
前回と年代はクロスするものの、ボディサイズはだいぶ小さくなりますね。
最初は特別仕様車のカタログだけを軽く解説するのみにしようかと思ったのですが、もう少し話を膨らませて書いてみようと考えを切り替えることにしました。
2ヶ月ほど前のブログで、現在の200万円前後のセダンは、厳しい競争関係とはなっていないと書いています。ところが今を遡る32~33年前は、同クラス内で、熾烈を極めた戦いが展開されていたのです。
現在、約150~200万円の価格帯に位置するカローラは、当時80~120万円前後。当時は大衆車という呼ばれ方をしていたこのクラスで販売台数を競った3台を最初に紹介します。
1.トヨタ カローラ
E70系と呼ばれたFRの最終モデル。
登場は1979年3月で1981年8月にマイナーチェンジを受けています。
東京地区の車両本体価格(1983年2月時点、以下同)
・セダン1300DX(4速マニュアル): 855千円
・セダン1500GL(4速マニュアル): 966千円
・セダン1500SE(5速マニュアル): 1,114千円
カローラは、1976年2月からマイナーチェンジ直後となる1981年10月まで、69ヵ月連続国内販売大衆車部門車名別台数第一位を獲得していました。一番売れているクルマというのがセールスポイントの一つだったのです。
2.ニッサン サニー
B11と呼ばれたモデルです。
1981年10月にそれまでのFRからFFに一大転換しています。
カローラの70ヵ月連続一位を阻止したのは、このサニーでした。
東京地区の車両本体価格
・セダン1300DX(4速マニュアル): 834千円
・セダン1500GL(4速マニュアル): 950千円
・セダン1500SGL(5速マニュアル): 1,079千円
3.マツダ ファミリア
BD型と呼ばれるモデル。
1980年6月にモデルチェンジしてFFに転換。
若干迷いつつも1983年1月にマイナーチェンジを受けた後のモデルを掲載してみました。
モデルチェンジ以降、人気は急上昇してカローラとサニーに割って入れる存在に急成長しています。販売の主力はハッチバックでしたが、このマイナーチェンジでセダンの存在感を上げるよう注力されています。
東京地区の車両本体価格
・セダン1300XC(4速マニュアル): 818千円
・セダン1500XT(5速マニュアル): 932千円
・セダン1500XE(5速マニュアル): 1,057千円
1982年における、この3台の販売台数1位をめぐる争いは、有史に残るのではと思うくらい、凄まじいものがあったのです。セールストークの白熱はもちろん、競合関係が判明した途端、値引きという実弾攻撃が飛び交う始末。
何せ、値引きのマツダをして、「カローラはクラウンで得た販売利益を投入しているんじゃないか」と言わせるぐらいだったのですから、当時の様相が想像できようというものです。そんな状況ですから、もちろんサニーも新型投入直後から、値引きの大乱戦に引き摺り込まれていました。
当時、月刊自家用車を読んでいたのですが、現在も続くX氏シリーズでは、100万円前後のクルマにも関わらず、20~30万円という値引きが常に誌面を飾っていたのです。
(それだけでなく、販売台数稼ぎの登録済未使用車が大量発生していたりもして)
この3車間の争いも空前絶後でしたが、実はカローラには、サニーとファミリアだけでなく、身内にも強敵がいたのです。
4.トヨタ カリーナ
1981年9月に3代目が登場。A60系と呼ばれたFRの最終モデル。
2代目は最小排気量が1600でしたが、この代から1500を積んで大衆車市場からの顧客獲得という販売戦略を立てます。
割安な価格設定が大いに受けて戦略は大成功、受注予想を上回る比率となり、1500がカリーナの販売の主力モデルになっています。
東京地区の車両本体価格
・セダン1500DX(4速マニュアル): 1,008千円
・セダン1500SG(4速マニュアル): 1,046千円
・セダン1500ST(5速マニュアル): 1,137千円
1981年11月にカローラの連続1位がストップしたのは、サニーだけではなくカリーナの影響という見方が出来るかもしれませんね。
こういった当時の背景を先に書いた上で、ここからカローラの特別仕様車を紹介していきます。
1983年1月のカタログからです。
新1300エクストラ。カスタムDXがベースとなります。
先にエクストラが出ていて、この時点では3点の装備が追加されながらも、価格が据え置かれています。
新1500エクストラ。GLがベースとなります。
こちらも先にエクストラが出ていて、この時点では4点の装備が追加されながらも、価格が据え置かれています。
右下は末期に追加されたLIMEが掲載されています。
新1500SEサルーン。SEがベースとなります。
ハードトップでは先に選択可能となっていた、初代ソアラ風のツートンカラーが特徴でした。

表紙と主要装備一覧・諸元表をまとめてみました。
上に挙げた4台の中では、最古参のモデルでしたから、こういったお買い得仕様車は必要とされていたのです。実際にこの特別仕様車を街中で見かける機会も多かったですから、販売に貢献していたのも間違いがないところでしょう。
1982年の販売台数では、サニー・ファミリアと月間1位を分け合いつつも、年間1位はカローラが譲りませんでした。FRの信頼性や実績を掲げつつで善戦したと言えますね。
もっとも、この販売合戦が1983年5月に登場するFFカローラの初期需要に影響したんじゃないかとも思えたりします。末期まで売りまくったクルマの次世代って、だいたい初期需要を集めるのに失敗するんですよね。
カローラに設定されていた特別仕様車は兄弟車のスプリンターにもあったのです。ということで、時期は前後しますが、1982年10月のカタログを掲載。

特別装備は異なりますが、ほぼ同じような位置関係の特別仕様車が設定されていたことがお解りいただけると思います。
こうして見返してみると、競争関係が各車を改良していたのかもしれないなと、当時を少し羨ましく思ったりします。当時の各車からどれか選択すると仮定したとしても、今のセダンのように人気が偏らず、分散するのではと予想するのですが。