
思い出のクルマ第21回です。
今回は前回の続編的要素も加味しつつですね。
通称は形式名のY30(初期は、130~430と続いたので530と書かれることもありましたね)。430に引き続き「西部警察」・「特捜最前線」・「あぶない刑事」等の刑事ドラマの劇用車に用いられたクルマとなります。
開発の主管には、個人的に名主管だと尊敬している、三坂泰彦氏がマイナーチェンジの時期に前後して就任しているようです。きっとこのことは、マイナーチェンジによってそれまでの430風味がY31風味に切り替わったのとは無関係ではないはず。この後、三坂氏はY31グランツーリスモ・初代シーマの誕生に主管として関わります。(半ば余談ですが、さらにプログレが誕生した事情には、きっと三坂氏が同じコンセプトを考えているはずだからという話があったようです。)
オーナー変遷は、基本的には430同様なのですが、ハイソカーブームの影響もあって、新車時から若者が購入するようになります。好景気の波に乗って、可処分所得が純粋に増えたこともありますが、長期ローンが組めるようになったのも入手が容易になった要因ですね。ローレルよりも、むしろ平均購入年齢は若かったようです。
新車時こそ、若者を意識した仕様とはなっていませんでしたが、当時始まっていた日産ディーラーによる中古車商品企画なんかは、エアロ・扁平タイヤ・アルミ等が後付されていて、若者を目当てにしていた感がありありだったり。数種類あった内、「IMPUL 630R」は比較的有名ですね。
このクルマは、一時期自分で乗っていたというのは以前に述べたとおりです。近所・友人・知人・親戚が乗っていたというのも430と同じ。
手元には前期のカタログもあるのですが、エピソードを紹介する都合で今回は後期を抽出ということで。
前期のみでも、大括りで当初・VIP追加時・VG30ET追加時と3種類があり、後期でも、当初・エクセレンスorグランデージ追加の2種類は確認しています。
今回の発行は、グランデージ追加時の1986年(昭和61年)1月となります。
2015/6/2 画像を全て更新すると共に一部追加をしました。
トップグレードのV30ターボ ブロアムVIP
ボディカラーは、トヨタのスーパーホワイトに対抗して白さを追及したクリスタルホワイト。
後期から、VIPに標準のアルミホイールは、後述する”渦巻きアルミ”となります。左右で非対称の凝ったデザインのタイプですね。
マイナーチェンジでは、フロントは3ナンバー用バンパー以外はパネル類も含めて一新されていますので、比較的大きな改良でした。
マイナー前は、一世代前の430の印象を各所に残すものでしたが、ここでイメージを一新します。
5ナンバートップグレードのV20ターボ ブロアム
スタイリングとしては、430よりもリヤデッキを持ち上げてウェッジ基調の構成になっています。
マイナーチェンジにより、5ナンバーは、前後バンパーもアンダー部分まで一体の物に改良されています。
グロリアのリヤレンズは、セドリックと逆でテールランプが下側。この兄弟車間の際は、若干の紆余曲折はありますが、基本的にY33前期まで続きます。
HT V30ターボ ブロアムVIPのインパネ
名物(?)カラオケマイクは取り外されていますね。
430と基本配置は同じながら、エアコンやオーディオのパネルは液晶表示&プッシュスイッチ主体の構成に進化しています。
シートメモリーやオートワイパー等、現在になって採用が拡大され始めた装備はこの時期に生まれています。
光通信を活用した非回転式ステアリングセンターパッドは、エアバッグモジュールの縮小&スイッチ機能の増加が可能となった現在、再現されてもよさそうですが、こちらはこの時期のみに留まります。
HT V30ターボ ブロアムVIPの室内
助手席リラックスシートは、どちらかといえば前席優先のHTながらも標準装備でした。マイナーチェンジでシート縫製が変更されて、豪華な印象が増しています。当時の評価では、トヨタの方がデザインが洗練されている、日産は豪華だが今一つというものでしたが、今の目線ではワインレッドの内装色を持たない分、むしろ抑えが利いているようにも見えます。
セダン V30E ブロアム
セダンのフロントマスクは、HTにあるフォグランプが組み込まれませんが、その分グリルを強調して、濃厚感を演出しています。
登場時は、ヘッドライト下にクリアランスを入れる2段構成に違和感を感じたのですが、段々見慣れていきます。後年デザイン手法の一種として定着しましたね。4代目初期ハイエースワゴン、170マジェスタ等を見た時には、真っ先にこのクルマを連想しました。クリアランス部分の色は、セダン・HT共に、セドリックがスモークでグロリアがアンバー。この処理はグロリアの方が好み。
セダン V20ターボ SGL
セダンもリヤテールやバンパー等、HT同様の改良が加えられています。
HTは、430及びY31が6ライトウィンドーを採用する狭間の4ライトウィンドーですが、セダンはその間一貫して6ライトウィンドーを採用しています。
HTのバリエーション
カタログ上に掲載されるグレード構成は、ミッション含めてセドリックと同一なのですが、HT VIPとSTD以外全て色違いというのが興味深いところです。
セダンのバリエーション
スタンダードのみ、フロント部分の変更をされていません。Y31以降、セダンの下級グレード(DX→カスタム・STD→オリジナル)は、営業車のみとなるため最後の掲載でした。

主要装備一覧表

主要諸元表
装備一覧や諸元表は、前回の430と比較していただくと、6年余りでどれだけ進化したかをご理解いただけると思います。トップグレードは、145馬力 → 230馬力ですからね。
それでは、エピソードを紹介。
前回紹介した流星号は、あまり見かけないうちに、こちらに代替されます。
仕様は、HT V20ターボ ブロアム。当時の最多量販グレードですね。車両価格だけで300万を余裕で超えていたのですが、若者も長期ローンを組んで購入をしていたのです。この辺、今の若者クルマ事情のみを知っていると信じられないかもしれませんね。
色は、白全盛期にも関わらず、前車に続いての拘りの黒。オプションでVIP標準の通称「渦巻きアルミ」、ほかにはリヤパワーシート・リラックスシート・TVチューナー」が選択されていました。総コミで400万近かったのではないでしょうか。(現在換算だと500万以上でしょうね)
色に関しては、当時の黒って白に対して大幅な減額査定をされていたので、もの好きだなと思いましたし、実際に指摘もしたりして。ところが購入の翌年に、Y31が登場して、グランツーリスモSVが黒をイメージカラーにしたところ、一転黒が大人気に。当然Y30の黒にも人気が飛び火をして・・・友人が自慢をしたのは当然でして、私自身はまたもや見る目のなさを認識する結果となるのです(笑)。
印象は、一段と豪華になったというのが第一。オーディオやエアコンに電子制御が入り込んだ頃で、各種表示やインターフェイスには目を見張るものがありました。走りは、相変わらず高速が速いクルマでした。430から豪華装備でかさんだ重量、さらに5速からATに変わったにも関わらず、全くその差を感じることはありませんでしたね。
友人は、同学年でも生まれが早かった方なので、高校時代の夏休み明けには、これを乗り回していました。私は、免許取得可能年齢に達していなかったので当然自転車。(当時の埼玉県は、「免許を取らない・乗らない・買わない」の3ナイ運動とやらで、バイクの免許取得は事実上不可能でした) 同じクルマ好きとして、これには大きな格差を感じずにはいられませんでした(笑)。
早めに免許を取得した同級生の一部は、同様に初心者マークを付けて運転を始めます。それでも高いクルマの上限は、71マークII3兄弟くらいまでで、さすがにこのクラスを乗っているのはいませんでしたね。
もっとも、そんな彼は、早期に登場早々のS13シルビアを買ってもらい、彼の家では当時大流行していた初代シーマを同時に購入することとなります。
この時期って、クルマは日進月歩が当然。次々出てくる新車は間違いなく旧型より商品力がアップしているのが当たり前でしたから、登場時は、凄い高級車に思えたY30もあっという間にこの流れの中で埋没をしていった感がありました。
もっとも、バブル景気からバブル崩壊を経ていく中で、ふんだんにコストの掛けられたこのモデルは、ハチマルが見直されていくのと軌を同一にして、再評価されていくようになります。日本車が高級車の指向を、米車から欧州車に変えていく過渡期のモデルとしても貴重な存在でしょう。個人的にリバイバルの芽にもなるんじゃないかとも思いますが、今の日産はそんな余裕は持ち合わせていませんね。
何れにせよ、私にとっては多感世代だった免許所得前後に近くで見た思い出のクルマ。後年Y30を一時期にしろ乗ろうと思ったのには、このクルマの影響が間違いなくあります。
Y30には、他にも思い出があるのですが、それは次回に。