
今から30年前のモーターショーのパンフレット、第2弾としてマツダを取り上げることにします。
今回のモーターショーで話題になったクルマというと、「Mazda RX-VISION」を挙げられる方も多いと思います。このRX-VISION、「ひと目でスポーツカーとわかるパッケージに、圧倒的に低いボンネットと全高を可能にする次世代ロータリーエンジンを搭載」するのが特徴となりますが、実は30年前にも似たコンセプトのスポーツクーペがエンジニアリングコンセプトカーとして参考出品されています。
30年という時を超えた一致となると、やはりここで取り上げないわけにはいかないだろうということなのです(笑)
それでは、以下紹介していきます。
1990年代の高性能4シータースポーツクーペの提案として、当時流行の最盛期にあったフルカラーホワイトを纏って参考出品されたのが、この「MX-03」でした。
当時の近未来技術についてはこの後紹介するとして、ここではそのまま現在のマツダとしても通用しそうな冒頭のコピーを取り上げてみます。
今回のモーターショーのメッセージ(リンクは
こちら)と比較すると、言い回しこそ異なりますが、社として伝えたい思いはあまり違いはないことが、ご理解いただけると思います。
これ、マツダの一貫した思いという見方も可能ですが、自分的には、この30年間の紆余曲折からすると、ようやくこの頃に返ってきたという見方をしたいところです。
そのコンパクトさを生かして、ロータリーをフロントミッドシップに搭載したボディは、全長4,510mm、全幅1,800mm、全高1,200mmという、広く、そしてとても低いサイズでした。4シーターを謳っていますが、実質的には2+2に近いでしょうね。
後述する3ローターと相まって、この4年後に参考出品され、その翌年に市販化されるユーノスコスモとの近似性を感じられる方もいると思います。
コスモのサイズは、全長4,815mm、全幅1,795mm、全高1,305mmとなって、MX-03とは特に長さが異なりますが、どうやらコスモのコンセプトを煮詰める中でラグジュアリークーペの要素が加わっていって、リヤデッキの長さが伸びていったということのようです。
ドア開閉に連動して、ルーフがガルウイング風に開くのは、低い車高の乗降性を補ういいアイデアだと思いますが、市販化されることはありませんでした。
インテリアも、バリアブルギアレシオありきの極めて特徴的なステアリングを除けば、コスモに繋がるデザインが散見されますね。
MX-03を最も特徴付けるのが、後にコスモに搭載される3ローターエンジンでした。この時点で、ツインスクロールターボも搭載されています。
そのパワーは、最高出力320ps/7000rpm(ネット値)、最大トルク40.0kg-m/3800rpmという、当時としては驚異的なレベルにありました。
当時の市販車最強は、日産のVG30ETが230ps(グロス値)、マツダの13Bとトヨタの1G-GTが185ps(ネット値)という数値だったと書けば、そのハイパワーぶりをご理解いただけると思います。
後年のコスモは、280ps/6500rpm(ネット値)、最大トルク41.0kg-m/3000rpmとややパワーダウンして登場しますが、これは280馬力規制の影響ですね。
このハイパワーを支えるシャシーには、トルクスプリット機能付4WD、車速感応式4WS、4W-ABSが搭載されて、「走る・曲がる・止まる」を支えていました。いずれも4輪というのがポイントですね。
3ローターと同時に、2LのDOHCターボと小型直噴ディーゼルも出品されていますが、こちらは市販化されることはありませんでした。
ここからは、市販車の最新技術の紹介となります。
ショーの直前に登場した「ファミリア フルタイム4WD」とニュー「サバンナRX-7」が、当時のマツダの目玉商品かつ技術アドバルーンでした。
前車はクラス初の1600DOHCターボと日本初のフルタイム4WD、後者は13Bロータリーターボとマルチリンク式リヤサスペンションを特徴とします。
それらが訴えるメッセージは「思いのままに走ることの楽しさを伝えたい」。今に繋がる「走る歓び」の象徴でもあったのです。
左頁では、各分野における技術研究が紹介されています。
右頁は、モータースポーツへの挑戦の紹介です。
「ル・マン」「IMSA」「ラリー」という3つのフィールドが挙げられています。
ル・マンへの挑戦はこの後も続けられ、1991年には日本車初の総合優勝という大きな栄冠を勝ち取ることとなります。
ラリーでは、2WDながら活躍するRX-7が紹介されていますが、この後ファミリアが活躍することで、国内ラリーも4WD時代に突入していくことになります。
当時のマツダ車のフルラインナップです。
この6年前の第23回(リンクは
こちら)と比較すると、各モデルの進化が著しいことがお解りいただけると思います。
第23回の時点は、オイルショックによる瀕死の状態から何とか回復し始めた時期であり、そこから初代FFファミリアの大ヒットを経て、ここまで成長したという見方が一番相応しい気がします。
この代のファミリアは初代ほどの大ヒットとはなりませんでしたが、フルタイム4WDに続いてカブリオレも発売するぐらい、意欲に溢れていました。
ボンゴは、途中の大幅改良を経つつも今でも販売するモデルです。当時からと思えば、その長寿ぶりに感心しますね。
半ばおまけで、裏表紙も掲載。
当時のマツダコーナーと、会社概要が写真と共に掲載されていました。
以上、いかがだったでしょうか。
この当時のマツダは、実直で走りが良くてというメーカーでした。そんな社風が製品に一番素直に表現されていた頃ですね。この後に続く、ルーチェ・カペラぐらいまではそんな製品が続いていましたが、その後は別の方向に一大挙兵をして打って出ることになります。その結果は・・・と言う話は日本自動車史に残る話となりますので、ここでは語りません。
そんなマツダが、30年の時を超えて今再び、ロータリーを搭載したスポーツカーを象徴にして「「走る歓び」の未来を切り拓く」をテーマとする。私的には、やはりここに返ってきたんだなあと感慨深く見てしまうのです。