
思い出のクルマ第15回です。
東京地方は、台風11号の影響を受けて土曜日午後から雨の予報だったのですが、何故か殆ど降らずの状況。これなら出かけられたな・・・という思いもありますが、せっかく自宅に居るのですから、いつもの話を進めることにします。(UP直前の日曜日朝、激しい雨となりました)
近年の
普通乗用車販売台数においては、いわゆるミニバンに類されるクルマが上位にいることは、ご存知の方も多いかと思います。ファミリーカーという言葉から連想されるボディ形式がセダンではなくミニバンとなって、既に幾年月かは経っていますね。
一般家庭にこのカタチが入り込んだのを、歴史を遡って思い返すと1976年(昭和51年)に登場した初代タウンエースに行き着くのだろうと思います。それ以前では、初代ハイエース、初代ライトエース、チェリーキャブ等にも9人乗りのワゴンがバリエーションにあったのですが、これは多人数乗車が目的であって、ファミリーカー用途として一般的に使われるとはなり得ませんでした。事実、あまり台数も売れませんでしたしね。
そんな状況を経て登場した初代タウンエースは、初代ライトエースをベースにサイズを拡大したモデルでしたが、特にワゴンは、全長4.000mm×全幅1,650mm前後という絶妙なサイズや1600ccの過不足無いエンジンが評価されて、かなりのヒット作となりました。近所でも割と見かけましたし、父の知人関係でも早速購入したのが複数台ありましたね。
このタウンエースを契機に、ライバル車も次々登場&更新されて、ワンボックスワゴンのブームが80年代半ばにかけて盛り上がることとなります。
今回取り上げるのも、そんな中で登場した一台です。
歴史的価値(やや大げさ?)からすると初代タウンエースの最初期型を取り上げるべきなのですが、まぁ私自身の思い出を優先することとします(笑)。
このクルマ、34年前(1980年)の夏に父の知人が2代目サニーからの代替で購入する際に同席しているのです。
当時は、前述のとおりライバル車も豊富。朝から父のマークIIに同乗して、ディーラー巡りをすることとなります。購入条件は、車庫の高さの制約から標準ルーフの上級グレード。
訪問順に従って紹介すると・・・
1.デリカスターワゴン1600XL-5
・自動車雑誌の評価は高し
・同年追加されたハイルーフは1800でしたが、標準ルーフは1600のまま。
・内装は一部鉄板むき出しのセミトリム ・・・却下
2.ダットサンバネット1500SGL
・同年の改良により追加された回転対座シートが最大の売り
・同改良により1400から1500に拡大されているが、パワー不足の懸念アリ
・AT設定アリも売りだが、MT希望のため決め手にならず ・・・却下
3.デルタワイドワゴン1800カスタムエクストラ
・定番モデルではあるが、後続のライバル車と比較すると若干旧態化
・ダイハツは
初代MAX以来、縁が続いているセールス氏からの購入が絶対有利 ・・・却下
4.ライトエース1800GXL
・前年にフルモデルチェンジして新登場
・ワンボックスワゴン初のフロアシフトが売り
・設計年次が新しい分、タウンエースから改良されている箇所あり
・1800のエンジンは他社よりパワフルなはず ・・・契約
となります。私のお勧めも同車でした。フロアシフトに惹かれているという、今からすれば「取るに足らない」理由でしたね(笑)。
いつものように、長い前段のあとにカタログを紹介。
1980年(昭和55年)7月の発行となります。
2015/4/29 画像を全て更新すると共に一部追加をしました。
最上級のハイルーフGXLサンルーフ仕様(ミスティベージメタリック)
同時登場のバンは丸目でしたが、こちらは流行していた角目を採用しています。GXLではさらにセンター部分をフロントグリル風に見せて、バンとの違いをアピール。
初代タウンエースは、初代ライトエースとのドア共用がデザインの制約を受けたようで、古く見え始めていましたが、こちらはパネル類を一新していてモダンに見えましたね。ただしこちらの足元は、タウンエースにはあった14インチの設定がなく13インチのみ。
この色は、手洗い洗車が大変なワンボックス向けの汚れが目立たない色でした。(購入されたのもこの色)
GXLのインパネ
センターコンソールのカーコンポはオプションとなります。
こちらも設計年次の新しさを生かし、メータークラスター周辺以外は一段下げて、当時の乗用車風のインパネを構築。インパネ自体はバンとの共用ですが、フロアシフトのインパクトと相まって、タウンエースはもちろん、ライバル車と比べても豪華かつモダンなインパネに見えたのです。
GXLの室内。
当時のワンボックスワゴンは、後席のフルフラットシートを売りにしていました。運転席と助手席は、リクライニングをしていないのではなくて、実はこの角度が最大。運転席は微調整機能のみで、助手席は画像にあるリヤクーラー装着を考慮してリクライニング不可。
今回の記載用に初代タウンエースのカタログと比較して気付いたのですが、タウンエースよりもサードシートの位置をだいぶ後ろに下げていますね。
その結果、サードシートの足元は広くなりますが、両脇はホイールハウスに邪魔される部分が出てきてしまいます。もちろんラゲッジスペースも狭くなっています。
ちょっと小さいですが、ワゴン購入でできる生活が紹介されています。
セダンやHBとは明らかに違う、この広いスペースを前にすると、いろいろイメージを膨らませた方も多かったのでしょうね。
現代のイメージ先行のカタログでは、こういう紹介の仕方は、あまり見かけることはありません。
メカニズム等の解説です。
エンジンは、先行したタウンエースと同じ1800の13T-U。同じボディのバンは1300の4Kを積んでいるところに1800を載せるのですから、十分な余裕を持った設定でした。ただ当時のトヨタのエンジンラインナップでは、他に適当なエンジンがなかったのも選択の理由だと思われます。
最大の売りのフロアシフトは、初期の作のためかどちらかというとトラックに近い代物。コラムシフトもシフトフィールでは褒められない時代でしたが。
空調は、まだエアミックスタイプではありませんが、後述するマイナーチェンジ時に改良されます。同時期のタウンエースやバネットのフロントクーラーは、まだ助手席足元に吊下げとなるタイプでしたから、これでも進化していたのです。
トヨタらしい豊富な装備をアピールしています。
乗用車の装備もシンプルな時代ですから、これでも十分なアピール効果はあったのです。
グレード別一覧です。
当時はグレード構成もまだシンプルで、上からGXL、XL、DX、STD。最多量販はGXL、続いてXLだったと思います。バンとの差別化が求められたため、上級グレードが売れていましたね。
裏面には、主要諸元表と主要装備一覧表。
当時のタウンエースとグレード関係はほぼ一致しています。
(ライトエース:タウンエース)GXL:スーパーエクストラ、XL:カスタム、以下グレード名も同様。
両車のサイズを比較すると、こちらは全長-55mm、全幅-25mm、ホイールベース-105mm、フロントトレッド-80mm、室内長+200mm、重量-20~30kg減となり、室内長以外は若干小さくなります。
この兄弟関係は、取扱店であるカローラ店・オート店の双方共、競合が激しくて商売がし辛かったのではと思うのですが、不思議と共存していましたね。この関係は、1982年(昭和57年)にタウンエースが2代目になる際に一回り大きくなるまで続きます。(さらにその後、ライトエースがタウンエースに吸収されて真の兄弟車に)
当時は、今のようにプリンタ出力の見積もりで商談なんてことはなくて、カタログの裏面で電卓片手に計算しながらの商談でした。
当時の価格が残っていますので、内容のわかるものだけ記載。
・車両本体価格 :1,224,000
・フロントエアコン: 139,000
・カセットステレオ: 49,000
・付属品 : 114,950
・合計 :1,686,900
・値引き : -150,000
・支払額 :1,536,900
120万円強の本体価格は、コロナやブルーバードの中心である1800GL、カリーナの1800ST辺りに近い価格ですから、普通の乗用車とはちょっと違う選択肢になり得たのでしょうね。
値引きは店長さん相手でしたので、「ワンボックスはセダンと違って・・・」とひたすら強気でした。実はこの商談、相手が数段上手だったことが納車直後に発覚します。
歴史に詳しい方ならお分かりのとおり、納車直後ですから、登場から僅か1年後にマイナーチェンジを実施。
その内容は、主な物だけでも、回転対座シートの採用、MTの5速化、新たな最上級グレードとなる「FXV」の追加ですから、改良前を買った人はたまりません。お勧めした立場としては肩身の狭い思いをしたものです(遠い目)。
この時期のワンボックスワゴンは、この改良に限らず、セダンの後を追うような機能的改良、シートや装備の新提案が矢継ぎ早に全社で行われていて、見ている分には、楽しいものがありましたが。
一方で、豪華装備は価格の上昇や重量の増加を招くこととなり、特に後者は動力性能や燃費の低下も相まって、一時期盛り上がったブームもやがて収束していくこととなります。
話題にしているライトエースも、納車後しばらくは2家族7人で河原でのバーベキュー等の際に使われ、その度にその収容力やフルフラットシートの便利さには感心するものがありました。(余談ですが、当時の目的地は主に名栗や奥多摩湖の奥。現在、時折出かける奥多摩の地は幼少時代に何度か休憩で立ち寄った思い出の場所なのです。) もっとも前席の下にエンジンや前輪を抱える構造やリーフスプリングの足回りは、乗用車としては異質のものだったのも事実です。
その便利さから我が家でもセダンの替わりにワンボックス導入の話も持ち上がったのですが、「確かに便利ではあるが、知り合いが誰か持っていれば足りる。ウチでも購入することはないのでは。」という結論に至ります。父はたとえ中古でも(当時の)6気筒セダン派でしたから、乗り心地の違いが許容できなかったのも大きかったのでしょう。
このライトエースやタウンエースのオーナー達も、次車にはセダンやセダン派生のワゴンに回帰していくこととなります。何れも「便利なんだけれど、そのスペースが不要になってきた」という理由だったようです。
話を現在に戻して、、、
以前に書いた理由から、自身のクルマとしては現代版のワンボックスワゴン であるミニバンに食指が動いたことはありません。現在のミニバンの性能は格段に向上していて、当時のワンボックスとセダンの性能差に比べれば、確実に差が縮まっているのも事実なんですが、幼少時代の家族会議の結論は、私の中でそのまま続いているようです(笑)。
最後に、このライトエース、当時のワンボックスが一部方面で脚光を浴びる中でも、これを見かけることはほぼ無いような気がします。同時代のタウンエースやデルタワイドは現存していて、その姿を懐かしく思えるのとは対照的ですね。