
年代を1980年代に戻して、今回も特別仕様車のお話です。
今回取り上げるのは、2代目タウンエースとマスターエースサーフのIII型からとなります。
タウンエースは、初代ライトエースをベースにしたワイド版として1976年(昭和51年)に登場。同時にダイハツ版となる兄弟車、デルタワイドも登場しています。
当時は、全ての乗用車が排ガス規制への適合に四苦八苦していた時期となり、この種のワンボックスも、48年規制まではその多くが多人数乗車を主目的としたワゴンが設定されていたものの、50年規制導入時には全廃。規制の緩かったバンのみを継続する状況の中、タウンエース/デルタワイドはワゴンもシリーズ設定されているのが目新しくありました。
目新しいといえば、多人数乗車だけでなく、2列目・3列目でのフルフラット化や3列目の折り畳み等、多用途を謳っていたことも挙げられます。このことを以てすれば、従前のワゴンとも異なり、現代に続くワンボックスワゴンのフロンティア的存在とするのも、あながち間違いとは言えません。
このワゴンがこの頃から盛り上がりつつあったレジャーブームの波に乗り善戦。後を追う形となった、同セグメントのバネットシリーズ、ボンゴ、デリカ、一回り大きいハイエース、キャラバン/ホーミー、ファーゴが激戦を繰り広げながら、第一次ワゴンブームを盛り上げることになります。
この激戦、次々導入される新装備が実に刺激的でありまして、初代タウンエースの主なものだけでもハイルーフ・サンルーフ、カーコンポ、フロアシフト・AT、回転対座シート、2段ベッド等、ほぼ毎年のように改良&新装備の追加が行われてきました。
2代目タウンエース/デルタワイドは、1982年(昭和57年)に登場。この時に新たな兄弟車マスターエース サーフが従前ワンボックスワゴンを取扱車種に持たなかったトヨタ店の取扱車種として追加されています。
この頃には、第一次ワゴンブームも沈静化。度重なる豪華装備の追加で車両価格が上昇。比例して車両重量も増加し、動力性能と燃費への影響が出始めたこと。FF化が一気に進んだことで、乗用車でもスペースへの不満が減ったことがその理由と考えられます。
と書きつつも、多人数乗車が可能となるのは、ワンボックスにほぼ限定されていました(プレーリー、シャリオ等も登場しましたが、5人以上の常用となると困難でした)から、そうした需要に向けて、各社のワンボックスはロングライフモデルへの道を歩き始めることとなります。裏では、ミニバンと呼ばれるようになるポストワンボックスを模索しつつ。
タウンエースを筆頭とするこの3兄弟は、途中でマスターエースを廃止すると同時にライトエースを新たな兄弟車に加えるという変更も受けつつ、結局1996年(平成8年)までの足掛け約15年の長期に渡って、作られ続けています。
後で再度触れようと思いますが、小変更を除いた中規模以上の変更としては、1985年(昭和60年)、1988年(昭和63年)、1992年(平成4年)の3回行われていて、この変更を区切りにI型からIV型で分けるのが妥当だと考えるところです。
今回取り上げるのは、その中のIII型という事で。
III型の特別仕様車は、1989年(平成元年)に集中的に設定されています。
ベースとなったのは、タウンエースがスーパーエクストラ、マスターエース サーフがスーパーツーリングの共にスカイライトルーフ付ということで、当時の最多量販グレードとなります。
装備設定の模索をしつつ、更なる量販を狙ったというところでしょう。
それでは、前置きがかなり長くなりましたが、以下紹介していきます。
【タウンエース スーパーエクストラ リミテッド】
(販売期間)
・1989.03
(ボディカラー)
・X63(ライトブルーM(8D8)/ホワイト(045))
(インテリアカラー)
・グレー(HF12)
(特別装備)
・1.カラードドアミラー
・2.専用ステッカー(2WD)
・3.専用テープストライプ(4WD)
・4.外板色共色フルホイールキャップ(2WD)
・5.4WD専用ホイール(4WD)
・6.「LIMITED」リヤエンブレム
・7.専用全面ファブリック張りシート
・8.角度調整式アームレスト(前席)
・9.AM/FM電子チューナーラジオ(2SP リヤスピーカー用ハーネス対応)
春の特別仕様車ということで、ライトブルー/ホワイトのツートンという、明るいボディカラーを特徴とします。
カローラ店が前身となるパブリカ店からの累計販売台数で1,000万台を達成した記念も兼ねているため、ボディサイドやシートには、10millionが描かれています。
(販売期間)
・1989.09~1989.10
(ボディカラー)
・グレイッシュブルーM(8D6)
(インテリアカラー)
・グレー(HJ12)
(特別装備)
・1.カラードドアミラー
・3.専用テープストライプ(新意匠)
・6.「LIMITED」リヤエンブレム
・7.専用全面ファブリック張りシート(新意匠)
・8.角度調整式アームレスト(前席)
・10.ドアトリム表皮変更
・11.室内蛍光灯(ロイヤルラウンジ用)
・12.リニアモーター式電動カーテン(専用カーテン生地)
・13.カセット一体AM/FMマルチ電子チューナーラジオ4SP
続いての特別仕様車は、夏を飛ばして秋に登場。
特別仕様車としては唯一のモノトーンのボディカラーです。
春の特別仕様車と比較すると、電動カーテンやカセットステレオ等の追加が見受けられます。
先に書いたとおり、ワンボックスワゴンは、第一次ブームの中でカーコンポの台数増にも貢献しました。比較的若いユーザーが多かったこともあり、広大なスペースを良い音で鳴らすには、高価なシステムが必要とされた訳です。
しかしながら、今回の特別仕様車は、あまりオーディオに凝った設定ではなく。恐らく、想定はファミリーカーユースという事で高価なものは不要と判断されていたのでしょうね
これは余談となりますけれど、今のモニターの大型化なんかは、第一次ブームの時のカーコンポへの要求と重ねて見ていたりします。
(販売期間)
・1989.12~1990.01
(ボディカラー)
・27R(グレーM(168)/シルバーM(148))
(インテリアカラー)
・グレー(HJ12)
(特別装備)
・1.3.
・6.~ 8.
・10.~ 13.
・14.メッキドアハンドル
冬の特別仕様車です。
これまで同様、グレーを基調色としながらも、再びツートンに戻りました。
仕様等は前回と殆ど変わっていません。
以上がタウンエースの特別仕様車となります。
一方、兄弟車となるマスターエース サーフにも並行して特別仕様車が設定されていました。
追加装備としては、若干の違いはあれどほぼ同様。
そんな中でのマスターエース サーフの特徴としては、カラーリングの違いとなるかと思います。
タウンエースのグレーに対して、マスターエース サーフはベージュ。標準仕様では、両車がどちらも選べる形でしたが、特別仕様車では特化したということで。
【マスターエース サーフ スペシャル】
(販売期間)
・1989.03
(ボディカラー)
・X62(ライトベージュM(4K1)/レディッシュブラウンM(4K6))
(インテリアカラー)
・セーブル(HG45)
(特別装備)
・1.
・3.~ 5.
・7.~ 11.
(販売期間)
・1989.09~1989.11
(ボディカラー)
・21L(ライトレディッシュブラウンM(4K7)/レディッシュブラウンM(4K6))
(インテリアカラー)
・セーブル(HG45)
(特別装備)
・1.
・3.~ 5.
・7.~ 8.
・10.~ 13.
(販売期間)
・1989.12~1990.01
(ボディカラー)
・28R(ウォームシルバーM(169)/レディッシュブラウンM(4K6))
(インテリアカラー)
・セーブル(HG45)
(特別装備)
・1.3.
・6.~ 8
・10.~ 14.
この3仕様、ロワー側のボディカラーは同じという事で、見分けられたら、やはり達人の域だと思うのです。
以上、いかがだったでしょうか。
先に書いたとおり、この時期は、第一次ブームとミニバン登場の狭間であり、ワンボックスに注目が集まるとは言い難い状況でした。しかしながら、ゆとりのあるファミリーカーとしてワンボックスを求める層も根強く存在していました。
個人的な話で恐縮ですが、この型のタウンエースは、今回紹介した特別仕様車でこそないものの、お隣がロイヤルラウンジの2WDディーゼルターボ、叔父がスーパーエクストラの2WDディーゼルターボ ツインムーンルーフに乗っていたこともあり、懐かしい存在だったりします。この2台共、子供たちの成長を見守りながら、ディーゼル規制に影響される時期まで、長く使われていました。商用車ベースということもあり、耐久性では優れた存在だったように思います。
あと、カローラやマークIIを乗り継いだ父も、ワゴン車は心の片隅にいつもあったようで、それを滲ませる会話は時折ありました。タウンエースはその筆頭。私も含め、父以外の家族はセダンを望みましたので、数年前にヴォクシーに代替するまで、夢の実現には時間がかかることとなるのですけれど。
この兄弟車も、ワンボックスとしては最後の世代、次世代以降はセミキャブのミニバンへと進化していきます。進化の過程で、走行性能や安全性能は飛躍的に向上した反面、スペース効率の点では後退することになります。末裔となるノア3兄弟は、今や5ナンバーフルサイズですし、近いサイズのシエンタとは空間の広さの違いは歴然ですから。
今では機構も含めて再現は望めない存在。だからこそ当時のワンボックスを求めるマニアが存在するというのも、理解できるのです。
最後にまたしてもの余談です。
この兄弟車、登場時点で他のワンボックスが全て一気に古臭く見えるくらいのモダンな装いに先ず驚かされました。後続となる、1983年のボンゴ、1985年のライトエース・バネット、1986年のラルゴ・デリカもスタイリングに注力したワンボックスですが、それらと比較してもスタイリングで見劣りは感じませんでした。今でもワンボックスのgood lookingの一台だと思います。
見劣りしなかったもう一つの理由に、その長い歴史の中で、外観を中心に比較的大きな改良が行われていたことも挙げられます。特にIII型からIV型への変更は、ルーフ以外は面影こそ残すものの、ほぼ別物という有様。当時、ニューモデルマガジンX誌は、モデルチェンジとしてスクープしてもいましたから、実はマイナーチェンジというのには驚かされました。これが認可され、140クラウンロイヤルでは認可でもめたというのも難解な話ではあります。
話が脱線しましたので戻します。
さて、I型からIV型まで兄弟車含め各種ある中で、一番グッドルッキンなのはどれなのだろう。これまた、私の中では悩ましい問題です。
以下、これまで紹介したIII型以外を並べてみます。
左上から順に、タウンエースI型、同II型、同IV型、マスターエースI型、VAN(輸出仕様)I型、同II型、ライトエースIV型、デルタワイドI型
先ず、5マイルバンパーに萌える気持ちは理解しますが、私的には小型バンパーの方が好み。次に、他車の例にもれず、このクルマもまた初期型の良さは感じるのですが、II型にそれを上回るものを感じていまして。もっとも、初期型がベストと思う時期も長かったのですけれど。
従って私の(今の)ベストは、タウンエースII型。さらに条件を加えるなら、VANの装いを見てしまうと、スカイライトルーフに惹かれつつも、スタイルならミドルルーフと書いてみます。
恐らく意見が割れるだろうなと予想しつつ。ここを読まれたあなたのベストは、どのモデル、どの世代ですか?
【カタログ以外の画像の引用元】
・FavCars.com