
間に別の話を一つ挟みましたが、
前編に続く後編をお送りします。
タイトル画像は裏表紙になります。
名前のとおり、セールスマニュアルですから、最終的にはお客様に買っていただくのが目的ではあるのですが、あまりあからさまな記載はないように思います。たとえ本音であっても、露骨に売らんかなで書かれるのは、あまり気分の良いものではないと私なんかは思うので、このマニュアルにはむしろ好感が持てます。
今と違って新車の販売台数が年々増えていく中でしたので、今よりもノンビリしていたと言えるかもしれませんね。
前段はこれぐらいで後編に入っていきます。
2015/4/12 画像を全て更新しました。

左頁は5ドアのスタイリングの紹介
リヤドアから前は4ドアと共通ですが、Cピラーから後で独自性を強調。
ここでは空気抵抗係数の低さを謳っています。
ライバル車の数値も記載されているのですが、サバンナやカペラで空気抵抗係数の先駆けとなったファミリアの数値の高さが意外だったりです。
右頁は5ドアの最大のセリングポイントとなるオールフラットシートの紹介
ワンボックスワゴンが先に”売り”にした機能にあやかる形です。
このサイズでこの機能を達成しようとするとどうしてもフロントシートを小さくせざるを得なくなるのですが、リヤシート座面を斜め後ろに引き上げさせることで、回避しています。その分作り方は複雑となっています。
まぁ、使い易さよりも機能を備えることが重要としている感もありますね。

オールフラットシートで掴みを得たところで、今度は運転席周辺の紹介
5ドアZXの前席には7ウェイスポーツシートが標準となっています。
このシートは先行したカローラII系3兄弟のスポーティグレードと基本形状を同じにするもの。4ドアのシ-トとの分け方からして、4ドアよりも若年層を狙ったことを伺わせます。
右頁の各装備は、リヤワイパーを除いて4ドアSE系とほぼ同水準となります。

続いての左頁はリヤシート周辺の紹介
分割可倒式リヤシート以外は5ドアの独自機能となります。
少し前に登場したコロナFF5ドアは、これら機能の他にリヤパーセルボードを簡易座席にできる機能もありましたが、こちらは備えません。
右頁は5ドアが搭載するエンジンの紹介
4ドアにある1300の設定が無いのですが、こちらには4ドアには無い1600EFIがある形。(もっとも直ぐに4ドアにも1600EFIが追加となるのですが。)
設定の仕方からして、5ドアを上級に見せたかったのでしょうね。

5ドアのセリングポイントを一通り紹介したところで、量販グレードと見込んだ1500ZXの紹介
先に書いたとおり、ZXは4ドアSEと並ぶ上級グレード。
どうやら他車からの吸引を5ドアに任せたかったことが伺えます。
この中ではウェザーストリップの記載が謎ですが、どうやらリヤスポイラー解禁に合わせる筈が、モデルチェンジが先行したための措置らしく。
初期型はちょこっと反っただけでしたが、解禁後の部分改良では明らかにスポイラー形状と判る形に大型化されます。

5ドアは小型車との比較や小型車からの代替があると目されていたため、オプションながらも豪華装備が選択可能になっています。
このクラスでパワーウィンドーやオートドライブが選択できるようになったのは驚きでした。もっともこれらを装備すると価格も小型車に匹敵する金額となります。
スプリンターの取扱チャンネルだったオート店は、スプリンターの上級車種はチェイサーとなってしまうため、こういう設定を必要としていたのも事実。
右頁は1600のATに設定された、電子制御4速オートマチック”ECT-S”の紹介。ECT-Sは、この後トヨタの電子制御オートマチックの基本プログラムとなります。従前のECTは、パワー・ノーマル・エコノミーの3パターンでしたが、ノーマルの替わりにマニュアルを追加したというのが主な違い。
このクラスのATは3速が大多数の中で4速を導入したのは先進的な試み。やがてこのクラスのAT比率の向上に貢献していくこととなります。

5ドアの次はヤング層の注目が集まったトレノの紹介
お客さんには、「まずじっくり車を見てもらうこと」という辺り、セダンシリーズとは客層の違いが明確に感じられます。商品力への自信の表れと言えるかもしれません。
右頁は期待の新エンジンとなる4A-GEUの紹介
クラス随一の130馬力(旧型比15馬力UP)によって、パワーウェイトレシオは大幅向上。当時、性能の目安とされた0~400m加速でも、一クラス上を上回るタイムを誇っています。

続いては細部の説明。
この辺もセダンシリーズとは違って、お客様は既に研究済み、売る方は知識の補助という位置付けが感じられます。
従前「トレノ」名はクーペのツインカム限定で使われた名称でしたが、モデルチェンジの際、クーペシリーズ全体の名称となったことへの理由(言い訳?)が説明されています。
同じGT APEXでも、2ドアはパワステが標準、3ドアはデジパネが標準と設定が分かれている辺り、3ドアの方が若年向けと想定されていたようです。
セダンのATは、1600のみ4速で他は3速でしたが、こちらは1500にロックアップ付4速ATが設定されています。

左頁は戦略グレードとされる、GTVとGT APEXの紹介
GTVは、その昔セリカに設定されたグレードですが、時を隔てて走りを徹底追及したグレードとして、レビン・トレノに復活します。
GT APEXは、豪華装備も備えたグレード。旧型では、マイナーチェンジの時にクーペの最上級グレード、トレノAPEXとして追加されています。
ライバル車との比較では、他社の一クラス上の車種に対して過激な言葉が並びます。
右頁はボデー・エンジン・ミッションの一覧
モデルチェンジで設定が大幅に変わったため、混乱しないよう注意事項が書かれています。前回書いたとおり、それほど時間を空けずに再度変更を受けていて、また設定内容が変わるのです。販売最前線の苦労が偲ばれます。

最後は
以前に紹介したクレスタでもあった商品知識テスト。
先日1級不合格が判明した「くるまマイスター検定」もこういった内容なら、ほぼ満点近く取れたと思うのですが(笑)
ということでいかがだったでしょうか。
ページ数の割り振り方からして、初となるFFシリーズが重視されているのは明らかです。先述のとおり、トレノシリーズに関しては、お客様に負けない知識という観点は持っていないのでしょうね。
そんな期待を背負ったシリーズでしたが、トレノが好調に売れる一方でセダンシリーズ、特に5ドアはそのスタイリングが一般受けせず伸び悩むこととなります。急遽4ドアにもスポーティグレードのSRを追加しますが、販売台数の大幅増とはならず、早期のテコ入れで商品力を補強しつつも、マイナーチェンジあるいは次世代に向けて戦略の見直しを迫られることとなるのです。
私自身は、保守的なチェンジが多かったこのシリーズには珍しく意欲的な取り組みが多くて、この世代好きなんですけれどね・・・