
ブログカテゴリが増えてしまったこともあって、「久方ぶり」という言葉が枕詞になりつつあります(笑)
そんな今回の久方ぶりは、トヨタ自動車発行の特別仕様車パーツカタログとにらめっこしながらの特別仕様車編です。
どうにも、このカタログ、モデルの網羅性にしても、追加装備にしても、掲載されている内容が今一つ信憑性に欠けている感がありまして、悪戦苦闘を強いられます。
このため、150カリーナのパーツカタログを確認しつつの照合作業を行っています。それでもなお、今回はカタログが不足していることもあって、今一つ自信はなく。
そんな状態での掲載は、他の情報も疑われてしまうこととなりそうですが、そこは30年近く前ということでご容赦いただくこととします。
前段はこのくらいで、今回は150カリーナの後期編です。
【「40周年記念特別仕様車」SGエクストラ】
●生産時期 198608 - 198612
(ベースグレード)
SGエクストラ
(特別装備)
A1.カラードウレタンバンパー
A2.カラード電動リモコンドアミラー
A3.幅広サイドプロテクションモール
A4.パワーステアリング
A5.EXTRA刺繍入りフロントヘッドレスト
(外装色/内装色)
a1.スーパーホワイトII(040)/ダークベージュ(FD42)
a2.ウォームグレーM(165)/ミディアムグレー(FD12)
a3.ベージュM(4G8)/ダークベージュ(FD42)
この年、トヨタ店は開設40周年記念ということで、カリーナの他にもカリーナED、クラウン、マスターエース等にも同様の40周年記念車がリリースされていました。
ちょうどトヨタが軽自動車を除いた乗用車のシェアで50%獲得を目指した「T50作戦」を発動した時期(1986年
1011月に達成)でありまして、量販車のカリーナはその一環を担う役割がありました。
ベースとなったのは、この年の5月に行われたマイナーチェンジで追加されたばかりの1500SGエクストラ。SGエクストラ自体、ユーザーの好みを反映した最多量販グレードでしたし、そこから僅か3ヶ月での追加ということで、販売への意気込みを感じずにはいられない特別仕様車なのです。
【マイロード】
●生産時期 198612 - 198709
(ベースグレード)
SG(1500・1800・2000ディーゼル)
(特別装備)
B1.カラードウレタンバンパー
B2.カラード電動リモコンドアミラー
B3.幅広サイドプロテクションモール
B4.パワーステアリング
B5.フルホイールキャップ
B6. ブロンズガラス
B7.ハロゲンヘッドランプ
B8.タコメーター&ツイントリップメーター
B9.MY ROADエンブレム
B10.高級ファブリックシート
B11.パワーウィンドー(オプション)
B12.電磁ドアロック(オプション)
(外装色/内装色)
b1.スーパーホワイトII(040)/ダークベージュ(F?42)
b2.ベージュM(4G8)/ダークベージュ(F?42)
b3.レッド(3E6)/ダークベージュ(F?42)
カリーナお馴染みのマイロードは、150前期型にもありましたが、後期型はここで初登場しています。
40周年記念車の後を受けての登場ですが、今回から1800と2000ディーゼルも対象となったこともあってか、ベースグレードはSGエクストラからSGに変更されています。そのため、1500には40周年記念車で設定のあった5速マニュアルと4速ATに加えて、4速マニュアルと3速ATも新たに追加されています。
サイドストライプやシートアンダートレイ等、一部外された装備がありますので、SGベースで正しいのですが、どちらかというとSGエクストラに近いため、追加装備が増えた形となります。
【Newマイロード】
●生産時期 198709 - 198712
(ベースグレード)
SG(1500・1800・2000ディーゼル)
(特別装備)
B1.~ B9.
B10.高級ファブリックシート(マイロードとは別生地)
B11.パワーウィンドー(標準装備)
B12.電磁ドアロック(標準装備)
B13.ウレタンステアリングホイール&ウレタンシフトノブ&ウレタンパーキングレバー
(外装色/内装色)
b1.スーパーホワイトII(040)/ダークベージュ(FP42)
b2.ベージュM(4G8)/ダークベージュ(FP42)
b3.レッド(3E6)/ダークベージュ(FP42)
この年の5月には、クラスの枠を超えたと謳った90カローラ&スプリンターが新登場。一クラス上のカリーナとコロナは、その影響を受けずにはいられないわけで、ちょうどいいタイミングだったのでしょうね。
マイロードとの比較では、パワーウィンドーと電磁ドアロックの標準装備化が大きいですね。1500ccクラスでも、ファミリアのS-XEを皮切りに、サニースーパーサルーン、カローラSEリミテッド/スプリンターSEサルーンと両装備を標準装備にするグレードが増えつつありましたから、その流れに乗ったと言えそうです。
【エアコン付Newマイロード】
●生産時期 198712 - 198804
(ベースグレード)
SG(1500・1800・2000ディーゼル)
(特別装備)
B1.~ B13.
ただし、パワーウィンドー&電磁ロックはアームレスト一体型に変更
B14.エアコン&クールボックス
(外装色/内装色)
b1.スーパーホワイトII(040)/ダークベージュ(FP42)
b2.ベージュM(4G8)/ダークベージュ(FP42)
b3.レッド(3E6)/ダークベージュ(FP42)
兄弟車のコロナが一足先に170型へモデルチェンジしたことを受けて、カリーナはエアコンを特別装備に含めることで、更なるお買い得感を強調します。
このエアコン、販売店装着オプションでしたが、確か別買いよりも、割安だったと記憶しています。
以下、1987年12月発行のカタログを掲載。
後で掲載するベースグレードとの比較が判りやすいのですが、カラード化、フルキャップ、ブロンズガラス等による豪華な印象が売りとなっていました。
ロッドアンテナ等、細かい仕様こそ違いがありましたが、一見最上級のSEエクストラ風の外観がお買い得価格で購入できるという構図です。
ここまでやるなら、エアコンはオートが欲しくなるところですが、ベースグレードには設定がなかったことが影響しているのでしょうね。
150後期では、マイロード以外の特別仕様車として、マイライフが2代目の前期以来、久方ぶりに復活しています。もっとも、これが最後ともなってしまうのですが。
2016/07/17 特別装備の内容に誤りがありましたので、修正を行いました。
【マイライフ】
●生産時期 198709 - 198712
(ベースグレード)
DX(1500)
(特別装備)
C1.ドアミラー(手動式)
C2.ドアサッシュブラックアウト
C3.サイドプロテクションモール
C4.フルホイールキャップ
C5. リヤ大型バンパー(PP)
C6.MY LIFEエンブレム
C7.クリアランスランプモニター
C8.パワーステアリング
C9.タコメーター
C10.トランクオープナー
C11.2スピーカー(ベースグレードは1スピーカー)
C12.フタ付リヤコンソールボックス
C13.パワーウィンドー
C14.SG用のシート&ドアトリム
(外装色/内装色)
c1.スーパーホワイトII(040)/ミディアムグレー(FA12)
c2.ウォームグレーM(165)/ミディアムグレー(FA12)
ベースが下から2番目のDXということもあって、SGに近づけようとするだけで、これだけの追加装備となってしまいます。SGで良かった気もするのですが、価格訴求力のあるグレードが必要とされていたのかなと思わせる特別仕様車です。マイロードが豪華になったことから、その隙間を狙ったのかもしれません。
【エアコン付マイライフ】
●生産時期 198712 - 198804
(ベースグレード)
DX(1500)
(特別装備)
C1.~ C4.
ただし、サイドプロテクションモールは幅広タイプにアップグレード
C6.~
C12.
C14.SG用のシート&ドアトリム
C15.カラードウレタンバンパー
C16.ラゲッジトリム
C17.エアコン
(外装色/内装色)
c1.スーパーホワイトII(040)/ミディアムグレー(FA12)
c2.ウォームグレーM(165)/ミディアムグレー(FA12)
同じく1987年12月のカタログ画像です。
Newマイロードと比べても、マイライフへの追加は多くされています。
ここまでやると、一つ上のSGとは逆転となる仕様も散見されます。
しかも、元はDXですから、価格競争力はかなりのもの。競争相手はむしろ、一クラス下を想定していたと思われます。
カラードウレタンバンパーとフルキャップで見た目を整えつつも、ロッカーパネルはモールレスのボディ同色というあたりで、鋭い人にはベースを見抜かれそうな気はします。
また、この装いは、当時の中古車特別仕様っぽくもあり(笑)

左頁には、1500の標準グレードが掲載されています。
先述のとおり、特別仕様車とこれらで比較すると、外観の見栄え向上が実感できると思います。何せ、ビジネスグレード然としたDX(これはこれでファンがいそうですが)がマイライフに化けているのです(笑)
右頁は、メカニズムや主要装備一覧です。
既にカムリやカローラ等では、ハイメカツインカムが売りとなっていた時期ですが、一世代古いカリーナは、SOHCのままとされていました。
主要装備一覧で、ベースグレードとの軽い対比は可能です。実は掲載されていない仕様差があるのが、深みに嵌りたくなる理由でもあります(笑)
裏表紙には、諸元表と内外装色の設定一覧が掲載されています。
1800のATやディーゼルだと、車重1トンを超えてしまいますが、それ以外は1トン以下。1500は、自動車税がワンランク下がることもあって、維持費の面でもお買い得でした。
それをユーザー側が見抜いていたからこそ、1500を中心にして売れたのですけれどね。
当時の埼玉地区の価格表です。
全国統一価格が導入されるまで、埼玉は東京よりも5,000円程度高かったと記憶しています。
参考までに、ベースグレードの東京地区の価格を掲載すると、
・1500DX(4MT):1,050,000円
・1500SG(4MT):1,113,000円
・1800SG(5MT):1,261,000円
・2000D SG(5MT):1,366,000円
となります。
ベースグレードではオプションとなる、エアコン代184,000円とパワーステ代46,000円でしたから、追加装備を含めて勘案すれば、「まぁ、お買い得」となったわけです。
ちなみにカローラの価格は
・1500TX(4MT):1,006,000円
・1500XE(4MT):1,116,000円
・1500SE(5MT):1,230,000円
・1500SEリミテッド(5MT):1,299,000円
・1800D SE(5MT):1,342,000円
でした。
カリーナは、モデルライフ後半特有の大幅値引きも可能でしたから、1500はもちろん1800ですら、価格的にはカローラ/スプリンターと競合可能でした。この時期のトヨタセダンでは、最大の敵は身内にあるというのが、ここでも当てはまるのです。
余談ではありますが、父の知人から「ATで予算は150万円+。適当なクルマは?」と問われた時に、1800マイロードをお勧めしたことがあります。最初はカローラSEリミテッドをお勧めしたのですが、「ゴルフ場へ行くのに、人を乗せるには狭い」となりまして。
このカタログも、その商談の際に貰ったものですね。
実際の価格交渉では、1800マイロードにステレオと付属品を付けて、160万円ぐらいで収まっていたと、おぼろげ乍らに記憶しています。確かにモデル末期でしたが、1800の小型車が1500クラスと同等価格なら、悪い選択ではないと思ったものです。
といったところで、いかがだったでしょうか。
カリーナというと、特に3代目以前は、どうしてもGTのイメージとなってしまいますかね。
ところが、当時の最前線では、GTはあくまでもイメージリーダーであって、実際の最多量販は、2代目だと1600のDXやスーパーDX、3代目でも1500SGだったわけです。
このカリーナFFの設計陣は、当然この辺りを理解されていまして、
・「性格的には、コロナの豪華指向に対して、カリーナはシンプル指向。簡素ですっきりしており、ある意味ではスポーティ」
・「カリーナのユーザーはやはり調べてみますとコロナよりは少し若めです。が若い人ばかりではないわけで、結構お年の方も、ユーザーの方としております。」
・「女性が意外と多いのです。特に小型車として考えますと非常に多いのです。小型車は確か13%くらいだと思うんですけれども、カリーナは18%です。18%というのは大衆車の平均くらいです。」
(以上、月刊自家用車誌の車種別総合研究より、当時、製品企画室の主査だった和田明広氏の発言を引用)
といったあたりを、開発の際の位置づけやユーザー像として、話されています。
コロナとのデザインの違いについては、同じく車種別総合研究より、当時、デザイン室主担当員だった梅田晴郎氏の解説を引用してみます。
・「カリーナは国内だけしか売らないですが、コロナは世界の各国に輸出しているわけですね。そういう点でコロナは、どちらかというとまろやかな、今の欧州車のような形で作り、それに対してカリーナは、「日本人の感性というのは、もう少し違ったところにもあるんじゃないか」というところを狙ってみました。
・「それから広いユーザー層をもっているけれど、コロナよりはむしろ若い人にもっと売れるかもしれない、ということがありまして、軽やかに見せる、そういう意味でのおしとやかさ、健康さを持ったスポーティですね。」
FR時代は、カリーナ、コロナ共に輸出をされていたのですが、FF化にあたって、カリーナは国内専売セダンとされています。カリーナを日本人の感性に沿って作れるし、両車のイメージ構成もしやすいしというこの戦略、和田氏が整理をされたようですが、なかなか巧みなものでしたね。(そんな経緯を知る身としては、末裔にあたるアリオンとプレミオが、先日のマイナーチェンジであそこまで近付けられたのには、感慨深いものがあります。)
スポーティの解釈は、いろいろあると思うのですが、シンプル指向のユーザーに向けて、最適と思えるものとして、FFカリーナを作ったというところだと思います。スポーティ志向の強いカリーナと言えども、ファミリーカーの大勢がFFに移行する中では、決して無視ができる情勢にはありませんでしたし。
その分、GT特に2000級との相性は、決して良くはなくて、当時流行したホワイトのエアロパーツを纏うことも可能だった2000GT-Rも登場の翌年に追加されていますが、結局これが、カリーナの最後の2000GTとなってしまいました。
GTが持っていた上級指向の部分は、GT-Rと同時に登場したカリーナEDの方が受け持つことになったという点も大きいところではありますが。
この時の路線変更は、FF化以降のカリーナの性格付けを決定付けて、現在のアリオンに至ったことを思えば、決して間違いではなかったと思います。まぁ、それは突出した特徴の類ではありませんので、FR時代の旧車人気をFF化以降は受け継いでいない辺りも含めて、賛否は分かれるのかもしれませんね。
話を今回の特別仕様車に戻すと、そんなシンプル指向のユーザーに向けて、当時のちょっと豪華と思わせる装備を厳選して、お買い得価格で提供したグレードとなります。
非常に勘所は掴めていて、後期は殆どがこのグレードじゃないかと思えるくらい、売れましたね。今でも強い印象ではないものの、こうして掲載してみると、当時(近しい方も含めて)乗っていたなんて方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。
・・・といったところで、今回のちょっと長い話を閉めることとします。