
そんなこんなで、ドツボに嵌ったネタをお送りします
クラウンのお買い得グレードが好評でしたので、それならこれはいかがでしょう?というのが些細な動機だったのですが。
往年の人気車故、この兄弟を既に取り上げられた方もいると想像しますし、私自身クレスタをやっているのですが、この両グレードだけをここまで追ったところはないだろうとも思います(笑)。
大したことはないと思った方は、意外な奥の深さに驚くはずです。
前振りはこのぐらいで、早速紹介していきます。
2015/5/30~31 画像を追加すると共に一部構成を変更しました。
・1984年8月 70系へのフルモデルチェンジ
最初に、1984年8月のカタログから、全グレードを紹介してしまいます。
最初の2頁はアバンテ系、次の2ページはアバンテ系以外の廉価グレードとなります。
70系へのモデルチェンジが行われた際、チェイサーはそれまで設定のあったセダンが廃止されてハードトップのみに絞られています
話の主役となるXGエクストラのみを再掲
従来同様、1800の最上級グレードとして、マークIIとクレスタには設定の無い、XGエクストラが設定されていました。
この代の代名詞的価値を持つカラードバンパーとスーパーホワイトIIは、アバンテ以外ではXGエクストラのみ、選択可能でした。
内装では、アバンテと同形状の豪華なシートが特徴でした。
・1985年6月 スーパーホワイトIIとカラードパンパーの設定拡大
アバンテ・XGエクストラ以外でもカラードバンパーが選択可能となると共に、ホワイト(033) → スーパーホワイトII(040)に設定が変更されています。(XLのみ黒バンパーとセットでホワイトが継続設定)
両アイテムでやはり外観の印象は変わりますね。
SXLとXGは、ホワイトの色変更により、内装色もクールグレーからマルーンに変更されています。
・1985年10月 XLエクストラの追加
この時のグレード追加は、一般的には上の2台を指す(GTツインターボSは、前期のみの希少グレードという視点もあり)のですが、今回はあくまでも軽く触れるのみとします(笑)
本題の1800に関しては・・・
1985年に入ると、マークIIにはGRエクストラ、クレスタにはスーパーカスタムエクストラという、XGエクストラ同等のグレードが特別仕様で発売されるのですが、こちらはついに見開きでも掲載されることになります。
「TOYOTA GT-SALOON 1800」の文字はさすがに無理やりの感あり。
こちらがチェイサーのみに追加されたXLエクストラ
従来、XGとXLの間には、それほど装備差が無かったはずなのですが、隙間にねじ込むような形で追加されています。
外装ではピラーエンブレムとリヤの「EXTRA」エンブレムが追加、内装では専用のモケットシートが特徴となります。
外装色はスーパーホワイトIIのみ、内装もマルーンのみでした。
XLでは、マルーン内装が選択不可でしたので、それを補う形。
・1986年8月 マイナーチェンジ
開発のテーマはいくつかあるのですが、その中には「中級グレードの充実」があったりします。
マイナーチェンジ後もXGエクストラが、カタログの見開きで扱われるのは同様。
さすがに「TOYOTA GT-SALOON~」の文字は消えていますね。
マイナーチェンジではクリアランスモニターが全車標準装備となりました。
おさらいも兼ねて、この時点の4気筒系全グレードを掲載します。
XGとXGエクストラは、1800だとパワーウィンドーの有無が一番大きな違い。XLとXLエクストラは、、、見た目からして全く違います。

この先の話を知っていただくためにも、この時点の主要装備一覧と主要諸元表を掲載してみます。
普通はここまでで、あとは特別仕様車の適宜投入ぐらいでモデルチェンジまでつなぐのですが、実はここから更なる展開が待っているのです(笑)
・1987年8月 特別仕様車「新型XGエクストラ」発売
生産時期:1987年8月 ~ 1987年10月
追加装備:大型ロッカーモール、樹脂ホイールキャップ 、カラードマッドガード、トランクキーオーナメント
実は、1988年1月のXGエクストラとXLエクストラのカタログ画像なのですが、一部内容が異なるのみですので掲載してしまいます。
この変更により、外観上ではリヤトレッドとエンブレムを除けば、アバンテと同等になっています。この時期には、マークIIにGRサルーン、クレスタにはスーパーカスタムエクストラが追加されていたのですが、ここまで上級グレードに近い装いではありませんでした。
以下は、特別仕様車のはずなのに、XGエクストラだけ差替えとなった本カタログより抜粋。
1986年8月の画像と比較すると、違いは一目瞭然ですね。
本カタログの差替えが物語る通り、生産時期終了後も、一般グレードとして継続生産となります。
・1988年1月 XLエクストラの仕様向上
追加装備:大型ロッカーモール、樹脂ホイールキャップ 、カラードマッドガード、ホイールアーチモール
備考:パワーウィンドー&電磁ドアロックのOP設定追加
XGエクストラは特別仕様車として発売された後、一般モデルに転じましたが、こちらは最初から一般モデルの仕様向上となります。
XGエクストラと外観を比較すると、トランクキーオーナメント無、ブルーガラス、ガラス越しに見えるヘッドレストの大きさ相違等の違いはありますが、まぁ一般的には些細な違いであって、判別できないでしょうね。
一般モデルを抜粋したカタログという扱いとなるため、裏表紙の主要装備一覧表には、特別装備という記載は見当たりません。
もちろん本カタログの画像も更新されています。
一部アイテムの変更だけでも大きく印象が変わるのが、クルマのスタイリングの奥深いところです。
・1988年4月 オートエアコン付XGエクストラとオートエアコン付XLエクストラ追加
モデルチェンジ間際となりましたので、さらにお買い得を上乗せ(笑)
手前がXGエクストラ、奥がXLエクストラとなります。
特にXGエクストラなら、フロントにAvanteエンブレムを追加してしまえば、この角度なら判別されることはありません。
販売店装着のオートエアコンが付いたXGエクストラ
同時にドアカーテシランプが追加されているため、特別仕様車の扱いとなっています。
同じく販売店装着のオートエアコンが付いたXLエクストラ
オートエアコンの装着に伴い、コントロールパネルがレバー式からプッシュ式にグレードアップされています。この時まで、XLエクストラはオートエアコン装着不可というのがネガだったので、この追加は福音でした。
もっとも、こちらはオートエアコン以外の追加がなかったため、特別仕様車の扱いとはならなかった・・・というのは本当に微妙な違いです(笑)

表と裏表紙です。
主要装備一覧では特別装備の記載が復活していますが、XG・XLとの比較となっています。
ということで、以前に特集したクレスタと比較しても、チェイサーは1800への力の入れ方が違うのがお解りいただけると思います。
このシリーズは、成功を収めてチェイサーの拡販に寄与することとなりました。
XLエクストラこそ、70のみで終了となりますが、XGエクストラは、80に変更となる際に”ラフィーネ”という独立したグレード名が与えられることになるのです。
そのあたりの事情については、1989年2月号の月刊自家用車、車種別総合研究において、80マークII・チェイサー・クレスタが特集された際に、掲載されたインタビュー記事が解り易いと思います。
ちなみにインタビューしているのは、自動車ジャーナリストの川島 茂夫(高原 誠)氏。インタビューを受けているのは、当時の主査である渡辺 忠清 氏となります。
引用ここから
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渡辺 4気筒のほうは、全体の割合からすると30%ぐらいなんですが、地方へ行くともうちょっと出るんです。(中略)
高原 1800モデルでもチェイサーだけはラフィーネをつくりました・・・。
渡辺 これも正にその販売店を扱っている車種を考えての設定です。
高原 去年(昭和62年)、チェイサーは1800が・・・。
渡辺 多いです。マークII、クレスタに比べますと1800の比率が非常に多いんです。それはスプリンターからの上級移行としていきなりポンとアバンテにいくというのはあまりにも大きすぎる。中間的にもう少し充実したやつをつくろう。
高原 そうすると、コロナであり、カリーナであり、カムリでありの・・・肩代わりをするわけですね。
渡辺 そうです。ちょっと違うんですけどね。しかし、だからといって全く新しい車種を入れても、これまた代替は一気にはいかないでしょうから、今までの形態の中でより売りやすくしていくためにはああいった形がいいだろう。それなら、エクストラだとか何とかいう名前を付けるよりはグレード名をつくっちゃったほうがお客さんも気持ちがいいだろうし、売る方にしたって訴求しやすいだろうと。
---------------------------------------------------------------------引用ここまで
インタビュー記事中にある肩代わり云々についての検証として、比較されている車種の価格を比べてみます。
1988年3月時点の東京地区の車両本体価格(MT/AT)となります。
(チェイサーに関しては1987年から1988年にかけての仕様変更が反映されていないという疑いがあるのですが、まぁあまり変わらなかっただろうということで、そのまま掲載します)
・チェイサー
XLエクストラ:146.5/153.4
XGエクストラ:164.3/171.2
・カリーナED
1800L:142.3/150.2
1800F:159.8/167.7
・コロナ →
カタログへのリンク
1800MX:141.7/149.6
1800EXサルーン:158.8/166.7
・カムリ →
カタログへのリンク
1800XTサルーン:139.3/147.2
1800ZE:165.5/173.4
ということで、価格自体はかなり接近していたのです。
もっとも価格には理由があって、これらFFサルーンとチェイサーを比較すると、
・燃料供給装置、 シングルポイントインジェクション : キャブレター
(さらにコロナのみハイメカツインカム)
・オートマチック、 ロックアップ機構付 : ロックアップ機構無
・リヤサスペンション、 ストラット : 5リンクリジッド
となって、それなりの格差はあるのですが、まぁ気にしない人には大した問題ではなかったということなのでしょう。
かくしてチェイサーの裏メニュー的な人気グレードだったのですが、この手のグレードの常で、今では本当に残っていません。ごく普通のユーザーが、ごく普通に買って、ごく普通に使って、ごく普通に代替してとなったので、当然ではあるのですが。
長くなってしまったのですが、最後におまけ。
80以降はチェイサーも2.0Lに主流を移し、その傾向は90以降さらに顕著となったのですが、100では唯一1.8Lが途中で復活していたりします。
その100が末期(=チェイサーのラスト)となった時点のチラシです。

表にあるのは、2.0アバンテではなく1.8。チェイサーは、最後まで1.8が拡販の決め手だったのです。