例年と同じ年度末進行に加えて、想定外の職場異動も加わりまして、しばらくは多忙な日々となりそうです。そんなこんなで、今回も特別仕様車ネタを軽く消化させていただくということにて。
同時期のクレスタにはいくつかの特別仕様車がありましたが、60後期マークIIの特別仕様車となると、これのみだと思います。
〇グランデ・ツインカム24・リミテッド
(ベースグレード)
グランデ ツインカム24
(外装色/内装色)
〇スーパーホワイト(035)/ブラウン
〇ジュエルパールマイカ(037)/ブラウン
〇ディグニティ・トーニング(2R2:4B5+4D2)/ブラウン
(生産時期)
1983年9月 ~ 1984年(?)
(ドアミラーとの組合せはないはずなので、1983年のみの可能性大)
(特別装備)
〇専用フードオーナメント
〇カラードフェンダーミラーステイ
〇高級ベロア調シート
〇AM/FMマルチ電子サーチ式ラジオ
〇高級ドアトリム
〇リヤワイパー(ハードトップのみ)
〇電子制御オートドライブ
〇185/70HR14ミシュランタイヤ
〇カラードアルミホイール


後期では販売の主流となったハードトップとスーパーホワイトの組合せです。
マークII&ハードトップ&スーパーホワイトという、その後長く続く代名詞的組合せはここに端緒があります。次世代以降でも行われるホワイトにベージュ・ブラウン系の色挿しも端緒はここでしょうね。
個人的に、60ハードトップのデザインには、ディテールの各所に初代セダンへのオマージュを感じます。

主役は譲ったものの、まだ比率の高かったセダンと特別色ディグニティ・トーニングの組合せ。
60セダンのツートンカラーは、国内に限れば、これが空前絶後となるのですが、輸出用では82yearモデルから存在していました。このカラーも、84yearモデルとして先に設定されていたものを国内に転用しています。もっとも、センター部は、パーニッシュライトベージュ名で後期時点で追加されているカラーとなります。
セダンとハードトップの選択は、意見が分かれそうですが、自分的にはセダンに一票。スーパーホワイトが多かったですが、今視点からするとこうした落ち着いた色が似あいますね。

ベースモデルではディープマルーンとの組合せとなるスーパーホワイトも含めて、リミテッドでは全てダークブラウンのインテリアカラーが組み合わされていました。
スポーティを意識したのかベースモデルでは、サイドサポート調整&エア式ランバーサポートを採用したスポーツシートが新たに設定されていましたが、リミテッドでは1G-EU/M-TEUを搭載したグランデと同形状のルーズクッションタイプとされています。シート表皮は専用のようです。
メーターは、ベースモデル同様、デジタルのみとなります。

各部のカラード化は先述のとおり、この時点で文法は出来上がっています。
ミシュランタイヤの銘柄はXVSのようです。185/70サイズのXVSは、前期チェイサーアバンテに先例がありました。国産タイヤの性能がだいぶ上がった時期であり、性能的な要素よりはブランド重視的な選択と言えそうです。
ベースグレードでは、ハーダーサスペンションとの組合せで195/70サイズの選択が可能だったのですが、シートといい、スポーティよりはラグジュアリーを志向していますね。
リヤワイパーは、ハードトップのみの設定。前期の時点ではセダンでも選択可能だったのですが、後期で選択不可となったことに沿う形となっています。
オーディオは、アンプを内蔵したチューナーのみ電子式にアップグレードされています。71登場時に「オーディオにはかなり力を入れた」ということが語られていましたので、同様の認識はこの時点にあったということなのでしょうね。ニーズも高くて、社外品も充実化が進んでいた時期ですね。

「間違いだらけ~」を筆頭に、酷評の多かったツインカム24とATの組合せですが、ニーズは高いものがありました。ツインカム24で可能となった高回転に対応するには、それまでの油圧式では困難で、電子制御式で初めて可能となったというのがメーカーの説明でした。
同様の理由から、MTよりも登場は遅れていますね。
シャシー等は先代からのキャリーオーバーでしたが、この頃入り始めた電子制御技術が性能向上に貢献していました。
表紙にある通り、マークII発売15周年記念というのが、リミテッド誕生の一つの理由ではあります。最上級グレードに特別装備を更に追加しているのですから、記念の位置に相応しい特別仕様車でありました。
一方で、若干視点を変えると、仕様的には次世代に向けての模索の感も強く感じるところです。
このあたりの見解は後述するとして、比較用にベースとなったグランデ・ツインカム24の画像を掲載します。
上が1983年5月、下がドアミラーの追加にあわせて改訂された1984年1月のカタログとなります。
〇ハードトップ

ジュエルパールマイカ/ダークブラウン

スーパーホワイト/ディープマルーン
〇セダン

スーパーホワイト/ディープマルーン

スーパーホワイト/ディープマルーン
1983年8月の部分改良で、ツインカム24のみシートカラーが次の通りに変更されている関係で、混同しそうな並びではあります。
(インテリアカラー:シートカラー)
・ディープマルーン:ローズベージュ → ディープマルーン
・ダークブラウン:ライトブラウン → ダークブラウン
・ブルー:ブルー → ダークブルー
当初は、インテリアカラーとシートカラーを分けることで、トーンオントーン的なコントラストを狙っていたようですが、同系色でまとめる方向へと変えたようです。解説書では「落ち着きのあるカラーへ変更」とされています。
同様の改良は、同時期のカムリ/ビスタやカローラ/スプリンターでも行われていますので、きっと改良要望が挙がっていたのでしょうね。
ベースモデルと比較してみると、シートを筆頭にツインカム24がスポーティからラグジュアリーの方向に変わりつつあることを感じていただけるはずです。
さらなる比較用に、今度は71を。
〇ハードトップ
〇セダン

共に、スーパーホワイトII/マルーンの組合せ
61 → リミテッド → 71を一つの流れとして見てみると、ツインカム24というスポーティなエンジンに対して、セリカXXやソアラでは性格付けをあまり迷わなかったものの、この3兄弟ではどう位置付けるか試行錯誤していたのかなと思わせるものがあります。
18R-GEUを積んだGTの後継という意識もあったのか、最初はスポーティな方向なのですけれど、AT追加以降はAT中心で売れていったことで、スポーティよりもハイメカニズムも豪華さの一つという位置づけとされていくようになります。その流れを決定付けたのは、120クラウンであり、リミテッドもそうした流れを読んでの修正や模索だったのでしょうね。
本当に見事だなと思えるのは、そうした方向修正というのは、時代が求めるクルマのニーズの変化とピタリと一致していたことです。その一致はこの3兄弟を人気車に押し上げる大きな要因となりました。
ライバル車も同様の模索を見出すことも出来ますが、一番上手だったとは言えると思います。販売台数上には、マーケティング上の小さな差以上の反映があった気もしますが。
最後に、個人的話を少し。
このカタログ自体は、後年入手したものですが、初見は発売当時でした。
ちょうど家のクルマを代替しようという話になって、商談に訪ねたトヨペット店の店頭にあったものを興味深く眺めたことを今でも覚えています。
この商談、ダウンサイジングが主目的ということで、コルサ4ドアSXが対象でした。下取りは3代目マークIIグランデ。中古ながらも、初代から3代目までマークIIが続いていたところに、状況への最適解とは言え、コルサへのダウンサイジングですからね。
マークIIから離れることとの対比で、とても眩しくありつつ、もう縁もないのだろうなという想いが複雑に絡んでそこに存在していました。それだけに、いつもなら貰うはずのカタログも、その時は珍しく棚に戻しています。マークIIが近くにある日々は、そこから8年以上の時を隔てて再開となるのですが、その当時は、そんな未来を予想することはとてもできずだったのです。
60マークIIというと、私は真っ先にこのリミテッドのことを思い出します。