
思い出のクルマ第19回です。
今回は私の大好きなクルマ。自分で買うことこそありませんでしたが、新車登場当時から中古車市場でも見られなくなる間際まで、いろいろ身近に感じたクルマでもありました。
登場は1986年(昭和61年)8月。
先代もどちらかというと情感優先のマークII3兄弟とは正反対の理論的な成り立ちが好ましいと思っていました。もっとも、その合理的な性格ゆえに、モデル末期になるとライバル車の一新が続く中で相対的に貧弱になっていった部分があって、私自身は1985年に登場したアコード/ビガーに心を奪われていきます。この時のモデルチェンジは、そんな気分を再度引き戻させるものがあったのです。
今の目線で見ると、旧型よりもだいぶマークII3兄弟に近づいたクルマであって、アコード/ビガーとは趣味性がだいぶ違うのですが、当時は3兄弟よりも知的に見えていたのですから、作り手が実に巧みだったとも言えます。
開発者(主査 宮川昭一氏)へのインタビュー記事(月刊自家用車誌、車種別総合研究)には、
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○初代のコンセプトである、室内の広さあるいは燃費、走りという基本性能を守ったうえに、余裕というか遊びというみたいなものを加えた
○前のものに比べれば、製品という面でも、商品という面でも十分に満足していただけるものに仕上ったとは思います
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とあります。
トヨタのFF化が一巡した後の登場のため、この辺りからFF第二世代に分類されるようですね。
この世代の特徴としては、実用性より豪華さや作り込みが重視されるようになります。新機構の目玉は「ハイメカツインカム」と大々的に謳われた狭角ヘッドを持つツインカムエンジンでした。兄弟車のビスタは、先代のハッチバックに替わって設定された4ドアHTが、先にHTからセダンへの変更を受けたクレスタの穴を埋めるということで、より注目を集めていましたが、私はセダンのスタイルの方が好ましいと思っていました。
お気に入りは、このハイメカツインカムを搭載した2.0ZXでした。一方6気筒命の父は、翌年に追加されたV6プロミネントが気になっていたようでした。
私的にはプロミネントは、輸出用から流用した5マイルバンパーが全長が伸びた(+105mm)だけであまり格好良くない印象でしたし、肝心のV6エンジンがフロントが重くなるばかりで実利がないと思っていました。事実、輸出は2.5Lでしたので、国内に設定された2.0Lは5ナンバー枠の制約を優先させたものだったのです。
この世代を商売としてみると、国内でも先代よりは成功となりましたが、むしろ北米で成功したのが大きかったのではないでしょうか。海の向こうでの成功が、次世代以降のワイド・ナロー2本立てを決断させることとなって、後にワイドに統合、大型化を進めながら車名変更をされることなく現在に至ることとなります。
当時の国内では、どちらかといえば傍流でしたから、本流車種が次々車種統合や車名変更をされる中でこれが残ったのは意外な結果という思いでいます。
この代は、その後の拡大路線前夜のモデルですね。
前置きはこのくらいで、前期最終となる1987年(昭和62年)11月のカタログから紹介。
2015/5/19 画像を全て更新すると共に一部追加をしました。
最初の見開きでは、当時のCMでも使われた「新しきセダンの肖像。」というコピーが掲げられています。
追加グレードが相次いだ車種のため、「新登場」というフレーズが重複することに。
最上級のプロミネントG(スーパーホワイトII(040))
前述のとおり、追加車種となります。追加に際して、手を入れられた部分は濃厚感を強調するものですが、基本はスマートかつ細身な印象。空力フォルムで当時一世を風靡したアウディ100に範を求めているのでしょう。後に登場する170コロナ以降は、リヤデッキ部分を上げてきますが、こちらはそれ以前の所謂「八頭身フォルム」。
プロミネントGの室内
室内色は、モデルチェンジにより新設定となったマルーン
当時流の豪華さの表現ですが、マークII3兄弟のボタン引きルースクッションよりは、シート縫製等、若干抑制されています。
先代はマイナーチェンジの際に、後席3点式シートベルトの設定が外されて、批判されましたが、モデルチェンジに伴いZX以上に再設定されます。(ただし前期はセダンのみ。)
プロミネントGのインパネ
先代は開放感優先でインパネとセンターコンソールを分離していましたが、この代では連続させることで、開放感よりも豪華さを演出。この造形のために、インパネのセフティーパッドにはパウダー・スラッシュ製法を採用。
ドアミラースイッチはドアトリム上段のちょっと珍しい位置に配置されていますが、これは操作性が不評でマイナーチェンジにより設置位置が変更されることとなります。
当初のイメージリーダーだった2.0ZX(スーパーホワイトII)
プロミネントに比べると引き締まったイメージが好ましいと思っていました。スタイルは、前年のセリカ・カリーナED辺りの流れを汲む曲線基調。ディテール部分はマークII3兄弟やクラウンを彷彿させる部分もあります。
プロミネント登場後に追加となった フルタイム4WD ZE(グレーメタリック)
4WD化にあたって、車高を上げてはいないのですが、撮影の際に車高を下げる細工をしなかったのか、他の画像より上がっているように見えますね。
中間グレードのZTをベースに追加された1.8ルミエール(スーパーホワイトII)
後にカムリの代名詞ともなる、”ルミエール”のグレード名は先代にも特別仕様として設定がありました。ただし今回は特別仕様ではなく、追加グレードとしての設定。
この角度だと、先代よりAピラー・Cピラーを共に6度寝かせているのが解り易いかと。前者は下端部の位置の変更なしのため、5mm下げられた車高&室内高と共に純粋に室内空間の減となっています。後者は下端部の後ろ出しですが、リヤオーバーハングを100mm延長してリヤデッキが短くなるのを防いでいます。
以上のとおり、純粋なパッケージングとしては、理想主義的な先代よりも後退。製品性と商品性の鬩ぎ合いですね。
エンジン及びミッションの紹介
このシリーズで初登場した「ハイメカツインカム」シリーズが大きく掲げられています。
ハイメカシリーズでは、3S-FEのようにTWINCAMを使わずVALVE数を使うことが殆どだったのですが、1VZ-FEは例外で、FOURCAM24がエンブレム等に使われています。
後期では1.8Lもハイメカツインカム化されることとなります。
足回り等の紹介
サスペンションは基本的に先代からの踏襲ですが、TEMS、PPS、ESC(後のABS)の採用等、電子制御技術が入り込み始めています。
2.0Lについては、先代よりタイヤ径を大きくして重量増に対応しています。
追加となったフルタイム4WDの紹介
先行したセリカGT-FOURの技術の流用なのですが、セダンのフルタイム4WDの登場は、寒冷地方面には福音でした。
同時期に登場したカローラ/スプリンター4WDでは、リヤサスを5リンクリジッドとしましたが、こちらはストラットのまま成立させています。
ただし、この時点ではATはなくMTのみでした。
ボディ関係の紹介
V6化にあたりライト・グリル・バンパー等が変更されていますが、これで全く違うイメージとなるのがデザインの面白いところです。
フォグランプ一体ハロゲンヘッドランプは、後期では4気筒系にも拡大採用されることとなります。
室内は(特に頭上空間が)先代よりも狭くなりましたが、リヤオーバーハングの延長が効いて、トランク容量は先代よりも増えています。
室内装備の紹介です
プッシュオープン式アッシュトレイやカップホルダーは、商品力向上のための採用でしたが、予想以上にユーザーから好評だったため、他車種にも拡大されていくことになります。
室内装備の続きです。
6:4分割可倒式リヤシートは、先代にあったビスタ5ドアの廃止に伴い、ユーティリティは継続させようということで新たに採用されています。
オーディオは、音質の変えられるアコースティックフレーバーの採用等、特に上級グレードは力が入っています。ボリュームが左にある機種は、輸出仕様とのボディ共用のためだったようです。
左頁はプロミネントシリーズ
右頁は2.0ZXと2.0GT
当時は、GTのボディカラーのパールツートン、プロミネントのボディカラーのダークブルーマイカの順で好きでした。
左頁は上から、ZE・ルミエール・ZT
前期の最終となるカタログのため、フルタイム4WDが追加されています。
白の最盛期は過ぎていましたが、スーパーホワイトの画像が多いですね。
グレーM(167)は、当初ダークベージュの内装色でしたが、この時期にマルーンへ切り替えられているというのは、トリビア的視点。
右頁は上から、XTサルーン・XT・LT

左頁は主要装備一覧表
右頁は主要諸元表
ボディサイズは2.0ZXで、全長4,520mm×全幅1,690mm×全高1,395mm。現行比では、およそ300mm短く、130mm狭くなります。
カタログの紹介はこのくらいで、いつもの思い出話など。
知り合い関係では、
第15回で紹介したライトエースの代替が、これの前期1.8ルミエールでした。この購入は、最初モデルチェンジ寸前だった初代FFカリーナ1.8マイロードで商談が進んでいたところに、このクルマを見せたら20万円近い差額を超えて購入車種が逆転したという推移あり。
そこから一年後、我が家でコロナ購入する時にも、あこがれたクルマですから検討はしました。予算的に2.0ZXは無理で、購入できそうなのは1.8ルミエール、あるいはその特別仕様くらい。当時は4-ESC(ABS)優先でしたので、2.0ZX以上のみに設定されていたカムリは対象外という結果に。
普通はここで縁が切れのですが、さにあらず。
ビスタ店に整備等で入庫させる際には代車を借りていたのですが、90年代半ばから末期にかけては、兄弟車のビスタが出てくることがよくありました。セダン・HT共に1.8ばかりを数台借りたと記憶しています。
借りた当時の印象は、シングルカムだった前期こそ、パワー不足の感があったものの、2.0に続いてハイメカツインカムに改良された後期は、全体バランスのいいクルマでありました。自分の乗っていたコロナとの比較では、次世代となる30カムリ・190コロナとの比較と同様にこちらの方がおおらかな感じでしたね。
当時は、20代半ばも過ぎていたこともあって、こちらならもう少し長く乗れたかなぁなどと思ったりもしたものです。30との比較でも、一回り小さくて4隅の把握が容易なこちらの方が好きでした。気になったのはハンドル角が不足していて、小回りが効かない点くらいだったかと。
このクルマも90年代末期から2000年代初頭にかけて輸出に回されたこと、数少ない生き残りも近年のエコカー補助金の影響を受けていて、取り上げた前期は本当に残っていません。
それでも、長くに渡って好意をもって見続けてきたクルマですから、忘れられない一台なのです。