
本当に久方ぶりのカタログ話(用品編)となります。
確認してみたところ、前回はなんと4年半前。とかく他の話題に行ってしまいがちですが、合間にはきちんと資料的部分も残したいなと思ったりもして。
今回取り上げるのは、やはり1980年代のカーオーディオから、タイトル通り1985年の富士通テンです。今はデンソーテンが社名となっていますね。メーカー名より当時のブランド名の”Biyo”の方が有名かもしれません。
入手元は、資料にも記載のとおり、1985年の東京モーターショー。
当時、購読していた”CAR and DRIVER”誌の広告に影響された私は、クルマと同じくらいカーオーディオに興味を持っていて、用品館も楽しみの一つだったのです。
ちなみにタイトル画像は、リーフレットを入れて配布されていたクリアケースとなります。
前置きは軽くで、早速リーフレットを紹介していきます。
表紙には、当時の最高機種だったブラックバージョンが掲載されています。
ワンボディに主流が移る前ということで、これら全てでのサイズは2.5DIN。クルマのオーディオスペースは2DINが主流でしたから、アンプはダッシュボードから吊り下げるか、座席下への配置とならざるを得ませんでした。
煌びやかという言葉が相応のイルミが印象的ですが、この状態はデッキとチューナーが同時作動しているようで、実際はもう少し点灯箇所は少なかった筈です。
チューナーの表示は、85.1MHz。
当時はFMヨコハマが開局直前で、J-WAVEの開局は3年後の1988年。この周波数は、埼玉県民的にはNHK-FMでありまして、ずいぶん渋い所を突いているなと思ったのですが、もちろんそれは見当外れ(笑)
関西の方には当然となる、FM OSAKAが正解なのでしょう。さすが、本社を神戸市に置く会社だなと。
見開きの部分は、大判の割に細かい字が多いので分割で掲載してみます。
先ずは、上段のアピールの部分から。
Dシリーズの名の通り、このリーフレットでは横幅180mmサイズの物のみ紹介されています。日本車ではトヨタが180mmの規格化に先行していて、日産車等は150mmから180mmへの移行期でした。他社では両サイズを並行して作るところがありましたし、バイヨも150mmのMシリーズがあったようです。既にDシリーズへの統一を想定していたのでしょうね。
この後取り上げる2シリーズとも、イルミはオレンジとグリーンで切替可能。他社ではどちらかとなることが多い中、特徴となる機能ではありました。
先ずは表紙にもなっている、上級のブラックバージョン。
掲載は、次のバージョンとの差異もあってか、全てオレンジのイルミとなっています。先に書いた通り、グリーンに切替可能で、こちらだとより純正っぽくなっただろうなと。
当時の高級車の純正デッキを凌駕する機能と凝ったイルミ機能を持っています。
全て揃えると約20万円ですから、それも道理です。
当時の各機能は、メーカーにより略名含めて名前が不統一だったのですが、富士通はトヨタ純正の表記とほぼ同じですね。
オートマチックカセットドアの採用は、この機種が初めてというのが意外です。
もう一つがシルバーバージョンとなります。
位置付けとしてはブラックの下位。記憶が確かなら、ブラックは後から追加されてモデルだと思います。
グレードが異なるのですから、ブラックボディも作って互換を持たせれば良いように感じますが、メーカー的にはセットで買ってくださいよということだったのでしょうね。
シルバーボディにグリーンのイルミの組合せは、やはり社外品っぽく映ります。
片隅のワンボディデッキアンプは、純正ラジオとの組み合わせを想定した機種となります。
どうしてもトヨタのイメージが強いのですが、装着例は日産車や三菱車も掲載されています。
裏面はスピーカー等。
BOSEが高級品として認識されていた時代ということで、コラボモデルがありました。スピーカーとアンプはBOSE。車種別に音響特性を持たせたカートリッジが味付けのポイントだったのでしょうね。
そのカートリッジは、当時社外品に交換する事例が多かったと感じられる車種が揃っています。マークII3兄弟やセリカが含まれていてもよさそうですが、この辺りの選抜は謎ですね。
パーソナル無線は150mmサイズのものが掲載されています。デッキより高いお値段に驚かされますが、携帯電話のなかった時代にあっては、便利なコミュニケーションツールではありました。
社外品のみではなくクラウンの純正CDプレーヤーも掲載されています。
ほぼ同時期にマイナーチェンジされた120系後期で採用されたもので、これが初の純正品となります。世界初だったパイオニアの社外品からは約1年の遅れ。
2DINサイズですが、カセットデッキを含めることはできず、CDチューナーとなります。外れたカセットデッキは、前期では時計がおかれた位置に独立して配置することで両立させていました。
灰皿が近くにあり埃等の侵入を嫌ってか、CD部にトレイ式を採用する辺りが、純正らしい箇所ですね。
近日発売の形で付属していたのはこちら。
先ずはCDプレーヤー。
カセットデッキに比べると高価でしたが、音質や使い勝手の点で新たなソースとして認知されつつありました。
このCDプレーヤーは、近いデザインのものが1986年に変更されたトヨタ車のオプションとしても採用されています。
もう一つはイルミ付きの置き型リヤスピーカー。
元々置き型は、埋め込み型よりも高価になりがちだったのですが、純正とは明らかに異なる見栄えが大いに受け入れられ、当時の社外品のマストアイテムの一つとなっています。
高音質の追求は更なる差別化の表れですし、イルミといった付加機能もその流れの一つでした。90年代以降はトレードインに主流が移りましたから、当時ものアイテムと言えるでしょうね。
といったところで、いかがだったでしょうか。
当時のカーオーディオの人気製品は、パイオニア、アルパイン、ケンウッド辺りが挙げられますが、その他にも今回取り上げた富士通テンの他、ナショナル、クラリオン、ソニー等があり、各社日夜新製品の開発を繰り広げ、虎視眈々と市場制覇を狙ってもいました。
純正品に飽き足らない層が、高価を投じやすい製品でもありましたし、純正品もまた社外品に連れられる形で性能を向上させてもいたのです。
クルマ本体と同様、カーオーディオもまた80年代が面白かった時代と言えます。
これまで何度か取り上げている他社製品共々、当時の息吹が伝われば嬉しく思います。また、意外と記録が残っていない時代でもあり、この情報がお役に立てればありがたく存じます。