
思い出のクルマ第25回です。
120クラウン自体は、新車時にはそのCMのとおりに「いつかは」と憧れましたし、免許を取って車に乗り始める頃には、何とか手が届く範囲の価格帯まで下りてきていて、実際に購入した同級生がいたりもしたのです。
ただ、普通のカタログ紹介に終始することもないかというのと、このクルマに母方の伯父が乗っていたことがありまして、後述の理由から思い出に残っているものですからその話を主にすることにします。
クラウン アスリートという名前から連想される姿は、既に170系以降となっている方が殆どだと思われますが、少しコアな方だと120系や130系にもこの名前が使われていたことをご記憶の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
クラウンの特別仕様としては、先に110系後期から登場したエクレールがあって、そこにアスリートが加わった形ですが、その登場当初の頃のカタログを2冊紹介します。
最初は1984年(昭和59年)5月のカタログからです。
以下の3仕様が、同年6月 - 7月の全国限定発売特別企画車として予告されています。
110系後期から設定のあったエクレールは、120系前期にも設定されていました。
110系後期同様に、スーパーエディションがベースとなります。ベース車同様、2000EFI・2000ターボ・2400ターボディーゼルの3タイプが設定されていました。
特別装備のとおり、お求めやすいクラウンながら、ちょっと豪華な気分が味わえるというのが特徴で、売れ筋の価格帯でもありました。
後期には、それまでの量販グレードであったスーパーサルーンが廃止される代わりに、若干装備が厳選されたスーパーセレクトが設定されることとなるのですが、その装備に近いあたり、市場模索を兼ねつつだったと推測します。
初登場のアスリート。
エクレールをベースにツインカム24と4輪独立懸架を装備したとするべきか、ツインカム24唯一のグレードだったロイヤルサルーンの装備を厳選したとするべきかは、微妙ですね。
今にして思えば、何となくセドリック/グロリアにあった人気グレードのターボSあたりにヒントを得たような気もします。
他エンジンと違って、ツインカム24はスーパーサルーン等の中間グレードを持ちませんでしたので、こうしたお買い得グレードの価値は高いものでした。
エクレールと違って、オートエアコンとデュアルオートエアコンのオプション選択をすることはできませんでした。
カリーナ、マスターエース、ハイラックスとトヨタ店扱いのRVには、サーフが付くならクラウンにも付けてしまおうという企画(もちろん違います)。
120系のワゴンでは、従来型以上の上級グレードとしてスーパーサルーンを設定したところ、予想以上に好評だったので、さらなる上級グレードへの設定を模索していたのだろうと思います。
グランドサーフ自体は、エクレールやアスリートと違って、この時のみで終わりますが、ワゴンとしては、後期でスーパーサルーン エクストラに上級移行、さらに130系ではロイヤルサルーンが追加されたことからすると、十分需要が見込めるという判断がされたのでしょうね。

左頁は、上記3グレードの主要諸元と主要装備一覧となります。
右頁からは、1984年9月のカタログとなります。
前月には、2800から3000に変更されると共に一部改良を受けているため、エクレール・アスリートも改良後がベースとなります。
前回は、エクレールも特別企画車と記載されていましたが、この時には特別仕様車と記載されています。
前回との違いは、
・専用モケットシートの表皮並びにドアトリム表皮のデザイン変更
・AM/FM電子チューナーラジオの追加
・アルミホイールのOP選択が可能に
となります。
ドアミラーが可倒式となっているのは、ベースグレードにも共通する改良です。
同時期には、マークII3兄弟がモデルチェンジをして、クラウンとの競合関係が従来以上に激化していましたので、一年早くモデルチェンジしていたクラウンへのお買い得モデルの追加は必要不可欠だったのです。
(クラウンとの競合については、
クレスタのセールスマニュアルをご参照くださいませ)
アスリートも引き続き設定されます。
アスリートには、エクレールの追加内容に加えて、フロントスポイラーも追加されています。
こちらもマークII3兄弟のツインカム24を購入対象とするなら、もう少し足すだけで購入できるクラウンとして、トヨタ店的にはありがたい存在だったのだろうと想像します。
前回と違って、グランドサーフが設定されていないため、2頁を使って特別装備が紹介されています。
前回同様、裏表紙には、主要諸元表と主要装備一覧が掲載されています。
ということで、いかがだったでしょうか。
改良後のエクレールの項で軽く触れたとおり、新型マークII兄弟にはクラウンに匹敵する車格を宣伝する一方で、クラウンにはちょっと背伸びをすれば買えるグレードを同時期に設定する辺り、実に抜け目のない商売としか言いようがありません。
最後に、思い出話を少し。既にクラウンの新型は140系になっていた時期に、叔父が120クラウンを中古で購入します。前から見ると完全に後期でグリルには”TWINCAM24”のエンブレムがありました。
最初は、後期のTWINCAM24とは珍しいなと思っただけなのですが、後ろ姿を見てビックリ。そこには前期テールがあったのでした。グレードエンブレムは、”Royal Saloon”と”TWINCAM24”。こういう仕様を見ると、ついベースを特定したくなるのは悪い癖。サイドモールは前期でしたので、クリアランス・グリル・フォグ等を一式交換した前期と断定。
こりゃ前期改の後期仕様だなと思ったのですが、どうも室内の様子もおかしいのです。エアコンはリヤスイッチのないレバー式マニュアルでドアトリムの布地面積もロイヤルにしては少ないような・・・。これは、ひょっとすると、ロイヤルのエンブレムを付けたスーパーサルーンかも、と思って見回すと、シフト周辺にはECT-Sのスイッチがありますし、タコメーターは9000回転まで目盛有。外装のこともありますから、何が本来仕様で何が改造仕様なのか、キツネにつままれたような気分になったのでありました。
散々悩んだ末に、その場では特定できなくて自宅に帰ってから、今回のカタログで確信。正解は、2型アスリートベースのロイヤルエンブレム&後期マスクへの一式換装!。即特定できなかった時点で、前オーナーに一本(笑)。
思い返せば、このクラウンは当時から前期改の後期仕様が多かったような記憶があります。その頃、何度も群馬県の某解体に通っていたのですが、そこには120クラウンが多数積まれていて、特に後期はフロント周りやリヤテール周辺が外された車が殆どでした。
おそらく前期改の部品に使われたということなのでしょう。(当時430へのグリル交換にも使われていましたけれどね)
120クラウンというクルマ自体は、歴代の中ではちょっと若向きっぽくて、ハイソカーの頂点的存在で、と他にもいろいろ語るべきキーワードがあるのですが、何か一つというなら、このことを真っ先に思い出す私なのです。