
33年前の中古車市況話、今回はカローラのライバル車だったサニーです。
サニーは、ちょうど半世紀前にカローラに先んじて登場しましたが、約半年遅れたカローラの登場以降、長年に渡って激しい争いを繰り広げる運命となりました。この争いは、カローラ優勢のままで続きましたが、40年を前にした時点で、日産がサニーを廃止することとなり、終結に至っています。
サニーが長年続けた、日産の小型3ボックスセダンは、その後ティーダラティオ→ラティオへと引き継がれましたが、そのラティオもついに、国内のラインナップからは落とされることとなったようです。
本題のサニーに話を戻すと、今回紹介する1983年の春先の時点では、この1年半前に初代以来続いたFRから、当時喫緊の課題だったFFにメカニカルコンポーネンツを一新しつつで大転換。FRのままだったカローラに対してのアドバンテージ取得ということで、攻めの体制を整えるのですが、カローラもお買い得感や伝統メカによる信頼を前面に立てて防戦。急成長したファミリアも交えて、新車販売の最前線では乱売に近い状況が、毎月繰り広げられていました。
そんな新車大激戦の余波は、中古車市場にも表れるわけで・・・ということで、関東の概況からです。
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○市場にあるのは、56年10月にデビューした現行モデルのB11系、52年11月登場の310系、それに48年5月登場の210系と3代にわたっている。メインは310型の54~55年式であり、210系はだんだん数が少なくなっている。310型は、55年11月にエンジンを排気量アップし、従来の1200、1400から1300、1500としている。
○価格はメインのセダンSGLでみると、57年:93.5万円、56年後期:89万円、同前期:74万円、55年後期:68.5万円、同前期:65.5万円、54年後期:58.5万円、同前期:55.5万円、53年:49万円となっており、最も動きがよいのは53年から55年にかけての格安車である。ライバルのカローラにくらべると5万円以上の安値をつけている。
○ライバルカローラも5月中旬に一新し、現行車が値落ちするから、それに対応しサニーも一段と格安になる方向にある。
○とくに売れ行きがよいのはオートマチックのエアコン付車で、しかもボディカラーがホワイト。シルバーになると多少鈍くなる。
○クーペは、5速のレッド1400ないし1500SGXだとやや動きがよくなるものの、総じてあまり目立たない。
○54年1月にデビューしたワゴンのカリフォルニアもめっきり数が多くなり、値もこなれている。メインのSGLで、57年:97.5万円、56年後 期:91.5万円、同前期:81万円、55年後期:75万円、同前期:72万円、54年後期:65万円、同前期:63万円となっており、セダンより4~5 万円の高値。
○こちらは、ボディカラーがイエローなどカラフルなものが好まれる傾向にある。20代のヤングがレジャー用として愛用するケースが多いためと思われる。54年初期ものの格安車の動きがとくによい。
○310型は、54年10月のマイナーでヘッドランプを丸目から角目にしている。ここで興味深いのは角目より丸目の方が人気が高いこと。一般的には丸目より角目のほうが動きがよいのだが、サニーに関してだけは逆になっている。理由は、1:丸目のほうが価格が3万円ほど安い。2:ボディスタイルにマッチしていると受け止められている、のふたつがあるらしい。セダン、カリフォルニア・クーペを問わず同じような状況になっている。
○エンジンは、1200~1300より1400~1500のほうがタマ数も多いし人気高。価格は5万円ほど1400~1500のほうが高いわけだが、それでも大排気量のほうが動きがよく、小排気量はパッとしない。
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ここでは、中古車市場のメインだった310型について、主に書かれています。
FR時代は、70カローラが登場以降、サニーは押されてしまったわけで、そんな状況は中古車になっても続いていたと言えそうです。特に、ハードトップとクーペがセダンとは別の人気のあったカローラに対して、サニークーペは、セダンの陰に隠れた感が強くて、尚更ですね。唯一、カローラには存在しなかった5ドアワゴン(カローラは、バンとボディを共用するビジネスワゴンのみ57年から存在)のカリフォルニアは、ヤング層を中心に独自の人気を獲得していました。
このクラスのレジャー用途を主としたワゴンは、カリフォルニアかシビックカントリーのどちらかでしたね。
また、本文に触れられている通り、角目より丸目の方が人気があったというのは、興味深い事象です。これまで紹介したスカイライン・セリカ共に角目の方が人気でしたし、それは他車でも同様だったのです。
先に310型を紹介しましたが、登場から1年半を経過していたB11型も、市場に流通し始めていたようです。初回車検を迎える前にも関わらず、やや早めの流通は、先に書いた新車戦線の余波が影響していたようです。
以下、引用してみます。
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○現行モデルの11系はぽつぽつ出回っている。こちらだと絶対数は少ないものの、ディーラーだけでなく大手専業店でも見られる。
○今年に入ってから100万円を切る表示価格も目立つようになった。それでも85~95万円と割高なためか、動きは今一つ。「3年車検実施の7月以降だとタマも多くなり値もこなれてくるだろう」と販売店では見ている。
○現行11型で目立つのは新古車が多いこと。サニー系の中古車センターやニッサンユーズドカーセンターに出向くとどっさり置いてある。販売競争が激しく、台数かせぎのためにディーラー登録がひんぱんに行われるためだ。この3月は年度末、決算期の需要期とあってとくに大量に発生したようだ。走行距離が100 キロ以下と短く、登録月日も3ヵ月以内とピッカピカだからすぐわかる。
○こちらを選ぶ場合は、綿密な計算が必要だ。諸経費を含めてはじき出し、25万円以上新古車のほうが割安だったら、こちらを選んでもさしつかえない。20万円くらいだったら、新車を値引いて買ったほうがベターだ。なぜならサニーだと、現在20万円以上は確実に値引き販売しているからだ。
○今後の見通しとしては、月を追って現行11型のタマ数が多くなるはずであり、年末までには310型にかわって主役の座につくものと思われる。値もこなれ、4ドアSGLで80万円を切るケースも生じてくるだろう。10月がマイナーチェンジの時期であり、とくに、これを境にグッと値がこなれるはずである。したがって、程度のよい格安モデルが続出することは間違いあるまい。
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前々回に紹介したファミリアも、新古車が多いと評されるクルマでしたが、このサニーも新古車が大量に発生していました。発生理由としては、ファミリアとは異なっていたようです。
サニーは、この後も新車の大幅値引きと新古車の大量発生が続いて、好調だった新車販売台数をさらに押し上げることとなるのですが、その一方で中古車価格にその影響が及ぶこととなります。
FR時代は、シンプルだったエンジンバリエーションも、FF化以降、ターボ・ディーゼルとそのバリエーションを広げます。追加早々ながら、ルプリに関しては少し言及されています。
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○ルプリは月販1,000~1,500台と少なく、ターボ比率はわずか5~7%にとどまっている。したがってホンモノの中古車が出現するにはあと1年はかかりそうだ。
○人気車であれば専業店が客寄せのために新車を購入して展示するから目立つだろうが、ルプリはそうはいかないらしい。サニーにはターボが似合わないためなのか。
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ファミリーイメージが強かったサニーのイメージ一新を担っていたかに思わせるルプリの装いですが、逆にそのことが足枷となってしまったことを窺わせる内容となっています。
低回転からターボを利かせるという、コンセプトはよかったと思うので、当時流行し始めていたパワステ・ATと組み合わせても余裕的なアピールで展開していれば、また違った結果だったかもしれません。(実際には、最終までパワステの選択は不可)
バリエーションが広がったという点では、この代になって初めて追加されたもう一つとして、兄弟車ローレルスピリットがあります。初代はサニーとの共用部品が大半だったことから、新車ではあまり目立たなかったのですが、中古車では若干状況が異なっていたようです。
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○年式が新しいことと新車の月販台数が2,000~3,000台と少ないために、中古車展示場にはめったに見られない。日産モーター系の中古車展示場でごくまれに1~2台くらい見られる程度。
○専業店では時々新古車が見受けられる。この新古車は台数かせぎのディーラー登録車ではない。専業店が物珍しさから客寄せのために購入した例が多い。
○サニーと違ってタマ数が少ないことによる物珍しさと、高級車仕立てが好評なのか動きはまずまずといったところ。多少時間がかかるが確実に売れている。
○価格は57年の初期モノのXJあたりで102万円、オートマチックだと105万円以上とサニーSGLよりは5万円強も高い。ボディカラーはホワイト、レッドが人気高。大半がエアコン付、AT車は引っ張りダコだ。
○当分の間、品薄状態が続きそうで、価格も高値維持に変化はないと思われる。年初に登場したターボ車はほとんど市場には出回っていない。
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同じ新古車でも、こちらの発生理由はファミリアに近いというのが面白いところです。
小さな高級車というキャラクターは、いい線を突いていたのですが、初代だとサニーとの差別化はまだまだ不足。その反省は2代目に反映されることになります。
最後に関西の概況です。
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○サニーを選ぶ場合、専業店の展示場では極めて少ない。大衆車に力を入れている大手展示場でも、せいぜい2~3台まで。専業店の展示在庫数では、カローラの約半数くらいである。サニーを選ぶならディーラー系の展示場を中心に、じっくり見て回るのがよい。
○展示車の年式は幅広いが、今春になって高年式が急増してきた。ディーラー系展示場では、2年落ちの56年式が半分以上も占めていた。56年といえば、現行FFへのモデルチェンジの年。旧型のほうが多いが、2~3割が新型である。FFの56年後期型については、今後増えてくるだろうが、まだ少数派。
○価格は、1500GL・4ドアセダンで72~73万円程度(エアコン付)である。諸経費込みで80万円が一応の目安だ。「新車なら値引き価格を考えても、100万は越す。新車を買うユーザーが10万でも安いほうがいいということで、57年式の中古車を選ぶ場合が多い」。まだ新型が出回りだしたばかりなので、値ごなれするには至っていない。
○一方、56年前期の旧型ならグッと買いやすくなる。1500GLで62~63万円くらいだから、約10万円安。55年式なら55~56万円。54年式は 45~46万円。53年で40万円が一応の目安。つまり、53年式でやっと諸経費込み50万円が狙えるわけだ。むろんこれはGLクラスでの話だが。「春は諸経費込み50万円までの希望者が多かったが、それに合うクルマが少なくて・・・」と低年式のタマは決して多くはない。しかし探そうと思えば、53年式でもギリギリ狙えるのだ。SGLになると、さらに5~6万円から10万円以上高くなるので、ちょっとしんどい。
○今、サニーの主流は55~56年式。50万円から60万円台である。SGLも入れると70万円台まで。GLが最も多く、SGL、SGXと続く。いうまでもなくセダンが中心、80%を占める。残りがクーペ。ユーザーの志向もセダンに片寄っている。ファミリーユースとしてサニーくらいが手頃という人も多いのである。だから色の好みも、他車ほどうるさくはない。「まあ白が一番だが、シルバーメタも地味ながら動きは悪くない。ベージュ人気が少しダウン傾向かな」という程度。新型で人気は赤だが、旧型ではあの鮮やかな色はない。
○一方、専業店では少ないサニーだが「売れ筋はセダンでオートマ。この両方の条件がそろっていれば・・・」という。オートマ車は5万円高。スタイルからいって、ファミリアやカローラIIのユーザー層とは異なる。どうしても堅実なファミリー層になる。だから別の見方をすれば「値段しだい」という面も少なくない。それに「サニーでなければ、という人はまずいない」。このあたりがサニーの弱点でもあり、中古車不人気の理由でもある。決してクルマの質ではない。エンジンはタフだし、故障は少ない。これは既知の事実だが、現実は甘くない。
○クーペの価格はセダン並みか、やや安目。クーペタイプながら、程度がいいのが目についた。シャープな走りを期待するヤング層にはおすすめだ。ただし、前述のとおり、タマ数は少ない。
○エアコン付きでも決して高くはない。夏ならばエアコンが必要だが、ほぼすべてに装着されている。エアコンがない場合でも、ディーラー展示場では「新エアコン装着」の価格が表示されている手回しの良さ(?)。「14万円のエアコンを10万円で付けている」という。
○カリフォルニア、これも少ない。冬場、少し出回ってきたかな?という気がしたのだが、春になって消えてしまった。今回、展示場まわりをして、新型のカリフォルニアが1台あっただけ。旧型で黄色のウッドパネルは見かけなかった。「タマ数が少ないから、あれは買っておいて面白いクルマだ」と事情通はいう。一部には根強い人気が続いているようだ。サニー大阪の展示場でも「春先に3台あったが、あっという間に売れた」という。値段は今なら、セダンより少し高め程度だ。
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当時も今も、コミ50万円というのが、一つの山の感はありますね。
基本1車検、アタリなら2車検で次のクルマに取り替えるぐらいの感覚でしょうか。
こうしたクルマで、クルマ生活をスタートさせた方も多かったと思います。
また、エアコンに関する記述が当時らしいかなと。新車当時は贅沢品に類されていたエアコンも、この時期には必須装備になっていたということなのです。もっとも、新車でも標準装備になるのには、ここからもう5年以上の年月を要するのですが。
といったところで、いかがだったでしょうか。
この当時のサニーは、走りの良いクルマとして長きにわたって人気を博した2代目GXも、いよいよレギュレーションの関係で引退の時期が近づき、ファミリーカーとしての色合いが強くなっていました。
310型が、小型FRとして見出されるのは、もう少し先で、これぐらいの時期では2代目GX比では大きく重いぐらいの見方が強かったように記憶しています。
そんなファミリーイメージをさらに強めたのが、B11型で行われたFF化でした。
サニーの歴史を俯瞰してみると、メカニズムの一大転換はやはりここにあった感が強いですね。
機構的には、B11型が基礎となって、オーソドックスなセダンというキャラクターが決定的になったのは、この次世代となるB12型だと思います。B12型で確立した様式のまま、最後まで車齢を重ねたといったところでしょうか。
今視点で、惜しいなと思うのは、310型の走りの素質を見出されるのに、まだしばらくの時間を要したことでしょうか。これが、もう少し早かったら、サニーのキャラクターはもう少し違った形で形成されたのかもしれません。もっとも、この見出しは、エンドユーザー側から起こったものであって、メーカー自身が気づかなかったという点が、決定的ではありました。
310型のアピールは、「静か」「広々」「燃費がいい」等で、その走りについては、あまり前面に出されることはなかったように思います。
この辺りを上手くアピールしたのがスターレットだなと思う一方で、そのスターレットもFFに転換することからすれば、時代の流れは変わらなかっただろうとも言えますね。
B11型は、基礎として偉大なのですが、製品の出来としては80カローラと同じく習作の感があるかもしれません。私は80カローラに見られる挑戦・主義・主張を高く評価する人ですから、そのカローラと同じような位置付けで大激戦を繰り広げたB11型も同じく好きな人だったりしますけれども。
高く評価される前後世代の谷間的評価かなという点でも、このB11型と80カローラは共通するものがあるかもしれませんね