
思い出のクルマ第9回です。
私、W204を買う時にもS204はあまり考えなかったくらいなので、セダンが好きという軸はぶれないようです。今になって、もっと比較検討しておけばよかったかも、とは思いますが。
今回は、そんな私が購入していたかもしれないセダン以外のクルマの紹介です。意外に思われるかもしれませんが、私も若かりし頃は気が多かったのです(笑)。
ちなみに正式名称は、ハイラックス サーフですが、長ったらしいのとハイラックス ピックアップとは区別する意味で、サーフとだけ呼ばれていました。カリーナやマスターエースにもサーフはあるのですが、まぁ一般的な方は細かいことは気にしませんね(笑)。
さて80年代に入ると、4輪駆動車は一気に進化したというのは、
サファリの回でも軽く触れました。
進化に貢献したのは、対米輸出が盛んだったライトトラックの4輪駆動化だと思っています。最初は、いすゞファスターで、次がトヨタハイラックス、ダットサントラック、三菱フォルテと次々登場しています。
これらのコンポーネンツを活用することにより、登場してきたのがいすゞビッグホーンや三菱パジェロだったりする訳です。
当初、ライトトラックは、その名のとおり純粋なトラック形状の車体だったのですが、そのうちに荷台部分をすっぽりと覆うカバーがパーツメーカから売り出され、これが彼の地でヒットします。
これを、メーカー純正でやったのが初代のハイラックス サーフ。それまでトラックキャビンと荷台は、隔壁を隔てた構造でしたが、その隔壁を取っ払ってワゴン的な構造としたのがミソですね。もっとも、カバーから始まった屋根なので、その部分の材質はスチールではなくFRPだったりします。日本の登場は1984年(昭和59年)。
その2年後には、ダットサントラックをベースとした日産テラノが発売。こちらは窓形状で出自を表現したくらいで、スチール一体型のルーフとなります。
さらに3年後には、ハイラックス サーフがモデルチェンジされ、従来の2ドアに変わって4ドアが主力となります。2ドアが先行して4ドアが後から追加されたのは、アメリカにおける関税の関係からですが、ここでは詳細は省略します。
当時の日本は、これら4輪駆動車とワンボックスワゴン(こちらも遅れて4輪駆動が追加されていますね)を含めてレクレーショナルビークル、略称RVで一括りとされていました。
80年代当初のRVは、乗用車とは機構が異なる箇所も多く、一般的とは言い難い点が多かったのですが、時を経る内にATの追加や足回りの板ばね → コイル化等の一般化が進み、当初は質素だった装備も乗用車からの代替でも然程不便や違和感を感じないものとなります。
時代はバブル真っ盛りの頃、スキーブームの盛り上がりと並行するかのように、これらRVの人気も盛り上がります。乗用車の体系化&序列化が進んだ中では、ちょっと外しの選択に見えたのも要因でありましょう。
金曜日の夜になるとまだ4車線だった関越高速は、ゲレンデに向かう車で大渋滞していたなんて書くと、懐かしく思い出される方もいるのではないでしょうか。この渋滞は当時の風物詩であり、RVの多さも相まって、関越の路肩はオフロードにしてしまったらいいんじゃないかという冗談も囁かれたくらいでした。
もっとも私は陸橋の上から渋滞を眺めていただけの人に過ぎませんでしたが。
長い前置きはこのくらいで、ここからは1991年(平成3年)8月のカタログを紹介します。
2015/4/28 画像を全て更新すると共に一部追加をしました。
元はワーキングヴィークルだったはずが、この時代には、それまでの2ドアクーペのお株を奪うかのようにすっかりカップルズカーと化しています。
カタログ全編を通して、こんな感じの画像が続きます。
1991年のマイナーチェンジ時に追加された最上級のV6 3000 4ドアSSR-G。
ガソリンとディーゼルの外観上の違いは、前後に付けられたV6エンブレムとなります。
マイナーチェンジ時に従来のSSR-LIMITEDから改称された、ディーゼルターボ 4ドアSSR-Xのワイドボデー。
ガソリンは全車ワイドボデーとなりますが、ディーゼルはワイド・標準の選択が可能でした。
右頁の男女に否でも目を奪われますが、ここでは左頁の各装備が主役(笑)
カラードバンパー以外はマイナーチェンジの際に新たに追加された装備群です。
スペアタイヤキャリアは、従前のフレーム付と比べると、バックゲートを開ける際に若干のスペースの余裕とワンアクションの追加が必要となるのですが、この仕様が主流になります。
全部付は全長300mm、全幅100mmのプラスと引き換えに、当時それらしいとされた恰好になるわけです。
2ドアSSR-Xの標準ボデー。
当初は2ドアからスタートしたサーフも、4ドア追加後は人気が完全に移行することとなり、2ドアはこの後1993年(平成5年)に廃止となります。
マイナーチェンジ後の2ドアは、当時でもかなり珍しかったはずです。
左頁上段はSSR-G、左頁下段はSSR-Xの内装です。
SSR-Gの最大のセールスポイントは、レカロシートの標準装備でした。
注文装備ではなく標準装備としたトヨタ車は、他には70スープラのターボRくらいではないでしょうか。
左頁はSSR-Gのインパネです。
90カローラ辺りに端を発する、大型クラスタータイプのインパネは当時のトヨタ流でトラックベースには見えません。
しかしながら、A/Cはマニュアルのみ、サイドブレーキは当時でも少数派となっていたステッキ式という辺りは惜しいところ。次世代ではどちらも改良されることとなります。
海に、山に、さらに渓流にも出かけて釣りを楽しむ・・・
ひたすら遊びに熱心な二人なのです。
1989年(平成元年)の登場時は、ガソリンエンジンはV6・3000ではなく、直4・2000でした。税制の変更を受けて、僅か1年で以下の変更が加えられます。
○V6・3000が追加
○直4・2000はMTのみに設定縮小
○2400ディーゼルターボにAT追加
続く1991年には直4・2000が廃止されています。
ワイドボデーだけでなく、従来はメッキスチールホイールに留まっていた標準ボデーにもアルミホイールが追加設定されています。
一番肝心な(?)4WDメカの説明の下では、ランチを楽しむ二人。
右頁では安全装備が紹介されていますが、ABSもエアバッグも設定無というのが厳しいところです。
左頁はSSR-G
右頁はSSR-Xワイドボデー
左頁はSSR-X標準ボデー
右頁はSSRと唯一のバンとなるSR
SSR-X及びSSRでダークブルーを選択すると唯一内装色もブルーとなります。マイナーチェンジ前には、ワインレッドの内装色も選択可能だったのですが、残念ながら設定廃止になっています。

主要装備一覧表です。
バンを除けば、基本装備はあまり変わりません。
SSR-Gは、どちらかといえばドレスアップ仕様的な意味合いが強かったようです。

左頁は、主要諸元表
右頁は、内外装色一覧表やディーラーオプションの一例です。
ディーラーオプションのグリルガードや派手なストライプテープは当時ならではのものですね。(
ディーラーオプションのカタログを追加しました)
ハイラックス サーフの価格表
売れ筋のディーゼルターボSSR-XワイドボディATで約270万円、ガソリンがエアコン付で約290万円ですから、マークIIの2.5グランデGと同等の価格となります。
SSR-Gの350万円弱に至っては、クラウンの3.0ロイヤルサルーンと同等ですから、かなりお高いクルマだったと言えます。
それでも若者は、サーフのある生活のために頑張って購入したのです。
参考までにハイラックス ピックアップの価格表です。
サーフ・ピックアップ間は大きな価格差があります。メカニズムや仕様こそ異なりますが、サーフは、メーカー的には何気にイイ商売だったのではないでしょうか。
サーフというクルマ、カタログでお解りのとおり、余暇を満喫している(風を含む)お若いカップルに向けたクルマでありました。
私の周囲でも、それまでS13シルビアQ'sに乗っていた知人が、2代目初期型の新古車(2000AT)に乗り換えます。曰く「最近追加されたV6のガソリン車が欲しかったがえらく納期がかかるから」とのことでした。ディーゼルターボのATはV6追加時からの設定ですから、ATを条件とすると選びようがなかったのです。
V6追加時にMTのみとされた2000ATです。車重1600kgで100馬力にも満たないですから、走りはS13とは天地の差だったでしょうが、違う魅力を見出したのでしょうね。
サーフの売れ筋はディーゼルターボ。さらにマイナーチェンジ以降は全部付付が人気で街中で見かけるサーフの殆どがその仕様でした。
私自身は、サーフではガソリン、必然的にワイドボデーとなりますが(本当はこちらも不要)、バンパーガードやバックドア付キャリアは無が好ましいと思っていました。
これならちょっと背の高いワゴンとして便利そうだったのです。当時のトヨタの同サイズのワゴンというと、まだカルディナが登場する前で、既に化石になりかかっていたマークIIの70G、あるいはカリーナサーフくらいしか選択肢はありませんでした。
何より、大型フォグやスペアタイヤに設置するキャリアに興味がない人としては、両装備は前後にぶら下がる重り以外何物でもないという見方をしていました。
ついでに上記の理由でボディカラーはダークブルーが理想。
いずれにせよ売れ筋とは大分異なる仕様ですから、かなり台数が少なかったのではないでしょうか。
ところが、81マークIIの契約で向かった先に併設された中古車展示場に、ちょうどこの理想仕様が並んでいたのです。現車は登録済未使用車らしく新車同様。価格は不人気仕様らしく割安で、81とほぼ同額で買えそうな額が表示されていました。
思わず運命の出会いかも、と色めきたったのですが、ABS&オートエアコン無が購入を踏みとどまらせました。
周囲の大人たちからは、「この手の車はすぐに飽きて、乗用車に戻るんじゃないか」という反対意見が多かったというのもあります。今では笑い話ですが、RVは一過性の人気という考えが根強く、事実RVを買ってはみたものの、使いこなせずに乗用車に戻ったという人もいたのです。
この時こちらを買っていたら、その後は4Runner化を目指した末に、今頃ハリアーハイブリッドの納車待ちだったかもしれませんね(笑)。
そんな思い出のあるサーフも、後年に実施された首都圏の規制により、ディーゼルは完全な締め出し、残ったガソリンも下取り等の際には、ほぼ中古車輸出となってしまい、あれほど見かけたのが夢の中の出来事のようになってしまいました。
ガソリン価格が高騰している現在では、ガソリンであっても購入するのは勇気がいるのではと推定するところです。まだまだガソリンが安かった(レギュラーは110円台)あの時期に乗れて満喫したという人は、羨ましい経験をされたのかもしれませんね。
余談1:
こちらのみん友さんによると、
新型ハリアーは現代のGX81であるとのことで、なるほどと思ったのですが、これを書いていて現代版ハイラックス サーフでもあるなぁと思った次第。若い人が欲しがって、それに対して周りの大人が眉を顰める構図が一緒也。
余談2:中古車展示場には、前年に登場し長期の納期待ちが発生していた初代マジェスタの下取りとなった下の車(2年半落ち・走行15,000km)も展示されていました。
お値段は3車、ほぼ変わらなかったのですが、あなたならどれを選びますか?