
またまた、珍しい資料で話をつなぐことにします。
スタンザFXは、
「思い出のクルマをカタログで振り返る5」の中で概要含めて取り上げているのですが、こんな資料が出てきたのであれば、再度取り上げるのも悪くは無かろうということで。
何せ、普通のフルモデルチェンジではなくて、スタイルはもちろんエンジン・シャシーも含めたフルモデルチェンジ。日産の長い歴史の中でも、これだけの変更は無かったであろうと思います。当然セールスポイントも沢山あるわけで、セールスマニュアルも力作となっているのです。
2015/4/9 画像を全て更新しました。
それでは早速紹介していきます。
左頁はもくじとなります。今回は抜粋ではなく全て掲載しています。
右頁はFF車の占有率の推移と予測。
この時期、日産は「将来は、セドリックとフェアレディ以外全てFF化する」とぶち上げて、特にスカイラインファンから反発されています。結果は、もう少しFR車が残ることとなりました。
1983年・1985年の予測は、殆ど外れていないように見えますね。
左頁は発売の背景とねらいです。
GMのXカー、Jカーに影響されていることが読み取れると思います。本家の結果を以って”日本のXカー”の意味を裏読みするのは禁則事項です(笑)
右頁は5つの基本セリングポイントが上げられています。
ここでは、ボルトとバッテリー以外は全て新しいと謳われています。
左頁は新開発CAエンジンの解説です。
性能曲線のとおり、従来型のZエンジンより低回転型としたのですが、その結果、最高出力自体は低下しています。比較対象としてコロナのT型エンジン系が並べられていますが、この時期既に末期となっていたエンジンとの比較はあまり意味が無かったかもしれません。当時のT型、特にキャブレター仕様は過渡期の希薄燃焼に触媒を組み合わせた、排ガス規制の悪癖を残すものでしたし。
右頁はストラット式4輪独立懸架の解説です。
ネガティブスクラブのため、ブルーバードのゼロスクラブよりさらに直進性が良いと書かれています。
左頁はスタイリングの紹介です。
今の目線ではプロポーションは悪くないと思いますが、市場評価からすると、進みすぎたスタイリングですかね。
当時は、空気抵抗係数が謳われることが多くて、0.4を切れば十分セールスポイントになっていました。4ドアはもう少し数値がよさそうなものですが、少し意外。
右頁は軽量化とそれに伴う性能向上が謳われています。
65kgの重量低減はあまり大したことがないように見えますが、従来型も1トン前後の重量ですから、十分過ぎるほどの成果。反面剛性は犠牲になったようで、次世代はホワイトボディの剛性アップが課題となります。
0~400m加速は、当時18秒を切れば俊足と言えました。フェアレディZも2.0EGIだと同等の数字なのです。
左頁は直進安定性とコーナリング安定性の紹介
セールスマニュアルですから、FFで課題となるアンダーステアとかタックインは文言自体登場しません。
そして何故か水着姿の尾根遺産(笑)
右頁はハンドルの軽さ、きれ、回転半径の紹介
回転半径はFF車としては頑張った数値ですが、コロナとブルーバードよりホイールベースが短い点で救われていますね。
ハンドルのきれは、従来型・コロナはボールナットなので当然の結果。むしろラック&ピニオン式は、切れが良すぎて扱いにくいという評があったくらいの時代ではあります。(同時期の70カローラは1300のみ先行して1500は遅れての採用となりましたね)
左頁は燃費の比較
省エネルギーの世相を反映して燃費性能は重要な項目に位置づけられていた時代でした。モデルチェンジに伴って燃費性能は大幅向上。その数値はカローラやサニーすら凌ぐものでしたが、ギヤ比を高くして稼いだ面もあります。この時期、同じような思想でハイギヤード化が進みましたね。
右頁は室内の広さの比較
コロナとカリーナはほぼ同サイズでしたが、カリーナは一回り狭いことがわかります。またブルーバードはコロナを見た後の設計ということが判る数値です。スタンザFXは、そのブルーバードすらも凌いでいます。この辺はFFの利点ですね。
左頁はトランクルームの大きさの比較
ここでは、コロナの方がブルーバードよりも大きい数値となっています。ブルーバードは910にモデルチェンジの際、スタイリング優先でリヤデッキの高さを低くしたため、高さ方向の容量を犠牲にした結果です。そのコロナも凌ぐスタンザFX。この辺もFF・・・以下略(笑)
右頁は室内の静かさの比較
アコード・コロナ共に同クラスでは静かといわれていたがための登場でしょうね。スタンザFXは同レベルとなっていますが、むしろ従来型が劣っていた感もありますね。
左頁は運転席まわりの紹介
インパネ全体で見てもむだがなく合理的なデザインなのですが、計器盤配置と繋げられています。センターコンソールもなくて足元広々の部分は、質感のウィークポイントとして後年デザイン変更されることとなります。
右頁は視界の良さの紹介
ここでは従来型のみとの比較されています。フロントの視界拡大は、Fウィンドーの前出し&エンジンフードラインの下げが効いています。
左頁は小物入れの紹介
この時代、ランサーEX辺りを端緒にした小物入れの数の多さが競われていました。アームレストをポケットにするのはこの時代だけでしょうね。
右頁はさび対策等の紹介
ここも”中古車になったときの商品価値~”の部分は裏読み禁止です。
カラードウレタンバンパーはレパード・シルビア・セドリックに続いての採用ですが、このクラスでの採用は英断ですね。まだまだ鉄バンパーの採用車種が多かった時代なのです。
左頁は新空調システムとエアー式ランバーサポートの紹介
新空調は、使い易く操作ロジックも正しいと思うのですが、この後は続きませんでしたね。
右頁は車種体系と塗色の紹介
ボディタイプ別の車種間仕様差です
スタンザはグレードが順列で判り易かったと思います。これがバイオレットリベルタだと1600最上級の方が1800キャブより豪華だったりとか、オースターは1800EGIに装備が簡素なスポーティグレードを設けたりとか複雑になるんですよね。
この辺は不要かなと思いつつ掲載しました。
装備は標準段階で必要なものは揃えたのでラインオプションを減らしたというところでしょうか。
最終見開きは宣伝関係と各地方の販売トップの面々。
これだけの面々が協力すれば、立派なセールスマニュアルが出来上がるのですね。
期待を一身に背負った結果は、適当な言葉が見つからないくらいの惨状となるのですが、未来を知る由も無かった当時の熱意を汲み取っていただくのが、30年以上経過した現在の正しい見方だと思うのであります。