
これまで、間を挟みつつ計10回に渡って掲載してきました33年前の中古車市況話ですが、いよいよ終わりが近づいてきました。
連載では、前回お送りした通り、ちょうどこの時期にモデルチェンジをしたモデルということでギャラン・シグマ/ラムダが取り上げられていましたので、そのままお送りすることにします。
このシリーズでは初めての三菱車でもありますね。
市況話に入る前に、ギャラン・シグマの簡単な変遷を本文から引用してみます。
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○ギャラン・シグマの誕生は51年5月。初代はガソリン車だけで1600は121A型、
1850が122A型、2000が123A型。直線基調のボクシースタイルの斬新さが受け、空前のヒット作になった。ピークの53年3月には1万台の大台を突破するほどの勢いがあった。
○4年後の55年5月には、2代目にバトンタッチ。エンジンはガソリンが1600の161A型、1800が162A型、そして2000が164A型。同時に2300ディーゼルとそのターボ装着車である167A型を新しく設定。同年11月には、ガソリン2000にターボ車を追加した。
○57年10月にはマイナーチェンジを実施し、1800ターボを加えている。ところが、これら2代目はフルモデルチェンジにもかかわらず、スタイリングを初代とあまり変えずに踏襲したために売れ行きはさっぱり。そのために、わずか3年4か月で3代目にバトンタッチせざるを得なかった。
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ギャラン・シグマについては、過去ブログでも取り上げていますので、合わせての参照としていただければ、幸いです。
初代の回は、
こちら
2代目の回は、
こちら
それでは、市況話に入っていきます。
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○さて、これら初代と2代目が中古車市場に出回っているわけだが、主流は2代目の55年~56年式。初代は、52~53年式が50万円前後の格安人気でよく動いており、低年式と高年式の2極分化が進んでいる。
○タマ数は9月中旬まで少なく、ディーラー(三菱系のクリーンカーセンター)以外ではあまり見かけなかったが、9月末から10月にかけて豊富になってきた。3代目の新型シグマが9月から発売開始され、代替で旧型車が中古車として再販されるようになったからだ。
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初代は排ガス規制に追われるライバル車に先んじる形でのモデルチェンジが成功して、人気車に成長するものの、モデル後半以降はライバル車の追い上げにあう形で、失速してしまっています。
2代目では中身重視のモデルチェンジを掲げて失地回復を図るものの、こちらも初期こそ、やや回復はしたものの、全体を通してみると、あまり成功しなかったというのは引用元のとおりです。
そんな販売状況が、中古車の構成に表れていますね。
2極分化の内、高年式に関する分析は・・・の前に、2代目のカタログからグレード別の頁を再掲しておきます。
画像を挟んで、分析は次のとおりとなっています。
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○主流グレードは中グレードの2000スーパーサルーンないしは最上級のロイヤル。フル装備の割に価格が安く、程度のよいタマが多いためだ。56~57年の高年式車になると1800スーパーサルーンも2000に劣らず人気車となる。格安で手に入るようになるからだ。
○価格推移を2000スーパーサルーンでみると、52年:50万円、53年:66万円、54年:71万円、55年前期:81万円、同後期:90万円、56年前期:100万円、同後期:104万円、57年前期:116万円となっている。1800は2000よりも10万円、1600は15万円くらい安い。したがって1800も動きがよいわけだが、1600になると力不足を気にしてかあまり売れ行きはよくない。1600は、タマ数が極端に少ない。
○ボディカラーは、タマ数ではホワイト、パープルワイン、ダークブルー、シルバー、そしてブラックなどが目につくが、人気の点ではホワイトが他を圧倒している。大都市部ではうすむらさきの”ラベンダー”が静かな人気を呼んでいる。
○ミッションはオートマチックが半数を占めており、人気はこちらがマニュアルをしのいでいる。サンルーフ車も時々みられるがそれほど人気には関係がなく、ユーザーの好みで左右される。ファミリーユースの強いクルマであるから、ノーマルのほうがむしろ好まれるといった傾向があるためだろう。
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モデルチェンジ当初は上級グレードが売れるという全体傾向はギャラン・シグマにも、当てはまっていました。
スーパーサルーンは、初代では最上級グレードでしたが、2代目ではその上位にロイヤルが加えられたことで、セカンドグレードの座に収まることになりました。パワーステ、パワーウィンドーに代表される装備は、当時の水準ではかなり豪華であり、価格もそれなりに高いものでしたが、三菱のオーナーカーとしては最上級ということもあって、販売比率としては高めに推移します。
この好評を受けて1800と1600にも、やや装備が簡略化されて追加設定された形です。追加後は2000に変わって1800の比率が上昇することになります。そんな推移が中古車市況にもそのまま反映していますね。
他社では人気装備となるサンルーフが、あまり人気に影響していないというのは興味深いところです。2代目登場時に比較的広い範囲で、電動式が選択可能とされたのですが、セールスポイントとはなりませんでした。
シグマはライバル車と比較した時に、やや屋根が低く、その影響で特に後席のヘッドクリアランスの難が指摘されていましたので、さらに頭上高が削られことになる、この装備が敬遠されたということはあるかもしれません。
2代目シグマはガソリンターボを追加以降、ターボをイメージリーダーにした宣伝を行っていました。
そんなターボについては、以下のように書かれています。
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○ターボは新車で25~30%の販売比率を占めており、展示場にも、ちらほら見られる。しかし、前述のように55年前期にまずディーゼル、年末に2000ガソリン、そして57年後期に1800ガソリンといったように高年式での参入であるために、絶対的なタマ数は少ない。したがってさがすのに多少苦労しなければならない。
○ただ、あれば格安なことが魅力だ。小型ターボの中では最も安いターボ車といえるだろう。2000GSRターボで55年:115万円、56年前期:125万円、同後期:131万円、57年前期:142万円といったところ。ブルーバード、スカイラインは55年で125~130万円であり、10万円以上も安い。
○2000GTターボなら55年で98万円とすでに2ケタ台になっている。タマ数は少なく滅多にお目にかかれないが。ディーゼルターボだとGTターボよりさらに5万円くらい安く、56年前期でも100万円以下で買える。GTターボ同様、タマ数は極端に少ない。
○人気はそれほど高くなく、むしろノーマルのスーパーサルーンやロイヤルのほうが動きがよい。その分価格が安いといえる。今後は新型車への代替が進み、タマ数が豊富になり、さらに格安になることは間違いあるまい。
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日産勢が先行したターボは他社も追随したことで80年代初期、一大ブームとなります。
この時期、ターボというだけで人気が集まったこともあって、新車販売段階ではターボ車はノンターボよりも値引きが絞られるといった商売が通例となっていました。
そんな中にあっても、ノンターボに近い値引きを出すのが三菱でした。今も続く月刊自家用車誌の値引きレポートでは、そんな状況が毎月のように報告されていたものです。
シグマ自身が、値引きに頼った売り方をされていたという背景もあるのですが。
そんな販売の影響が、中古車価格に表れていたという見方はできそうです。
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○クルマを選ぶ立場から中古シグマを評価するとどうか。次の代替を念頭に置かないなら確実に買得車といえる。ノーマルなら大衆車とさほど変わらない価格で買えるし、装備も抜群によい。スーパーサルーン、ロイヤルクラスならパワステ、パワーウィンドー、エアコン、またカーコンポ付などもある。
○ただ、展示場まわりをして気をつけねばならないことは、専業店でのタマ数は少なく、三菱系のクリーンカーセンターに行かないと多くはお目にかかれない。専業店は動きのよいラムダに集中させて、シグマは敬遠する傾向があるからだ。
○同一ボディの姉妹車であるエテルナはフロントグリル、テールランプのデザインを違えただけでカープラザ店扱い。新車の販売台数が8対2くらいだから、中古車のタマ数もこれに比例する。人気差はまったくない。
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人気度合を反映してか、報告されている価格は、お買い得感が高いものとなっています。
この場合、次の査定にもその影響は出るわけですが、乗りつぶし前提なら、売値は関係なく買値だけを気にすればいいとなるわけです。シグマの上級グレードは、他車比でも装備は充実していましたから、そんな面からも更なるお買い得感があったのです。
先にシグマの値引きが大きかったと書きましたが、その理由の一つにエテルナの存在が挙げられます。何せ、多少デザインが異なるくらいで中身も値段も全く同じ車が、違う系列から併売されているわけですから、値段の競争になるのも当然なのです。
当時の記事では、大抵後発となるカープラザ扱いのエテルナの方が値引きで先行して、元々の会社規模が大きいギャランがそれに対抗するという構図が繰り広げられていたように記憶しています。
シグマの兄弟車と言えばラムダ。
引用元=FavCars
画像は、2代目ラムダのスーパーツーリング。
中古車としてはラムダの方が人気があったようです。
以下、当時の記事より。
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○ラムダはシグマのスペシャルティバージョンとして、初代モデルは51年12月にデビューした。シグマより半年遅れである。2代目はシグマと同時に55年5月に登場、3代目はまだ出ておらず、来年の3月頃になりそうだ。
○シグマとシャシーを共用しており、ボディはハードトップの2ドアであり、シグマの4ドアセダンと差をつけている。ファッショナブルスポーツといった仕立て方をしているから、エンジンも2600ccを加えたり走りを重視した設計。このことはヤングファン、スポーツ派に好まれ、中古車市場での人気はシグマを上回る。
○シグマは専業店だとあまりお目にかかれないのだが、ラムダはターボあたりが最前列にデンと置いてあるケースをよく見かける。
○GSRターボ5速のブラックやレッドは、人気車のひとつにあげられよう。ノーマルは、2000スーパーツーリングの動きがよい。中心年式は55~56年式。
○ターボは全体の70%以上の販売比率と高率であり、シグマと違ってタマ数は豊富。価格は、GSRターボで55年:124万円、56年前期:134万円、同後期:139万円、57年前期:150万円とシグマより10万円くらいの高値だが、売れ足は速い。
○2600スーパーツーリングは54年5月に加わったが、不人気のために56年に生産中止した。展示場では、ほとんどお目にかかれない。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++引用ここまで
ラムダは、初代の登場したのが、コスモ人気が一巡したくらいという絶妙な時点ということもあって、たちまち人気車に駆け上がります。絶対的な台数はシグマよりも少なかったのですが、元々の市場規模はミドルサルーンよりも上級スペシャルティーカーの方が少ないですから、ある種シグマ以上の成功作ともいえる状況だったわけです。このラムダ人気を奪うことに成功するのが、先に紹介した3代目シルビアですね。
2代目でも再逆転はかなわず、さらにスタリオンに需要を奪われる形で失速してしまいます。
結局、ポジションとしては、この翌年に登場する、シグマハードトップが後を継ぐことになるのですが、その際にはラムダ名が使われることはなかったのです。
最後に、専業店の概況です。
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○シグマほど専業店とディーラーで扱いの違うクルマは少ないといってよいだろう。都内や周辺地区の専業店の展示場を一回りして気がつくのは、タマ数が極端に少ないこと。とくに多数の展示場がならんでいる大都市部の中古車街にこの傾向が強い。
○販売担当者にその理由を聞くと「置いても売れるまで時間がかかり、もうけが少なくなってしまう」からだという。姉妹車のスポーティカーであるラムダはよく見かけるがシグマはさっぱり。
○新車の販売台数はシグマがラムダを圧倒しているのだが、中古車になると逆転してしまう。三菱ディーラーでは「シグマは一度購入すると何年も乗って手放さない。ラムダは割とあきっぽいユーザーが多くすぐ代替えしたりするから、中古車のタマ数が多く見えるのではないか」と分析する。
○しかし、実際は人気度合による差といった方が当たっているだろう。専業店は人気車を先行させたタマ揃えをする傾向があるから、人気のないシグマが少なめになると考えてよい。
○ただ、同じ専業店でも低価格で程度のよいタマを展示するところもあるので、こちらに出向けばかえって買得車を発見できるケースもあるから要注意だ。また、大都市部ではラムダ志向だが、地方に行くとシグマ人気が高くなるから状況は変わってくる。
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これまでは、ディーラー・専業店共に大きな違いはないクルマが多かったのですが
シグマでは大きな違いが表れていたようです。
大都市部と地方による人気車の違いは、今でも見かける事象ですが、使用環境や用途の違いが反映されているようで、興味深い事象ではあります。
といったところで、いかがだったでしょうか。
クルマ自体の考察は、既にやった回の重複となりますので、ここでは深く触れないこととします。
確実に言えるのは、このクルマもシビック同様、初代のイメージが強くて、大きな変更を受けなかった(変えられなかった)2代目はイメージが薄い結果となってしまったということですね。
今では見かける機会が極端に少ないという状況も同じです。メーカーの力の入り方としては、とくにこちらは、かなりのものがあったように思うのですけれども。
やはり、メーカーとして意ある状態というのは、動機・経緯・結果はその何れもがどうであれ、あの時代はよかったと振り返れる気がするのです。
以上、10回に渡るシリーズをお届けしてきました。
もう一回だけ、おまけ的な回がありますので、それをお届けしてまとめとしたいと思います。