
古の話が続いたこともありますので、今回は現行車の話をすることにします。
タイトルでお気付きの方もいらっしゃると思いますが、日産ギャラリー関連です。
元々は、年を跨いでのロングラン企画となっている
「日産・プリンス合併50年」特別展示をそろそろ見たいなというのが訪れた動機でありました。
この企画、2~3週間で展示車が入れ替わるという意外と忙しない内容でありまして、実はここまでは見逃してきてしまいました。観光で横浜に行くことは多いものの、奥様同伴だと都度ここを訪れるわけにもいかないというのも、その理由の一つではあります。
今回は何とか時間が出来たこともあっての単独行。
展示されていたのは、以下の2台でありました。
グロリアスーパー6(1964年第2回日本GP仕様)
T(ツーリングカー)部門、軽自動車から排気量別に分かれた最大クラスに出場していたのが、このグロリアでした。
ロールバーこそ入っているものの、シートやステアリングはノーマルのままの仕立て。詳細と真偽は不明ですが、フロアシフトはレースに合わせた改造と見受けました。
日本でレースが生まれた初期ということで、国産車全てが出場していた時代。まだまだ未熟な高速性能を一気に向上させる役割を担ったのです。
スカイラインGT(1964年第2回日本GP仕様)
GT部門に出場するために作られたのが、このスカイライン。それは伝説の始まりも意味していました。その伝説に関しては、日本のクルマの歴史に残る有名な話ですから、あえてここで記載することもないでしょう。
こちらもおそらくフロアシフトは急造のようで、シフトパターンは一般的なものとは逆に助手席側に高速ギヤがくる仕様となっていました。
全メーカーが参加する形で量販車でのレースを行うというのは、この時代が唯一でありまして、それもまた貴重な時代であったことを想像させます。
日産と統合する前のプリンス時代という枠を超えて、思いを馳せさせられる2台ですね。
2台の背後に写り込んでいる展示ボードも一部を撮影してきましたので、やや大きめで掲載してみます。
先に書いたとおり、来年1月末まで続くロングラン企画であり、展示車もいろいろ変わるようですので、興味のある方はでかけてみてくださいませ。
ここまでだと冒頭の書き方に偽りありとなりますので、話はこれだけに留まりません。
上を見た後、新型セレナの展示車を見ていたら、「体験試乗会をやっていますので、お時間があるようでしたら、いかがですか?」と声をかけられまして。
クルマなら何でも運転してみたい人ですから、お誘いに乗らない理由は存在しません(笑)。ということで早速、お借りするべくカウンターへ同行。
コースは短時間と長時間の2つの設定があり、お勧めは長時間とのこと。どうせ体験するならで、お勧めの長時間を選択。みなとみらいICから高速に上がり、石川町・本牧の両JCTを経由して磯子で折り返す往復になるとのこと。
本牧から先の湾岸線は、片側3車線の道路が整備されている割に交通量が少ないですから、試乗には最適でいいコース選定だと思います。
試乗車自体は撮影し損ねたので、同型の展示車を撮影。
仕様としては、(マルーンレッドxダイヤモンドブラック)のハイウェイスターGにセーフティパックBと9インチナビを備えたものが複数台用意されていました。
今回のモデルチェンジの目玉かつ大きな話題となった「プロパイロット」は、本牧JCTを過ぎてからお試しください、とのことで、先ずはそれ以外の印象から。
このサイズのミニバンは、主にノア・ヴォクシー系を複数回乗ったことがありますので(興味のある方は、過去ブログにいくつかあるのでご参照くださいませ)、そちらを思い返しつつで書いていきます。
先ず運転席のポジションを調整して、気になったのは座面の短さ。身長の低い方の声の反映だと推測しますが、長時間運転する時の疲れの元となりますし、運転姿勢を崩す要因ともなりますので、こういう仕様にするなら、座面を可変長にするべきと考えます。
同時に、今回は特に必要と思いませんでしたが、座面前端部の高さも調整可能とするのが、理想形でしょうね。この辺りは、ライバル車共々、セカンドシート・サードシートの機能追加が優先されている感があります。
シート生地は、セダン系には未だ残るモケットではなく、ジャガード織物となっている点に賛同します。
乗り始めてノア・ヴォクシー系に勝ると感じたのは、コーナーウィンドーの切り方の工夫による斜め前方の視界とインパネ最上段に並べたメーター類の見易さ。後者は、後述するプロパイロットの動作確認でモニターを見る頻度が多くなることもありますから、この設定が正解だと思います。
ブレーキは、タッチが柔らかく、かつストロークの大きい設定であり、緊急制動時を想定するとやや不安を感じますが、これもユーザーの声の反映の気はします。試乗の範囲内では制動力に不足は感じなかったので、これで許容すべきなのでしょうね。
”止まる”の話を先にしてしまいましたが、”走る”の方についても少し。
平地ならまぁ充分と感じた動力性能でしたが、本牧JCTの登坂ではトルク不足を感じざるを得ませんでした。車重約1.7tに最大トルク20.4kgf・m、しかもそれが発揮されるのは4400回転まで回した時ですから、そこはスペック通りの性能ということですね。
2人乗車でこの状態ですから、多人数乗車ともなると厳しい場面が出てくるだろうと思われますが、ここもライバル車とは大同小異。昨今の情勢では、動力性能の余裕より燃費値が大事という判断も裏にはありそうです。
もう一つ加えるなら、平地では結構静かだなと思ったものの、中速域からの加速では一転してゴロゴロっといった感じのやや大きめの音が聞こえてきて違和感がありました。おそらくこの音は従来型にもなかったように記憶する音で、要改良点としておきます。
本牧JCTを過ぎると、いよいよ今回の目玉「プロパイロット」のお試しです。
これ、ボタン一つで直ぐセットできるわけではなく、前走車と道路の白線という2つの認識を経る必要があるとのこと。今回は先ず前走車、続いて白線の認識となりました(共にモニターで確認可能)。綺麗に白線が引かれている道路ということで、両方で約10秒といったところでしょうか。
セットの後、後続車が来ていないことを確認して、車線逸脱を模してみます。もちろん、警告音を鳴らすことに成功しました(笑)
プロパイロット作動中は車線のセンターを維持するようにステアリングアシストが入りますし、ターンシグナルの作動で警告はキャンセルされますので、通常はあまり体験できなさそうな機能ではあります。
一旦元の車線に戻りつつ、今度はターンシグナルを上げて中央の車線に移動。
再び車線認識に入りますが、先ほどよりはやや時間を要します。曰く「破線よりも実線の方が認識し易い」ことが理由だそうです。
再セットでクルマにお任せをしつつ、ステアリングアシストの挙動を観察してみます。
メルセデスCクラスのアシストと比較すると、あちらが許容量の範囲を広くとりつつ介入する際には強めに入ってくるのに対して、こちらは軽い微舵が結構連続して入ってくるのが違いと言えます。
湾岸線は横風の結構強いところで、時折進路を乱されますが、ステアリングアシストによって、進路保持のアシストにもなるというのは意外な発見でした。これは大型車に追い越された時に受ける風圧でも同様で、特に長距離ではありがたい機能ではないでしょうか。
現状、特段のアナウンスはされていませんが、効果としてアピールできるものだと思います。
湾岸線を使えば、磯子はあっという間に到着可能。高速を降りてUターン、再び高速を目指します。
ここでライバル車に対するアドバンテージだなと思ったのは、プロパイロットとのセットオプションとなる電動パーキングブレーキ&オートブレーキホールドです。ブレーキを踏んで停止すれば自動的にパーキングブレーキがかかり、アクセルを踏めば自動解除となるこの機能、ライバル車が使用・解除の都度、足踏みを強いられるのと比較すれば、はるかにスマートと言えます。
ただ、残念なのはせっかくこの機能がありながら、パーキングブレーキ作動を確認して、フットブレーキを放してしまうと、アイドリングストップが解除となってしまうこと。今のところオートブレーキホールドとアイドリングストップの両立はさせていないようですが、現車で重宝している機能だけに次なる進化に期待したいところです。
余談半分ですけれど、先々スカイラインが両機能を採用してきた時に、作動ロジックをどうするのか興味がわきました。セレナのロジックとなるのか、はたまたメルセデスのロジックとなるのか、部品を共用する関係からすれば後者の方が可能性は高い気がしますが。
再び高速上の人となりまして、新機能も一通りお試ししたということで、ここからは解説をお聞きすることとなります。
自分で乗った中では全く問題なく機能が作動したのですが、お話からすると、単眼カメラからの情報で制御していることもあって、機能の制限や限界はあるようです。車線を引き直して、元の車線が薄く残っている場合の誤認識、あるいは西日に向かう時や豪雨時の機能停止といった話をお聞きすることができました。
ここはもしかすると見解が分かれるところかもしれませんけれど、個人的にはそういった弱点を踏まえた上で使えばいいと思うのです。使うのはあくまでも人ですから、補完してあげればそれでよしと。
この種の機能には不要論も出てきそうですけれども、”高速を走っていて遅い前走車に追いつく、隣の車線の流れを死角を踏まえながら確認しつつで、加速して車線変更”とか、それなりに緊張を強いられる場面で、この種の機能はありがたいのは事実です。前方への注意の何割かは側方や斜め後方の注意に振り向けられますし。
さらに、人はその時々でムラも出ますし、時には間違いもしますから、通常は自分でやった方が上手かったとしても、それが100%とも言い切れないとも思うのです。
まぁ、前方への注意が、運転とは全く関係のない方向に振り向けられたとしたら、それはちょっと違うんじゃないかと疑念を抱きたくなりますが、そこは宣伝の仕方や使い方の問題でしょうね。
可能性のある発展途上の新技術だと思うだけに、使い方や進化の仕方が誤った方向に進まないことを望んで止みません。
話がやや脱線しましたのでセレナの話に戻します。
お値段をお聞きしたところ、今回の仕様で350万円+αとのことでした。先々代末期の20X特別仕様車が220万円程度だった記憶からすれば、ずいぶんお値段が上がったなという感が強いのですが、試乗車ということで最上級グレードの全部乗せに近い状態というのが、その要因のようです。
その他の機能のご案内ということで、カメラを活用したアラウンドビュー、スマートミラー、パーキングアシスト等の説明を受けましたが、これらはあれば便利とは思うものの、お値段との天秤となると個人的判断は微妙なところがあります。
試乗の復習を意図してアンケート記入後にカタログをもらい、標準装備と注文装備をかなり読み込んだ(これがグレードとセットオプションの組合せが何とも複雑でマニアへの挑戦状的でもあります(笑))印象からすると、あれば便利系の装備がお値段を押し上げる要因と見受けましたので、実際に買う段では相当な精査が必要な気はします。
自分的には、期間限定生産のハイウェイスター プロパイロットエディションにLEDヘッドランプを追加にバリューを見出しましたが、各装備の必要性は各々違ってきますから、また違った結論もあるでしょうね。さらにこのクラスの新型ともなるとリセールバリューも無視できないですから、尚更複雑になるだろうなと。
ちなみにプロパイロットの単体のお値段は、セットオプションの関係もあって見え辛いのですが、約10万円といったところでしょうか。このお値段なら、発表されている装着率7割は納得ですし、ライバル車と比較した時の決定打にもなり得ると思います。
ここは国産車の中でも最激戦地の一つですから、ライバル車も次なる一手を繰り出してくるであろうことが予想できますが。
以上、試乗の機会をいただいたことに感謝しつつの感想文でした。