
もしも・・・で始まる好きなセダンの話が続いてきました。
もちろん他にも好きなセダンは多いのですが、そろそろカタログ話に戻そうかと思います。
今回は、1993年のカローラ(セダン・ワゴン)のオプションカタログです。
カローラは、今年の暮れでちょうど登場から50周年を迎えることとなります。多くの車名が登場しては消費されていった中で、長い歴史を有しつつ現在に残る数少ないクルマとなりました。
今回取り上げる100系は、1991年の登場。
今から25年前ですから、カローラのここまでの歴史の中のちょうど中間点となります。クルマとしても100系は一つの到達点だった気がする・・・という話は後述することにして、カタログを紹介していくことにします。
発行は、マイナーチェンジ時点となる、1993年(平成5年)5月の発行です。
最初は、オーディオが掲載されています。
この時代、それまでのラジオ・カセットに加えて、CDが新たなソースとして主流になっていました。
また、それまで標準装備だったラジオが、レス仕様として選択可能になったのもこの時代です。お好きなオーディオ(ナビ)をどうぞという今の主流は、この時代に始まっているわけです。
そんな反映もあって一気に機種が増えています。特にカローラは、この前後世代を含めて、オーディオスペースが豊富(100系ではインパネ中央部に1DINとセンターコンソールに2DIN)だったという事情もあります。
半ば余談ですが、各形式の”-”前のアルファベットは、製造メーカーの識別でありまして、N=ナショナル(現パナソニック)、T=富士通テン、P=パイオニアを表しています。
同時期の市販品では各メーカーの独自デザインを競う一方で、純正品ではかなり似通ったデザインを納入していたわけです。おそらくトヨタからの要望によるものだと思われますが。
左頁は、オーディオの続きです。
デッキの意匠や端子数・配置は統一されていたものの、CDチェンジャーとコントローラー間のプロトコルは、各メーカー独自のままとされていました。そのため、CDチェンジャーは各メーカーが納入していた形です。
当然、組合せには制約があるのですが、これだけの機種があると、誤発注もあったのではないかと心配したりしますね。
右頁は、空調&通信です。
エアピュリは、この代から上級モデル同様のビルトインタイプとなりまして、ついにカローラもかと感慨を覚えたものです。
自動車電話やファクシミリは、他車との共通品で、当時ならではの設定ですね。営業車用途としても使われたクルマですから、意外と装着率は高かったのかもしれません。
続いてはインテリアとなります。
オーディオスペースに余裕のあったクルマらしく、その空きスペースを埋められる小物入れが複数設定されています。センター部分のコンソールボックスやインパネトレイ等、小物入れは他にもいくつか設定あり。この辺りは小物入れを必要とするファミリーカーらしいと言えるかもしれません。
各照明類や静電防止プレート等は、上級モデルの機能に近づけさせようという設定ですね。標準装備にするとスタート価格が跳ね上がるため、お好みでどうぞというわけです。
左頁は、インテリアの続きです。
ドアオープニングブライトは、LEDあっての用品ですね。ドアカーテシランプの設定がないカローラでは、それを補う意味合いもありました。
ハイマウントストップは、装着義務が課せられる前のため、LEDタイプを用品として設定。この翌年の部分改良で、バルブタイプが標準装備となります。見栄えでは、こちらの方が良かったと思うのですけれどね。
各サンシェードはガラスの高機能化前ならでは。ワイヤレスドアロックと共に、今では標準装備に含まれていますね。こうした用品で需要があったからこそ、標準に含まれるようになったと言えます。
右頁からは、エクステリアとなります。
コーナーセンサーの設定はあるものの、コーナー部分の把握には照明タイプが併存。先代比ではやや悪化したものの、何とかコーナーが見切れるボディデザインだったことが大きいですね。
左頁は、ラック類やタイヤチェーン等です。
販売の主流はセダン、しかも一部グレードを除けばトランクスルーもありませんでしたから、大物を積むにはラック類に頼らざるを得ませんでした。
タイヤチェーンは、今よりも種類が豊富。これはスタッドレスの性能が発展途上だった影響もあるのでしょう。こうして見てくると、あまり古くないようでいて、確実に時代背景の反映はありますね。
右頁は、用品設定の王道(?)、フロアマットとシートカバーです。
緞通やらロイヤルやら、お値段ビックリ級もあった、同時期のクラウン系とかマークII系と比較すると、慎ましい(堅実な)設定ですね。
左頁は、この頃から販売比率の上がり始めたワゴン専用用品の紹介です。
RVブームの反映ということで、やや派手目のストライプが設定されていました。この後、特に90年代後半と比べると、まだまだ大人しいのも事実ですけれどね。
右頁からは、品番と設定の一覧となります。
品番は、20年以上前のもので残っていないでしょうから、迷いつつも掲載してしまうことにします。グレード別の設定等、細に入り組んでいるのを感じていただければと思います。きっと裏には、細かい検証が存在していたのでしょうね。
最後は、アクセサリーの類となります。
といったところで、いかがだったでしょうか。
初めて見る方には当時流の設定を、そうでない方は当時を思い返して懐かしさを、感じていただければ幸いです。
カタログを掲載するだけというのも何ですので、いつものように私的付則を少し。
カローラは、登場と共にマイカー時代の幕を開けて以来、時代と共に成長を続けてきました。カローラの成長よりも時代の成長が早くて、最初は憧れだった存在が、段々とイメージが低下して見られるようになったのが、80年代です。
80系の途中から主査となった斎藤明彦氏は、その点を危惧されていて、FRからFFへの移行期における車型の整理という一大事業を遂げられる一方で、新しい車格の創造ということを強く意識されていました。
「今までの悪いイメージを払拭したい。それは即できることではないから、2代ぐらいをかけてやりたい。」というのは、当時の自動車雑誌のインタビュー記事によく見受けられました。上級指向を強めた90系や100系というのは、氏のそんな思いを反映したモデルだったわけです。
100系は、上級グレードに魅力が集中した設定が裏目に出て、登場と前後した景気後退の波が直撃します。90系の末期の最多量販は、SE系ではなく、XE系だったのですが、100系は当初、SE系にこそ力が入っていたものの、中間にこれというグレードを持たずというのは、意外と販売には効いていたと思います。(この状況に対して、LX-LIMITEDを早期に追加したのは、さすがですが)
中間グレードを補完する一方で、カローラ自体は結局ベーシックな方向に回帰していくこととなります。そのことは、成長を続けたカローラの大きな転換点でもありました。このマイナーチェンジは、その第一歩だったのです。
100系自体は、内外装の意匠だけに留まらず、実質の部分も極めて上等だったのですが、トヨタとしてはやり過ぎという認識もあったのでしょう。そのやり過ぎな性能は、今でも国外で存在感を発揮していたりするのですけれどね。
今になってみると、90・100系路線を続けて、ニュースタンダードを構築するという方向性もあったように思うのですが、それまで売れ続けたことで、既存ユーザーの声が無視できないほど膨らんでいたことが、その選択を許さなかったのだろうと想像します。当時は、ベストセラーカーを続けている最中でもありましたから、クラウンのようにベーシックグレードを切り離すという選択も難しかったでしょうし。
このままだと長くなりますので、最後に100系への思いを少しだけ。
私、100系は歴代の中でも好きな世代、上位にあります。当時の斎藤主査の思いに共感していて、その集大成的存在に映るからです。今後も含めて、国内で売るカローラを、これだけお金と力をかけて作れる機会は、なかなか訪れまいとも思いますね。