
初代レパードの特集、第3回です。
今回は1982年9月20日に行われたマイナーチェンジが主な内容となります。
このマイナーチェンジ、調べていく内に、あれここを変えていないの?という意外な部分がいくつかありまして、そんな発見を共有していただければ、幸いです。
掲載するカタログには、今回も兄弟車のTR-Xを採用。
マイナーチェンジ直後のとどちらにするか悩んだ末に、この時期に追加されたドアミラー車の画像を尊重して、1983年10月発行のものとしました。
それでは、以下紹介していきます。
次に掲載する見開きの関係で、ページ数が一枚余る形となるため、表紙と組み合わせてみました(笑)
新たなるフレーズ「頂点は感動」が大きく掲げられています。
その下には、このマイナーチェンジの目玉的内容として、「光通信ステアリング」と「ECCS(エックス)トルコン」の2つが記載されています。
共に詳細は後述するとして、「ECCS(エックス)ターボ」に続いてのトルコン、さらに車名もTR-Xということで、韻を踏んでいる形です。
綴じ込みを開いた大写しの画像です。
非常に理解し易い世界観が描かれています。「デートカー」というジャンル分けにも適した使い方かと(笑)
最初からこの路線を明確にしていれば分かり易かったのに、と思います。この時点だと、ソアラの最初のCMと印象が重なるのが惜しい感があります。
サッシュレスの大きなドアで窓は全開。王道ではありますが、何ともカッコイイ構図ですね。
4ドアハードトップのフロントビュー。
グレードは、マイナーチェンジに伴い、2800が落とされた替わりに追加された、新たなる頂点、ターボ ZGX・スーパーエディションです。
マイナーチェンジの要点に、「グリルを変えてヘッドランプの一体感を増した」とあります。この変更、好みの問題ではあるのですが、個人的にはレパード共々、前期に一票を投じます。
その一方、後期に一票を投じたいのは、クリアランスランプの部分がアンバーからクリアに変更された点と丸から形状変更されたフードエンブレムです。何れも好みの範疇ではありますが(笑)
お気付きの方がいるかもしれませんが、ドアミラーが追加されているにも関わらず、見開き画像の差替えはされていません。後掲の画像からすると、やはりドアミラーの方が似合う感がありますので、そのままだったのは勿体なかったように思いますね。
4ドアハードトップのサイドビューです。
ターボのグレード名称に追随する形で、ノンターボのグレード名も、F→GX、CF→SGX、SF→ZGXに変更されています。
グレードは、販売の中心だったと思われる、200X SGX。
この角度からだとパネル類の変更がないことから、マイナーチェンジ前後の見分けは難しいと思います。
ワインレッドメタリック(#926)のボディに、レッド&グレーのインテリアというカラーコーディネートも変更がありません。
右上の解説には、この時期から使われ始めた「プラズマ」の表記があります。この部分は当然差替えで、マイナーチェンジ直後では、「(ECCS)」と書かれていました。ドアミラーの件と合わせて、細かいのか、何とも不明なところです(笑)
4ドアハードトップのリヤビューです。
グレードは、TR-Xらしいと言える、180 SGX。
マイナーチェンジでは、テールランプを変えて、リヤフィニシャーを追加しています。ここも、テールランプの配置を変えなかった4ドアでは、前期のスッキリ感に一票です。
SGXでは、新たに装備されたフルカバーも相まって、より豪華に見えるようにはなりました。画像でお分かりのとおり、6気筒系とはあえて形状を変えた専用品とする辺りも細かいですね(笑)。
2ドアハードトップのターボZGX
こちらも4ドアと同様の変更を受けています。
TR-Xでは、レパードのカタログにはあるリヤビューの画像が省略されていますが、変更点は同じです。
2ドアはテールランプの配置が変更されて、4ドア以上に見た目の変更がありました。こちらの変更はかなり悩んだ末に、後期に一票を投じることにします。
ターボ ZGX・スーパーエディションのインパネです。
やはり新たなる装備、光通信ステアリングが目立ちます。この後のC32ローレルでも採用された形状ですね。スーパーエディションではこれが革巻きとなります。
何度見返しても、このインパネは質感も高くて、パーソナルカーとして納得できるデザインだと思います。一部スイッチのデザインにおいて、繊細さが欠けるように映るのが、若干惜しい点で、ここが改善されるともっと良かったように思います。その分、当時のハイテク満載感が出ているとも言えるんですけれどね(笑)
ZGX・エクストラパック装着車のインテリアです。
SF-Lに相当するグレードの代わりとして、ノンターボのZGXにはエクストラパックが設定されることとなりました。
シート形状や生地は、従前のSF等から変更を受けていないようです。
この画像を見ていると、同時期からトヨタはワインレッドの内装に傾注し始めますが、日産はこのままベージュで押してもよかったんじゃないかと思えます。
ワインレッドの後追いをやってしまいますが、トヨタが後にセーブルと銘打って、この色領域に辿り着いたことからすれば、先駆けだったように映るんですよね。
ハイソカーの4ドアには、ルースクッションの採用が多くなり始めた時期ですが、レパードに採用されることはありませんでした。クルマの性格的にもそれで正解だったと思いますが、分かり易い豪華さの点では不利だったかもしれません。ここも、今視点の方が評価し易い感がありますね。
メカニズムの紹介です。
先に書いたとおり、この頃始まった「PLASMA(プラズマ)」の文字が飾られています。
当時、古来に類されつつあったL型をプラズマシリーズに含めたことが話題沸騰となっていますね。特段、シリーズの基準があるわけでもなく、メーカー都合の宣伝ではあるのですが、ユーザー側も熱かった時代らしいと言うべきでしょうか。
新世紀と銘打たれていますが、マイナーチェンジに伴う変更も行われていないようです。
マイナーチェンジの時点では、既にV6を開発中の噂は出回っていて、この時点ではセドリック/グロリアに続いて、フェアレディZにもV6が搭載されていました。もちろん、レパードにもV6待望論があったものの、その期待は予想とは違った方向で実現されることとなります。
6気筒についてはこのぐらいとして、4気筒にはZ型を継続採用。これが実に意外な判断でして、同時期にマイナーチェンジされたローレルに加えて、部分改良のスカイラインや末期になりつつあった910ブルーバードにまでCA型が展開されたことからすれば、最後までZ型のまま4気筒を残したこととあわせて、その判断の理解に苦しみます。
ターボには、「ECCSトルコン」ということで、電子制御の4速オートマチックがようやくの採用。セドリック/グロリアから始まった展開は、ローレル・スカイラインとあわせてレパードにも約半年遅れでの採用となっています。
実は4速化されたターボに対して、ノンターボ系は3速のまま据え置かれています。調べて分かったのですが、L20Eの4速化は、グランドエディション追加と同時だったようです。これまた、セドリックやローレルではターボと同時にL20Eも4速化されたことからすれば、意外な判断です。スカイラインはターボのみ先行して、L20E&LD28は1983年のマイナーチェンジまで見送られていることからすれば、スポーティ系は後回しということだったのかもしれませんが。
タイヤは、マイナーチェンジ直後に60扁平タイヤが認可されていて、ソアラは1983年のマイナーチェンジ時に採用していますが、レパードはこの段階でも60扁平の設定はありませんでした。マークII系やローレルの採用が、次世代まで見送られたのと同じだったのかもしれませんが、スタイル優先で早期に採用してしまうのは、訴求力としてアリだったと思いますね。
ここからは各種装備の紹介です。
最初にくるのは、マイナーチェンジの目玉、光通信ステアリングです。
当時は、ステアリングのセンターパッドにスイッチを備えること自体、慣性マスが嵩むこともあって、賛否が分かれていましたが、今のスイッチ多数の時代の先駆けとして高く評価されるべきだと思います。手元にあって、確かに使い易い位置ではあるんですよね。
ターボ追加時に登場したデジタルメーターは、ノンターボにも拡大採用されたものの、デザインの変更はされませんでした。見易さを求めて日進月歩していた部位ですから、改良が入っていてもよかったかもしれません。
SF-Lが落とされたことで、本革シートを標準とするグレードはなくなりましたが、ZGX・スーパーエディションとZGX・エクストラパック装着車では、装着車設定の形で、同じデザインの選択が可能でした。その一方で、後席の左右3点式ベルトは2点式に変更され、中央席のシートベルトはオミットされていますね。
オーディオは、ZGXのみ、新たにFMダイバーシティアンテナが採用され、チューナー部のデザインも受信アンテナを表示可能するものに変更されています。あえて表示させちゃう辺りが、初物装備らしいとは言えそうです。
パワーウィンドーには、イグニッションキーを抜いた後も30秒間は作動可能とするタイマー機能が追加。その他にも、応急用タイヤ、ブロンズガラス、ドアミラー等、この時期に登場し始めた装備には、きちんと対応されていますね。
4ドアハードトップのグレード一覧です。
ターボ追加時にやや方向変更されたことで複雑化したグレード構成が、名称変更もあって、スッキリとしました。
ちなみにTR-Xには、200X・GXとターボGXの設定はありませんでした。
こうして見ると、アルミホイールの装着画像が少ない印象があります。ここも、ハイオーナーカーとすれば妥当、スペシャルティーカーとすると疑問の選択かもしれません。
ドアミラーの追加設定に伴い、ZGXスーパーエディションの画像のみ、ドアミラー装着車の画像に差し替えられています。フェンダーミラーの画像と比べると、ノーズの長さが強調されて、やはりドアミラーの方がカッコイイですね。
2ドアハードトップのグレード一覧です。
レパードには、ノンターボのZGXが残されましたが、こちらはノンターボが整理されて、全車ターボ付に絞られています。
こちらもZGX・スーパーエディションのみドアミラーの画像に差し替えられています。

主要装備一覧と主要諸元表です。
FとGXへのリモコンミラーの採用は気付いたのですが、その他にも装備の変更はあると思います。前期と比べてみてくださいませ。
といったところで、いかがだったでしょうか。
初代レパードの歴史を語る際には、ソアラとは対照的に、マイナーチェンジに伴い2800が落とされた点を語られることが多いように思います。この後のこともありますしね。
気になって、当時の販売台数を調べてみたのですが(引用元は、月刊自家用車誌に掲載された自販連発表のデータです)、レパードの2800は1982年の1年間で313台しか売れていませんでした。これでは、落とされたのも仕方ない気がします。これは、やはりターボ追加の影響が大きいようです。
マークIIやローレルも同時期に2800を落としていることからも分かるとおり、2000ターボが登場してしまうと、価格と性能の比較から2800を喰ってしまうのです(余談ながらローレル2800は、100台以下でした)。ターボの追加が遅れたフェアレディZだと、280も3割強の販売比率を占めていたりするんですけれどね。
この点では、3ナンバーのみで9,311台も売ったソアラがむしろ例外的な存在だったと言えます。
その一方で、5ナンバー同士の比較ではレパードも善戦していました(レパード:18,256台、ソアラ:14,295台)。もっとも、善戦もここまでで、マイナーチェンジによる商品性向上は認めるものの、トヨタが規模をはるかに上回るマイナーチェンジや新エンジンを次々繰り出す中では、相対的な商品力の低下は否めませんでした。
1983年以降の販売台数の推移は、そうした結果を反映した数字となっています。
・レパード(5ナンバーのみ)
1983年:12,815台、1984年:6,682台、1985年:3,165台
・ソアラ(5ナンバーのみ)
1983年:20,831台、1984年:21,231台、1985年:16,392台
1983年に逆転されて以降、その台数差は開く一方だったのです。
ターボはインタークーラーでパワーアップ、さらには1G-Gツインカム24を搭載した2.0GTが新たなメイングレードとなったソアラに対して、L20ETで戦い続けるレパードでは、実際の性能以上に台数差が開いたのも仕方ありません。
レパードもマイナーチェンジを多少後送りしてでも、エンジン群を一新していたら、ここまでの差は開かなかったと思うのですけれどね。。。
次回は、そんなレパードの状況打開に追加されたグレードを取り上げます。
私的に、それは予想外の追加でありました。