを支える優秀なシャシーの紹介です。
先行したセフィーロ・ローレルはフロントストラットだったため、スカイラインが4輪マルチリンクを掲げて登場したのには驚いたものです。
先代で登場したHICASも、4輪マルチリンクとの組合せ&SUPER HICASへの進化により花開いた印象が強いですね。
各種装備が紹介されています。
メカニズムの紹介が先というカタログ構成はスカイラインの伝統とも言えますが、81とは逆となるあたりが、キャラクターの違いを感じさせます。
4ドアTYPE X シリーズのバリエーション
右側の3種類は従来からの引継ぎですが、新規にXシリーズに分類されています。
ダークグリーンよりもベージュの方がより珍しいボディカラーですね。
4ドアのスポーツシリーズ及び2ドアのスポーツシリーズの上級グレードです。
Type Mのホイールは市販ホイールにも5本スポークを流行させるきっかけとなります。
後年の人気は逆転しますが、当時の販売比率はプロジェクターライトがほぼデフォルトでしたね。
2ドアのスポーツシリーズの下級グレード及び4WDです。
4WDはRB20DETのみに設定されていました。
左頁では、メーカーオプションとボディカラー&内装色、
右頁では、ディーラーオプションが紹介されています。
2ドアのリヤスポイラーは、メーカーオプションと同形状のものがディーラーオプションでも選択可能でした。

左頁は、主要諸元表
右頁は、主要装備一覧表
主査曰く、1エンジン1グレードというのは強引にやっちゃった結果だそうで、そのためには、装備はほぼ横並びにするという考え方だったそうです。このため、GTS系であれば、あまり装備は違いません。
4ドアの価格表とオプション価格表です。
後述する、スカイラインの商談の際にもらった物ですね。
バブル期らしくオプションの組合せは多数あり。
2ドアの価格表とオプション価格表です。
GTS-t Type M 、GTS25 Type S、GTS Type Sの価格を比べてもらうと後述の話はより理解しやすいかと思います。
ということで、以下は雑談です。
前述のとおり、R32は割り切りが障壁となったのか、雑誌等の評価は極めて高かったものの販売的には成功したとは言えない状況でした。
それなら私がと、GTS25 Type X・Gが候補になりかかったこともあったのですが、ドアサッシ無とリヤシートやトランクの狭さから思い切れず、結局ライバル車だった81マークIIを購入することとなります。
その代り(?)、同時期に知人が新車を購入する際には目一杯お勧めしました。知人、GTS-t Type M とGTS25 Type Sで迷っていましたが、私のお勧めは「街中なら2.5LのトルクでtypeMより速いはず。何より価格設定がお得。」で後者でした。そのままGTS25のMTの購入となります。
納車直後の81で某プリンス店へ商談に乗り込んだら、「何しに来た」とばかりに怪訝そうな顔をされましたっけ(笑)。
このR32とは、いっしょに出かけたことも数回ありましたが、走りでは全く敵いませんでした。
東名高速は下りの大井松田の先(当然右ルート・笑)R32が先行の81が追走では、直線こそ追随できるもののカーブではどうしても離されてしまうのです。(腕の差という指摘は無用・笑)
別の機会に助手席に同乗してみたところ、高速コーナーやタイトコーナーではフロントが自重に負けて逃げてしまう81とは操縦性の違いは明確。なるほど、これでは敵わないなと理解した次第。
走りの実力の違いは、マークII3兄弟の渡辺主査も理解していたようで、次世代となる90を作る際に、R32は大きな刺激となったようです。販売後のインタビューではライバル車にも関わらず、R32を褒め称えていた(もっとも90なら負けないという意味もあるのですが)のが記憶に残っています。
そんなこんなから数年が経った頃、とある中古車屋さんの代車に4ドアGTS TypeXがありまして、ふと想い出が蘇ったこともあり、密かに(?)食指が動きました。既に2台体制が確立していた時期のため、そのまま見送ってしまいましたが、順番が逆だったら手元に手繰り寄せたかもしれません(幸い、この代車は廃車となることなく早々に次の買い手に引き取られていきました)。
もし実現していたら、明確にキャラクターの異なった2台ですから、かなり面白かったでしょうね。
もっとも維持が難しかったであろうこともまた事実。
GT-R以外は、まだまだ相場が高騰という状況ではないようですが、熱意あるファンも多いため、先々はType Mを中心に徐々に値上がりしていくのかもしれませんね。
最初の話に戻りますが、R32は歴代の中でキャラクターが最も確立していて、そこが何よりも最大の魅力だと思うのです。