
前編の続きです。
この時期はハイソカーブームの真っ只中ではあるのですが、高級車だけが売れていたのかというと、決してそんなことはなくて、ブルーバード・コロナを巨頭とするミドルサイズ(小型車クラスとも分類されていましたね)のクルマもファミリー層を中心として一定台数売れていたのです。
この時代のミドルクラスを象徴するキーワードは前編でも書いたFF化だと思っています。
最初からFFだったレオーネやアコードを別にすれば、このクラスが従来のFRからFFに変わる皮切りとなったのは1981年(昭和56年)の日産バイオレット・オースター・スタンザ。それからは続々とFF化が進むのですが、トヨタだけはコロナとカリーナのモデルチェンジをFRで一度行って、その後追加車種の扱いでFFモデルを追加。その過程でFFに主軸を移すという形を取っています。
もう一つ、これはミドルサイズに限りませんが、MTからATへの移行が明確になった時代です。確かこの年のAT比率が50%を若干下回るくらいで、翌年には50%を超えたと記憶しています。
少し前に掲載した資料によれば、1979年(昭和54年)上半期のAT比率は、マークIIでも半分弱、コロナ20%、カリーナ15%ぐらいだったのですから、急激にAT比率が上がったということなのです。
50%前後という数字は全国平均ですから、混雑が多くて移動平均時速が低い都内ではもっとAT比率が進んでいたのは間違いないでしょう。
さらにもう一つ、パワーステアリング(PS)の装着比率も向上しています。
FRに比べて前輪側が重くなるFFは、ステアリングも重くならざるを得ないため、その対策としてか、あるいは、ATと組み合わせてのイージードライブ時代になったのか、もしかするとその両方なのかもしれませんね。
少し話を脱線させますが、、、
AT・PS人気は中古車市場にも飛び火するのですが、ミドルクラス以下だと何せ装着車が少ないということで、両装着車に人気が集中して中古車価格も強気、という当時の記事もありました。さらにはPS後付という事例もあったようですね。
この後紹介する価格表上の標準仕入車両を見ると、この辺りが反映されているのが、お分かりになるのではないかと思います。


最初はFFコロナ
登場は1983年(昭和58年)1月。最初は4ドアセダンと2ドアハードトップ(HT)の両FRシリーズの追加車種としてFF5ドアのみ登場しますが、僅か1年足らずの同年10月にFF4ドアやエンジンバリエーションを追加して、一気に主流をFRからFFに移します。
この際に、FR時代はライバル車を気にする余り、マークIIに近づき過ぎたという反省から、車格を若干下げる方向に修正しています。
この作戦が大当たりして、カローラの需要を一部吸収することにも成功。1984年(昭和59年)の販売では、FFにモデルチェンジしたばかりのブルーバードを凌ぐ台数となります。
販売の主力は、4ドア1800&1500のEXサルーンとGX
・4ドア1800EXサルーン(AT):1,849,000円(補正後:2,773,500円)
・4ドア1500EXサルーン(AT):1,695,000円(補正後:2,542,500円)
・4ドア1800GX(AT):1,607,000円(補正後:2,410,500円)
・4ドア1500GX(3AT・PS付):1,491,000円(補正後:2,236,500円)
その他参考
・4ドア1800EXサルーンAD(AT):1,968,000円(補正後:2,952,000円)
・4ドア1800SX(AT):1,753,000円(補正後:2,629,500円)
・5ドア1800EXサルーン(AT):1,895,000円(補正後:2,842,500円)
・5ドア1500GX(4AT・PS付):1,596,000円(補正後:2,394,000円)


続いてはFRコロナ
登場は1982年(昭和57年)1月。同年9月にツインカム・ターボを搭載してスポーティな性格を強めますが、FF4ドア追加時に1600DOHCを追加するものの、HTは従前通りのグレードながら、4ドアは廉価グレードとGTシリーズのみとなります。
この時期はモデルチェンジを間近に控えていること、カムリ・カローラ等のFFセダンにもスポーティグレードが追加されるに至っては、4ドアのGTシリーズは受注生産車両の扱い。従って、HTあるいは4ドアの廉価グレードが販売の主力となります。それら全てでも僅かな台数というのが実態ですが。
・HT1800GT-TR(AT):2,385,000円(補正後:3,577,500円)
・HT1600GTスポーツ7:2,080,000円(補正後:3,120,000円)
・セダン1800GX(AT):1,591,000円(補正後:2,386,500円)
その他参考
・HT1800EXサルーン(AT):1,891,000円(補正後:2,836,500円)
・セダン1800GT-TR(AT):2,329,000円(補正後:3,493,500円)
・セダン1600GTスポーツ7:2,028,000円(補正後:3,042,000円)



カリーナシリーズに移ります
FF4ドアの登場は1984年5月。FRシリーズの登場はコロナよりも早かったのですが、FFシリーズの登場はコロナよりも遅れます。この登場の仕方は、カリーナが元来持っていたスポーティーな性格の影響かもしれません。(一時期はFRのまま残るという噂もありましたね)
FRの時点で1500が主力でしたので、ボディサイズこそ若干小さくなりますが、コロナよりも若干下という点も含めて車格的には変化なし。この辺、コロナがカリーナに近寄ったという見方もできそうです。
コロナにある1800EFIが無い代わりに1600EFIを搭載するグレードを設定しています。欧州への輸出もあるコロナに対して国内の専売でした。
専門家の評価は今一つでしたが、市場の評判は上々で、こちらもカローラの需要を吸収しつつで、コロナに次ぐ販売台数を記録します。
販売の主力は1500SG、1800SE系、1500SE
・1800SE(AT):1,793,500円(補正後:2,690,250円)
・1500SE(AT):1,662,300円(補正後:2,493,450円)
・1500SG(4AT・PS付):1,506,500円(補正後:2,259,750円)
その他参考
・1800SEエクストラ(AT):1,955,500円(補正後:2,933,250円)
・1600ST-X(AT):1,738,300円(補正後:2,607,450円)
・1500ジュン(4AT):1,570,500円(補正後:2,355,750円)


次はFRカリーナ
登場は1981年9月。コロナと同時にツインカムターボを追加後、1983年5月にマイナーチェンジ。FFシリーズ追加時にも一部改良を受けています。
FFシリーズ追加時に4ドアはグレード整理されているのも同じ。
こちらは4ドアの1600GT-Rが標準仕入にされているのがコロナとの性格の違いのようで興深いですね。その一方でクーペはジュンATと1500ST(MT)以外、受注生産という不人気ぶり。
また、FRカリーナはPS無の方が標準仕入というケースが多いのも特徴。
・4ドア1600GT-R:1,953,500円(補正後:2,930,250円)
・4ドア1800SG(AT・PS付):1,561,000円(補正後:2,341,500円)
・クーペジュン(AT):1,503,500円(補正後:2.255,250円)
・クーペ1500ST(MT):1,453,500円(補正後:2,180,250円)
その他参考
・4ドア1800GT-TR(AT):2,260,500円(補正後:3,390,750円)
・クーペ1600GT-R:2,020,500円(補正後:3,030,750円)
・クーペ1800SE(AT・PS付):1,874,500円(補正後:2,811,750円)
・サーフ(AT・PS付):1,724,500円(補正後:2,586,750円)


最後はコルサ
1982年5月の登場。当初は4ドアと5ドアのみでしたが、1983年8月に3ドアを追加しています。その後1984年8月にマイナーチェンジ。
当初はセダンが販売の主力でしたが、コロナ・カリーナがFF化して1500の比率が増えたため、必然的に3ドアや5ドアの比率が増えることとなります。
他店の扱いではありますが、カローラFXの登場やスターレットのFF化に挟まれて苦しい立場に置かれます。初代のFF縦置を2代目も引き継ぎましたが、他車はほぼFF横置のため、既に異端の扱い。
販売の主力は、1300の3ドア&5ドアGX、15005ドアGX辺り?
・5ドア1500GX(AT・PS付):1,302,000円(補正後:1,953,000円)
・5ドア1300GX(AT・PS付):1,250,100円(補正後:1,875,150円)
・3ドア1300GX(AT・PS付):1,216,100円(補正後:1,824,150円)
その他参考
・5ドア1500EX(AT・PS付):1,455,200円(補正後:2,182,800円)
・3ドア1500SXスポーツパッケージ(AT・PS付):1,464,200円(補正後:2,196,300円)
・3ドアDX(AT):1,116,100円(補正後:1,674,150円)
・4ドア1500EX(AT・PS付):1,460,200円(補正後:2,190,300円)
・4ドア4WDEX(AT・PS付):1,676,100円(補正後:2,514,150円)
最後にいつもの維持費に関する費用を、昭和53年と比較しつつで抜粋してみましょう。また5ナンバークラウンで引きますと・・・
【自動車税】31,500円(補正後:59,850円) → 39,500円(補正後:59,250円)
【重量税(2年)】37,800円(補正後71,820円) → 37,800円(補正後:56,700円)
【自賠責保険料(24か月)】34,050円(補正後64,695円) → 41,850円(補正後:62,775円)
となります。
この年代までくると、何となく馴染みのある金額でしょうか。自動車税と自賠責保険料は物価上昇に合わせて値上がりしたものの、その後は値上がりせずという感じですね。
日本の自動車に関する税金は高いと言われるから、新車購入時だけ安くしたというだけかもしれませんが(笑)
ちなみに、タイトル画像は当時の任意保険料となっていますので、参考までにて。
(後編まとめ)
当時の価格だけでみると、標準的なグレードなら、100ccで10万円(例:1500なら150万円)にちょうどあてはまるのが興味深かったです。
補正後金額で眺めると、当時のFFコロナとFFカリーナの役割は、現在のノア・ヴォクシー、あるいはプリウス系がその代りを務めているんだなぁと思いました。ファミリー層を中心とした購買層も同じような感じですしね。
FRシリーズはGT系の価格からすると、予想通り(?)86やマークXでしょうね。
コルサは、今のコンパクトカーの価格と比べると、かなり高いような気もしますが、当時のステレオを現在のナビに置き換えてみると、やや高いぐらいなのかもしれません。軽自動車との競争を強いられている現在のコンパクトカーが戦略的な価格を強いられているとも言えそうですが。
ということで、前後2回で取り上げてみましたがいかがだったでしょうか。
ほぼ数字の羅列となっていますが、日本車黄金期の(だと個人的に思います)当時を懐かしみながら、現在と比較してみるのもいかが? という意図が伝われば、嬉しく思います。