
少し前にマキシマを取り上げた時(リンクは
こちら)に、ふと思い付いた企画です。
クレシーダについては、あえての一般輸出を取り上げたことはある(リンクは
こちら)ものの、北米/カナダ仕様はそのままになっていたことに気が付きまして。
大きくは一般輸出・オーストラリア・北米/カナダの3仕様に分けられるクレシーダですが、最も有名なのが北米向けであり、既に他所で取り上げられている可能性も高いのですが、ここしか触れないような部分を含めることで、何番煎じ感を払拭しようかと。
そんな北米/カナダ向けクレシーダは、1989年モデルとして1988年夏に登場し、1992年モデルで幕を閉じています。一般輸出向けクレシーダは1995年まで続いていますが、この両地域については一般的に知られる80系のモデルライフと同期となります。バリエーションとしては、国内のセダン3.0グランデG相当となる7M-GEを搭載したモノグレード構成。というより、国内の3.0Gは、税制改正を待って、この地域やオーストラリアに先に輸出されていた仕様を国内転用したと言えるのですが。
4年間に渡るモデルライフの中から取り上げるのは、最終となる1992年の北米向けカタログ。X30から始まったクレシーダ名は、ここで終わりとなる記念碑モデルでもあるわけです。
もっとも、後述する通り販売的には決して成功とは言えないモデルですので、最終期のカタログはそれまでの写真の流用も多く、頁数も減らされています。ところが、そんな状況というのは、取り上げる方としては都合がよろしいわけでもあるのです。何せ、このモデルに関しては、書き始めたらいくらでも書けてしまうものですから、若干のセーブになろうというもの(笑)
既に前置きからして、長くなる予感がありますが、以下記していきます。
マニア視点を含めますので、心してお付き合いくださいませ。
ついでながら比較用に、
国内セダンのカタログのリンクも貼っておきます。
カタログの表表紙と裏表紙です。
掲載されているのは、アーモンドベージュパール(4J1)。国内ではベージュマイカメタリックとして設定されていた色ですね。
カナダ向けは、法令の関係からヘッドランプクリーナーが追加されますので、北米向けとなります。
国内のセダンとは、各レンズ類、グリル、バンパー等の造形が異なることがお解りいただけると思います。もっとも、この両地域における前期と後期の差異(91モデルから変更)はこの角度からだと、この時期に改められたトヨタのシンボルマークを掲げるグリル、カラード化されたバンパー&サイドモール、後述するホイールのみ。
国内セダンではマイナーチェンジの際に、フェンダーの前側下半分をバッサリやって、エアダム一体型バンパーを組み合わせたり、一見同一形状ながらリフレクターをガラスから樹脂に変更したヘッドランプ等、大技・小技を展開していますが、大型ウレタンバンパー付の輸出仕様では、そうした変更は行われませんでした。
アルミホイールは、後期より国内の15インチに適用された新ディッシュタイプをポリッシュ仕立てにしたものとなります。国内向けには、15インチのメッシュタイプがポリッシュ仕立てが先に出ていたことからの作り分けのようですが、好みの違いが反映されているようで興味深い点です。半ば余談ですが、このホイール、21世紀初頭では国内純正ホイールとほぼ変わらずのお値段で入手可能でありまして、食指が伸びかかったことがあります。先にBBSに手を出していたため、踏み止まりましたが。
見開きで掲載されているのは、サテンブラックメタリック(205)。
国内では、セダン以外にオプション設定されていたエクセレントトーニング(24S)の上半分の色と書くと、解り易いかもしれません。
前後バンパーの長さが目に付きますが、4,815mmという全長は、最短となる教習車&タクシー仕様の4,595mmと比べると、200mm以上もバンパーだけで稼いでいる計算ですから、それも当然です。
国内向けからは、ロッカー・ホイールアーチ・クリアランス等の各部からメキモールが省略されていて、ドアハンドルも国内G仕様用のカラードとなります。どうやら、この種のメッキモール類を備えた先代が「ごちゃごちゃしている」と評されたための変更のようです。
実はこの画像はタイトル画像共々、1990年版にも掲載されたもので後期における変更を加えつつで掲載され続けていたものとなります。
右下には(4J1)のリヤビュー。
リヤも、国内にあるトランクキーオーナメントは省略されていて、リヤエンブレムも「TOYOTA CRESSIDA」のみ。モノグレードということもあってか、グレードエンブレムは排気量を示すものも含めて付けられていません。
リヤクォーターの伸縮式アンテナやリヤトレイのバルブ式ハイマウントストップランプも国内とは異なります。
サイドマーカーが追加されたリヤコンビランプは、一見同一意匠ながら、国内仕様にはあるスモーク加工が廃されています。これを配線加工なしで装着するためにハーネスごと取り寄せたら、実は電球の形状も異なっていたのには驚かされました。ちなみにこの交換に率先して気付いた人は殆どいませんでした。所謂自己満足というやつですね(笑)
当然左ハンドルとなるインパネ。
92モデルの数少ない変更点として、CD無のオーディオが1DINサイズとされています。
空調のスイッチは、国内に近い意匠ながらスライドスイッチは無。前期はスライドスイッチ付でしたが、後期から廃止されています。
ステアリングパッドの意匠違いも目に付きますが、何故変えたのか気になって部品を取り寄せたら納得。パッド全体がホーンスイッチとして可動する他地域とは異なり、中央部の枠線の中のみが押せるようになっていました。おそらくこれも法令の縛りでしょうね。
マイル表示のスピードメーターや「SECURITY」表示機能付きのタコメーター等も微妙に異なります。ちなみにデジタルメーターは前期のみとなるようです。
国内ではクリアランスソナーの表示部となる時計の下には、パッシブシートベルトの警告灯(緊急時等、シート側のアンカーをレバーで緩めると点灯)となります。ちなみに、このパッシブシートベルトは北米仕様らしい装備ですが、カナダ仕様には装着されていません。この差異から、天井の形状も異なっていたり(北米:成形天井、カナダ:吊り天井)します。
搭載エンジンは、先述のとおり7M-GEの一種のみでした。
ここではオプションが紹介されています。
ラグジュアリーセダンとして販売していたこともあって、素の状態でもほぼフル装備だったのですが、いくつか選択肢はあったようです。
素の状態ではマニュアルシートだったため、パワーシートは運転席と助手席を含めたパッケージオプションとなっています。このオプションを選択すると、シートデザインもチェイサーのハイメカアバンテ&ラフィーネに近いものから、国内G用のもの(通称:ラグジュアリーA)に変更となります。
さらに本革シートがパワーシートパッケージとのセットで装着可能。右頁の画像が装着車となります。国内の本革仕様同様に、ラグジュアリーBのデザインですが、リヤシートのヘッドレスト形状が異なっています。またまた余談風味ですが、前席にあるのがパッシブベルト。ショルダーベルトが自動で強制装着されますが、腰ベルトは手動となります。サイドブレーキ脇のレバーが緊急時等にパッシブベルトを浮かせるためのレバーであり、これを操作すると警告灯が点灯するという構図です。
その他には、CDプレーヤーを組み込んだオーディオ、ムーンルーフ、ABSがオプションとなります。国内にはあったTEMS、TRC、エアバッグ等はオプションでも選択不可だったようです。
最後に、装備・諸元・カラーの部分を大きめに掲載。
表記が異なるためサイズが判り難いですが、先に書いた全長以外は国内と同等となります。
カラーはちょっと力を入れてまとめてみます。
掲載されているカラーを、表記:国内表記:カラーコードの順で上から列記すると・・・
・Silvermist Metallic:スーパーシルバーIII:176
・Dark Gray Metallic:ダークブルーイッシュグレーメタリック:183
・Super White:スーパーホワイトIV:050
・White Pearl:ホワイトパールマイカ:049
・Almond Beige Pearl:ベージュマイカメタリック:4J1
・Dark Amethyst Pearl:ダークモーブマイカメタリック:3K1
・Ice Blue Pearl:ライトブルーメタリック:8G2
・Dark Blue Pearl:ダークブルーメタリック:869
・Medium Red Pearl:レッドマイカ:3J9
・Satin Black Metallic:ブラックメタリック:205
となります。国内設定が見送られているのは、「Silvermist(176)」、「Ice Blue(8G2)」、「Medium Red(3J9)」、「Satin Black(205)」の4色ですね。(205)はエクセレントトーニング(24S)の上の色ですし、(176)はクラウンやセルシオ等、他車設定多数。その他、(8G2)は初期エスティマや170後期コロナに設定、(3J9)は30カムリ/ビスタの初期に設定されていたようです。
案の定、抑えつつでも文字量多数となってしまいましたが、最後に概況等をご紹介。
クレシーダは、2代目(国内では4代目)となるX60の時代に結構な成功を収めています。当時は第二次オイルショックの後で、アメリカ車はダウンサイジングを強いられていたのですが、そこにコンパクトラグジュアリーとして嵌ったのです。
この市場を求めて追尾したのが、日産マキシマ、マツダ929(ルーチェ)、ホンダレジェンドであり、北米でのライバル関係でもありました。(この辺りは、マキシマの回が詳しいのでご参照くださいませ)
ところが、アメリカ車がダウンサイジングと並行してFF&V6化を進める中では、FR&直6のままだったクレシーダは世代を経るごとに、時流から外れた存在となっていきます。
その点を上手くマッチさせたのが、日産マキシマでありまして、北米では国内のマークII・マキシマの販売差がそのまま逆転した結果となります。
トヨタには、クレシーダの下にFFかつV6を搭載したカムリがあったことも少なからずの影響を受けていたと言えますが。その台数の多さから、日本からの輸出だけに留まらず現地生産に至ったカムリに対して、クレシーダは元町or関東自工で生産されたものが細々と輸出されるのみでした。
もっともトヨタがそんな潮流を見逃すはずはなく、ラグジュアリー方向への進化としてはレクサスLS&ESに、最大サイズのセダンとしてはアバロンに後を引き継ぐ形で、クレシーダはその役目を終えます。
国内優先で北米に輸出したクレシーダと北米優先で国内にも導入したマキシマ、この2台の差が文化の差とも言えるのですが、商売上はどちらが正しかったのか判定は難しいですね。
その後、セダンは地域別に作り分けられる時代を経ますが、現在は北米仕様が国内導入された感が強い時代に戻ってきました。北米ではセダン需要がまだまだ根強い中、今後国内のセダンがどう展開されていくのか興味深いですね。
※おまけ
youtubeから、CRESSIDA関連を貼り付けてみます。
○CM
○Promotional Video
○Gulf圏で紹介される北米仕様(その1)
○Gulf圏で紹介される北米仕様(その2)
○前期カナダ仕様の紹介
※余談
北米クレシーダ話は、需要があるようならX80世代に特化したモデル変遷を取り上げるかもしれません。