
少し間が開きましたが、1980年代のホンダ車(ベルノ店限定)の第5弾ということで「クイント インテグラ」を取り上げます。
これで当時のベルノ店のオプションカタログは完結となります。
クイント インテグラは、1985年2月に、初代の5ドアからほぼすべてが一新された3ドアハッチバックが登場(メーカーサイトにある当時のプレスインフォメーションは
こちら)。このモデルチェンジは全車ツインカムエンジンを搭載ということで話題となりました。
続いて、1985年10月には3ドアのホイールベースを延長してリヤドアを追加した5ドアハッチバックが発売されています(同プレスインフォメーションは
こちら)。
今回取り上げるのは、その5ドア追加時のモデルとなります。
これまで同様、同年代のホンダ車と比較しつつで紹介していくことにします。
最初の見開きでは、次にも登場する5ドアGSの姿が目次と共に掲載されています。
霧の中に佇む幻想的な姿を見せたかったのでしょうね。当時のホンダですから、ベージュの5ドアであっても、どことなくドラマチックな演出なのです(笑)
PURE LUXURY VERSIONということで、前頁に続いて、5ドアGSのオプション装着画像が掲載されています。
当時はホワイトやシルバーが(3ドアだとレッドも)多かった印象で、ベージュはあまり見かけることはありませんでしたね。
それまで5ドアというと各車生活臭が前面に出ていたのに対して、クイント インテグラはお洒落感の方が勝っていたのが大きな特徴。
この4年後に登場する、ファミリア アスティナ&ユーノス100は、間違いなくここからの影響を受けていると思います。
Cピラーやリヤゲートの処理は、同時期のプジョー309との類似性を指摘されることもありますが、もう少しホイールベースを伸ばすとシトロエン エグザンティア風に見えてくる気もしますね。(左下のイラスト参照)
PURE AERO VERSIONということで、先に発売された3ドアGSiにエアロパーツを装着した画像が掲載されています。
とかくフルエアロとなると満艦飾になりがちですが、後付感や違和感が無いというか、あまり派手な印象を受けません。フルホワイト全盛期ながら、モール等のディテール部にはあえて黒を残しているのもいいアクセントになっていると思います。
こういうさじ加減は、当時のホンダが頭抜けていましたね。
3ドアを先行させて、初代のイメージを払拭すると共にスポーティなイメージを形成。後から本命の5ドアを登場させるという方法も上手でありました。
各種オーディオの紹介です。
当時の他ホンダ車同様に、標準装備のラジオは1/2DINサイズということもあって、カセットまでは1DIN一体、それ以上はコンソールに別配置とされています。
まだワンボディデッキの創生期ということもあって、4アンプだと10W程度が限界、20Wクラスだと2アンプとなっていました。
社外品は輸出前提の左メインスイッチ&ボリュームが多かったのですが、さすがの純正品で右メインスイッチ&ボリュームですね。
左頁は、エアコンの紹介です。
同クラスの他車では、オートエアコンの設定が広がりつつありましたが、クイント インテグラは、ベースとなったシビック同様にマニュアルエアコンのみでした。次世代では、一気にフルオートエアコンが設定されることとなります。
右頁は、CONVINIENCEということで主に収納に関する用品が紹介されています。
3ドアはリヤクォーターのみ、5ドアはリヤドアの3角窓のみのサイドサンシェードが当時らしいですね。
COORDINATIONということで、シートカバーとフロアマットの紹介です。
CR-Xよりも落ち着いていて、かつバラードセダンやビガーよりもフレッシュなイメージは、車両本体のイメージとも一致します。
このあたりの用品の設定もセンスの良さを感じずにはいられません。
主にアルミホイールの紹介ですが、AERO-DESIGNとされています。
エアロディッシュ全盛期らしい品揃えです。
クイント インテグラの純正アルミというと、14サイズエアロデザインのイメージが強いですね。
純正スチールは、基本的にキャップレスだったため、エアロダイナミックホイールキャップを装着しているクルマも多かったように記憶しています。
クイント インテグラの用品の目玉が、このCLOSEN SYSTEMです。
世界初の方式による<接近感知装置>とされています。
上級かつより新しいモデルのビガーには、設定の無かった装備です。
詳細は不明ですが、埋め込み型ではなくバンパー内側にセンサーを設置するとありますので、セキュリティシステムに近いものだと推定されます。
左頁はACCENTということで、主にストライプの紹介。
サイドストライプは4種類が用意されていました。
フロントロアスカートは、インジェクションモデルには標準とされていた装備です。
右頁はCARRIERということで、キャリア類が紹介されています。
左頁は、POLE&LIGHTINGの紹介です。
CLOSEN SYSTEMの設定があったものの、他車同様、リモコンポール&固定式コーナーポールも設定されていました。
ドアバイザーは、この頃から設定され始めたスモークド樹脂。車内からの視界を妨げないため、サイドウィンドーのかぶりを大きく出来ると書かれています。
右頁は、CHEMICAL GOODSです。
各種ケミカル類の他に毛ばたきが紹介されています。この毛ばたき、高級品で5,000円、普及品で2,000円というお値段は、前回のJ.フェリーと比べてお値段が一桁違います。どうやら一見同じに見えながらも、お値段ピンキリの商品のようでして、その昔購入しようとした際に、ご予算次第で各種ありますがと言われたことがあります。

最後は用品一覧です。
「どこに、どれ程、こだわるか。それが楽しい問題だ。」とありまして、正しく同感するところです(笑)
80年代半ばのベルノ店シリーズの最後ということもありますので、裏表紙も掲載します。
オイルのウルトラブランドは今も続いていますね。
ということでいかがだったでしょうか。
初代同様、シビックをベースにした成り立ちで、ちょっと上級を狙ったこのシリーズは差別化が非常にうまくいって、プレリュードと共にベルノ店を支える存在に成長することとなりました。
元々この手の中間車種というコンセプトは、この以前にも実例があったものの、成功するのは難しいとされていました。初代も決して成功とは言えませんでしたし、この3年前にミラージュをベースにして登場したコルディア/トレディアは壊滅に近い失敗となっていたのです。
このシリーズは、クルマ作りの上で、イメージの構築というのがとても大事だということを実証した例だと思います。この頃のホンダはこの辺りが上手かったのですが、特にこのシリーズの展開はその中でも白眉でしたね。
サブネームかつ、次世代以降はメインネームとなったインテグラとは、「統合する」「完全にする」という意味をもっていて、ホンダが持つハイテクノロジーをひとつに統合したクルマということから命名されたそうですが、コンセプトの醸造や販売戦略等のソフト面でも、上手に統合したクルマという印象が強いです。
もう一つ、その成功だけでなく、他車への影響という点からも特筆すべきでして、先にその一例としてファミリア アスティナ&ユーノス100を挙げましたが、その他に92レビン&トレノのコンセプトにもここからの影響を感じます。もう少し範囲を広げれば、全車ツインカムというバリエーション展開は、この後のトヨタハイメカツインカムシリーズの基になったとも言えそうです。
近年のホンダは、新型車を連発しながらも今一つ噛み合わず、結果的に実績が追随していない印象があるのですが、この時期の自社製品群を見直すことで学べることもあるんじゃないのかなと素人ながらに思ったりするのです。