
思い出のクルマ第10回です。
まだまだ書けそうなクルマがたくさんあるのですが、一区切りとなる10回目を記念して、数回にわたる特集をしようと思います。
特集を組むに相応しいで思いついたのはタイトルのクルマ。思い返せば、このクルマのモデルチェンジ情報が知りたくて、初めてCAR&DRIVER誌を購入したのです。その後20年以上購読を続けることとなります。
3兄弟何れも思い入れがあるんですが、一番はこれかなということで選択しました。
先ずは開発の狙いから。インタビューは、71の主査である神保昇二氏と共に神保氏の後継となる渡辺忠清氏も同席の形となっています。渡辺氏は81の開発で相当な苦労をされることとなるのですが、その前夜ということでお若く見えるというのは余談。
●このクルマでは、高級感と走りが試されている。FF車だと基本的には合理的な車だが、贅沢さを加えて出した。
●5ナンバーの車としては頂点に立つ。あらゆる面でバランスがとりやすく、「5ナンバーで最高の車」
(クラウンは運転士付きの車の性格が強い。車のバランスからも2lではちょっと物足りない。カローラからカムリまでは2l以下の車)
モデルチェンジに際して、
マークII :セダン・HT・ワゴン・バン → セダン・HT・ワゴン・バン(従来どおり)
チェイサー:セダン・HT → HTのみ
クレスタ :HT → セダンのみ
とボディバリエーションの整理がされています。特にクレスタの変更は、私自身だけでなく、市場的にも驚きをもって迎えられたようです。これについては、
●お客さんはあまりハッキリ分けることができないが、その中でできるだけ好みに合わせて選択できるようにした。
○マークII:プライベートな従来からのユーザー層をもっているから、それを中心においてセダン
○チェイサー:割合低い年代の方が多いのでハードトップ
○クレスタ:スポーティさを狙って、パーソナルカーとして必ずしもハードトップではなくても
ということにしたと話されています。
もっともクレスタについては、後年のインタビュー記事において、
○初代のHTは若いユーザー層のみに人気だった。そのためユーザー層を広げてかつ車格感を上げてという狙いがあった
という記事を見かけています。
何れにせよ、初代クレスタを起爆剤にして急激に人気を集めたこの兄弟をどうするのか、いろいろと考えていたようです。
それではここから1985年(昭和60年)2月のカタログをご紹介。
2015/5/28 画像を全て更新すると共に、一部追加をしました。
見開きには、イメージキャラクターの山崎努氏とクレスタのノーズ部分。
マークII及びチェイサーはモデルチェンジに際して、イメージキャラクターを変更しましたが、クレスタと山崎氏の組み合わせは不変。そのまま次世代まで続くこととなります。
George Winstonの「Longing/Love」が流れるCMも話題となりましたね。
クレスタにある種独特なイメージが構築されたのは、広告代理店が実にイイ仕事をしていたのが大きいのでは、と思っています。
最上級のスーパールーセントツインカム24(パールシルエットトーニング(2V0)。
従来からあるロングノーズ・ロングデッキ型のデザインを基調としながらも、フロントウィンドー下端を従来型比で60mm前出しすると共に、フロントフードを前端で31mm、後端で13mm低くすることで、プロポーションを変えています。
サイドウィンドーのフラッシュサーフェース化もトヨタ車の中では一早くの取り組みで質感の向上を図っています。
71クレスタというとこの色を連想する人も多いと思いますが、当初はツインカム24のみの設定でした。
スーパールーセントツインカム24のインパネ画像
前述のフロントウィンドー前出しで稼いだスペースを生かして、立体的なインパネデザインとします。リーチ量の低減に取り組む前のため、どちらかというと操作性よりデザイン優先ですね。
デジパネの多色蛍光表示管の採用による4色化・フルオートエアコンや2DINサイズを生かしたテクニクスオーディオの採用等、内容の充実化が図られています。
スーパールーセントツインカム24の内装画像
フロアパネルの新設計に伴い、ダッシュパネルの30mm前出しや前席及び後席の足留り部を30mm低くすることでスペースを稼いでいますが、当時台頭し始めていたFF小型車にはスペース面で一歩譲ることとなります。
ツインカム24には、ボタン引きのスーパーラグジュアリシートを採用。シートパッドの2重構造化と相まって当時流の超豪華を演出しています。
リヤヘッドレストは、前後調節ではなく左右調節が採用されていますが、前期のみで終わっています。
画像は内装色ベージュですが、マルーン内装ではより一層派手なものに。
ピラーの植毛処理や成型ドアトリムも、この時からの採用。
主力車種となるスーパールーセント(スーパーホワイトII(040))
スーパーホワイトIIは、この世代を代表すると共に現在まで続く色。
従来のスーパーホワイトは中塗がグレーでしたが、専用の中塗(ホワイト)を構築することで、さらに純粋なホワイトを実現しています。
この時点ではスーパールーセント系の専用色となります。
上段はスーパールーセントのインパネ及び内装
ツインカム24以外のスーパールーセントは、兄弟車それぞれで専用設定シートを持っていました。
クレスタでは、専用設定を生かしたワンポイントマークとサイドサポート部の本皮革を特徴とします。価格設定からすると、本皮革はコスト高だったようですが、好評のため81にも引き継がれることとなります。
下段手前は、スーパールーセント(040)
下段奥は、後に設定廃止となるスーパールーセントターボ(ダンディッシュグレートーニング(2V3))
ダンディッシュグレートーニングは、好評だった初代前期のファッションアベニュートーニング(289)を連想させる色で、初代同様スーパールーセントのみに設定されますが、意外と不人気でした。
ターボもECT-Sの採用により燃費等が改善されていますが、従来どおり少数派のまま。これにフェンダーミラーの組合せとなると、この仕様で売れた車が実在するのか気になります。
スーパールーセント以外では、60系では設定のあった、スーパーツーリングやカスタムが廃止となったため、画像の2グレードのみの設定となります。
左は、スーパーデラックス(ワインレッド・メタリック(3E2))
右は、スーパーカスタム(ダークブルーメタリック(8C1))
この時点では共にスーパーホワイトIIは選択不可で、カラードバンパーも非設定でした。
Fun To Drive と LASRE + PEGASUS が大きく書かれています。
旧型の後期で登場した1G-GEUは、新たにTEMS&ESCと組み合わされることになりました。
上は、1G-GEU以外のエンジンの紹介
下は、ECTの進化系であるECT-S他の紹介です。
インパネ周辺の紹介
エレクトロニック・ディスプレイメーターは表示色が増えたため、FFコロナが先に採用した液晶式の採用は見送られています。
オーディオは、スーパールーセント系にかなり力が入った仕様が標準装備となりました。クレスタは、マークIIセダンと共にテクニクスが採用されています。
エアコンも、スーパールーセント系のみ風量に加えて吹出口もオートとなっています。
室内と外装の各種装備の紹介です。

左頁は、主要装備一覧表
TEMSはソアラ、PPSはクラウンからの技術流用ですが、後出しの有利でいずれも制御が多段化されています。4輪ESCも含めて、この時点で全て選べるのはこの兄弟のみ。
スーパールーセント系の商品力強化が狙いだったため、専用装備も多くなっています。
右頁は、主要諸元表
ターボは、先行したソアラとセリカXXがインタークーラー付を採用していましたが、この兄弟車はクラウンと共にインタークーラー無とされます。
この点の質問については、渡辺氏曰く「何から何までマークIIが持っていたらマズイじゃないですか。ハハハハ・・・」とのこと。
インタークーラーを付ける事でツインカム24との価格が接近することを嫌ったかな?というのは推定。
ちなみに共にATでツインカムとターボの加速性能を比較すると、
0 → 100km/h : 13.30 12.52
0 → 400m : 19.24 18.52
といずれもターボの方が速いデータが残っています。(月刊自家用車誌の車種別総合研究より)
この
当時の家の車はFFカローラでしたから、購入対象ではなく遠目に眺める車でありましたが、登場後間もなくで、街中で大量に見かけるようになります。登場後しばらくは縁がありませんでしたが、父方の親戚が白のスーパールーセントを新車で買っていたのを記憶しています。
この頃の車業界的にはFF化が進む一方で、ハイソカーブームが大流行。この兄弟はメーカー想定以上の売れ行きとなり、社会現象とまで語られるようになります。
「日本では売れているものが売れる。だから男性は3兄弟に夢中、女性はプレリュードに夢中となる。ともかく若い男性からファミリーユースまで等しく大人気なのだ。」とは当時の徳大寺氏の記述ですが、まだ中学生だった私も憧れた一人だったのです。