
前回から続いての話、その後編の話となります。
カローラ/スプリンターへの設定から、約半年を経た1976年の末から1977年の年初にかけては、最大の懸案だった排ガス対策も若干の光明が差し始めたこともあって、規制対応を優先させることで、遅れていたモデルチェンジが一気に行われることとなりました。
マークIIのモデルチェンジを目玉に、クラウン、コロナ、カローラ/スプリンターはマイナーチェンジを実施という具合です。
前回ご紹介したマークII、カローラ/スプリンターのエクストラインテリアは、好評に推移したのでしょう。これらのモデルチェンジに合わせる形で、エクステリアインテリアは本格的に展開されることとなります。
それでは、前回同様にこれらについて紹介していきます。
2018/8/28 初代カリーナ末期のカタログ入手に伴い、記載を追加しました。
○5代目クラウン中期・後期(1976年11月~)

1977年6月のカタログより。
トヨタ初となる53年排出ガス規制適合車が発売された時点のものとなりますので、リヤウィンドー下側中央部のエクストラ・ラベルの注釈付き。当初エクストラインテリアを表すラベルが貼られていましたが、53年排出ガス規制適合車では、そのことを表すステッカーが代わりに貼られることとなります。他車も同じ貼り分け方で、規制の端境期の識別点となっていました。
クラウン初のエクストラは、ハードトップ系のスーパーサルーンに設定されることとなりました。
このマイナーチェンジでは、ロイヤルサルーンが従前の4ドアセダンのみでなく4ドアハードトップにも設定されたことと合わせて、上級グレードの充実が図られています。
この時点では、ロイヤルサルーンは4ドア&3ナンバー限定のグレードでしたので、2ドアと5ナンバーでは最上級という意味合いもありました。

中期型のエクストラはハードトップのみということで、5代目クラウン4ドアハードトップ(中期型)のシート画像を並べてみました。
上段から、
・ロイヤルサルーン(装華紋ベロア)
・スーパーサルーンエクストラ(高級モケット)
・スーパーサルーン(ストライプニットクロス)
・スーパーデラックス(高級華葉クロス)
セダンとハードトップの違いはありますが、前回の画像との比較が分かり易く、エクストラのシート地の仕様は、ちょうど前期型のロイヤルサルーンに近いものでした。ロイヤルサルーンの方は、その後長く続く柄入りとされることで差別化が図られています。
上級グレードが好まれるクルマらしく、エクストラは好評に推移。1978年2月のマイナーチェンジではハードトップ系に加えて、セダンにも設定されています。
この先は余談と思いつつも少しの(?)追記。
これを機にクラウンのスーパーサルーンは、エクストラも込みで認識されるようになった感が強いです。6代目クラウンでは、スーパーサルーンに5代目のエクストラ並みの内装仕様とすることで、エクストラを廃止します。ところが、後期ではスーパーサルーンエクストラが復活をし、ターボの設定を移す等、こちらに軸足が移ることとなります。
7代目以降、しばらくはスーパーサルーンとスーパーエクストラはやや近付きつつでの共存が図られることとなりますが、結局スーパーサルーンの方が先にグレード設定から落とされて、エクストラの方が長く残る結果となりました。
派生グレードが残って、派生元が消えるというのは珍しい経緯ですね。
その理由としては、ユーザーからしてみると、スーパーサルーンエクストラからスーパーサルーンへの代替って、ダウングレードを感じて抵抗があったのだろうと推測するところです。グレードの並びとしては、ロイヤルサルーンの下はスーパーサルーンの方が納まりがいい気もしますが、ユーザー要望の強いクルマを作る難しさの一端が表れているように思います。
○3代目マークII(1976年12月~)

1976年12月のカタログより。
3代目マークIIでは、新たに設定された最上級のグランデに注目が集まりましたが、エクストラも継続されています。設定グレードは、LXが落とされる一方、LGツーリングが追加ということで、LGツーリング、LG、L(ただしワゴンを除く)の3つとなります。

ロイヤルサルーンを差別化したクラウンとは異なり、エクストラの仕様としてはグランデの内装がほぼそのまま選択可能ということで、やや反則気味ながら、グランデとLGツーリングの内装を掲載。
LGツーリングエクストラだと、かなりグランデに近付く一方で、LGやLでは、キャブ&リヤリジッドでもあの豪華さが得られるという意味合いが出てくることになります。
グランデの企画意図としては、クラウンロイヤルサルーンの豪華さをマークIIの枠内でということでしょうから、クラウンやマークII内での相対比較では、興味深い点がいろいろありますね。
3代目マークIIは、1978年8月にマイナーチェンジを受けますが、エクストラはほぼ同じ内容で継続されています。

後期では、グランデと共にモケットに柄が入れられています。賛否は分かれそうな変更ですが、クラウンロイヤルに近付いたという見方も。同時に追加されたワインレッドの内装色だと、ハイソカー風でもありますね。
後期でやや珍しいと思えるのは、1979年に追加されたディーゼルで、4気筒ながらGLエクストラという名称で、エクストラインテリアが設定されています。
GLエクストラは、グランデの内装をディーゼルでも味わえるという意味合いに加えて、前回のコメントでいただいた、音・振の抑止効果という観点があったのかもしれませんね。
○5代目コロナ後期(1977年1月~)

上は1977年8月のカタログ、下は1977年10月に部分改良が入って改訂された後のカタログからとなります。
前期で設定されていても不思議ではなかったのですが、コロナは後期での追加となります。設定はGLのみ。
コロナのエクストラインテリアの特徴としては、セダンとハードトップで大きく仕様を分けていることとなります。エクストラインテリアの当時のオプション価格は一律5万円でしたので、その枠の中で仕様模索をしていたのかなというのが、一つの推測。
セダンがクラウン・マークIIに近いモケットシートを備えるのに対して、ハードトップは起毛ニットとなります。確証はありませんが、部分改良後のみ起毛ニットに模様が入れられたようです。豪華さへのアプローチとしては、優劣を付け難いところで、比較的見かける機会が多かったことも勘案すると、特にセダンでは両仕様が選べるようにするのもありだったのかもしれません。

比較用として、左にセダンGL、右にセダンSLの画像を掲載してみます。
こうして比べると、後期GLで採用されたローバックシート(3代目マークIIとの共用?)の採用が印象の差として大きいように思います。これにエクストラインテリアも追加すると、同じGLでも前期とは別のクルマのような内装となりますね。
前述のとおり、コロナとエクストラは、ユーザーとの相性も良く、他車比でも高い率で売れたように思いますが、次世代では当初エクストラが落とされました。しかしながら、翌年にはコンフォートエクストラの名で、ほぼ同様の仕様が特別仕様車として復活しています。やはりこの種を希望される方が多かったということなのでしょうね。
○初代カリーナ後期(1977年1月~)

上は新設定のエクストラインテリアが見開きで登場する1977年1月のカタログ、下は1976年6月のカタログからとなります。
末期を迎えていたカリーナにもエクストラインテリアが追加されていました。設定はスーパーデラックスとSTとなりますが、何故かTTC-Lは選択不可でした。
上下ともに1600STの画像ということで、比較は容易かと思います。シート地の変更と共に、シート形状もハイバックからローバックタイプに変更されています。末期のテコ入れということからか、他車のような内装のカラーコーディネート化は導入されず、外装色もブルー、レッド、マルーンの3色ということで、前編でお送りした内容との中間の様相でもあります。
この約半年後のモデルチェンジでは、エクストラインテリアは設定されず、新設定のSEに昇華した形となりますので、そこまでの過渡期という見方が出来るかもしれません。
○3代目カローラ/スプリンター中期・後期(1977年1月~)

先ずは、1977年1月のカローラセダンとハードトップのカタログから。
前期で設定されたエクストラは、中期以降では、仕様が変更されて、豪華な印象がさらに強くなりました。

インパネ画像の比較。
上がハイデラックスで、下はハイデラックスエクストラ(ウッドステアリングとシフトノブはオプション)。ウッドパックの追加が効果的で、印象は大きく異なってきます。
内装画像は、比較しやすい画像はなかったため、近い画像を列挙。
上から順に、セダンハイデラックスエクストラ、セダンGSL、セダンハイデラックス、ハードトップハイデラックス
このマイナーチェンジにより、ノーマルグレードのシートもニットテープヤーンや通発レザーから、ファブリックを主とするものに変更されています。
カローラでは、フロントシートの形状変更に加えて、リヤシートの形状変更も追加仕様に含まれています。ノーマルグレードとの比較はもちろん、前期エクストラとの比較でも、より豪華に映るポイントでしょうね。
中期以降では、新たにクーペやリフトバックでもエクストラが選択できることとなりました。

1977年1月のカローラクーペのカタログから
カローラでもこの時からクーペが選べるようになりました。
ただ、クーペには、レビン系の復活という大きな話題があったためか、エクストラの扱いはセダン・ハードトップより小さいというのが面白いところ。クーペだと、豪華より走りということなのでしょうね。
設定は、前期で選択可能だったSLが落とされて、GSLとハイデラックス(スプリンターはGSとXL)のみとなりました。
シート生地やカーペットは前期とほぼ同級と見受けますが、こちらもエクストラのみのシート形状の変更が大きいように思います。シート生地がレザーからファブリックに変わるのに合わせる形で、シート形状もヘッドレスト一体から別体であるとか、リヤタイヤハウスをカバーするものに変わる過渡期だったとも言えます。
その他にチェイサーにも設定はありましたが、別ページで紹介されるほどではありませんでしたので、省略。
ここまででも結構な長さですが、ここからはやや視点を変えつつで。
これだけ一気に設定したのですから、当時のインパクトとしては大きいものがありました。
当時のトヨタの乗用車系の大半に設定されたのですから、フルラインエクストラインテリアとも呼べるものとなったのです。
で、これらシリーズを取り上げる際には、この色のことにも触れないわけにはいきません(笑)。もちろんその色とは、エクストラカッパーメタリック(473)
3台の画像はFavCars.comより
画像の都合で、別の色にも見えますが、一応同じ色となります。
この色は、ロイヤルサルーンやグランデといった更なる上級を除けば、エクストラインテリアのみで選択可能ということで、特別感を強調する設定ではありました。外装ではエンブレムが備わるとはいえ、この色なら、エンブレムを確かめることなく、間違いなくエクストラとなるのですから。カタログでも、この色とセットで紹介されているものが大半ですね。
フルラインエクストラインテリアは、フルラインエクストラカッパーとも同義なのです(笑)
こうした殆どの車種で選べる色って、スーパーホワイトII(040)を除けば、90年代のダークブルーイッシュグレーメタリック(183)ぐらいだと思います。
こうした設定をすれば、当然、この色の比率は大きく上がるわけで、街中には、茶色のクルマが溢れることとなりました。特に、クラウン・マークII・コロナでは見かける機会が多かった記憶があります。
この色自体は、2代目のカリーナ/セリカでは当初GTとSEに設定された後、マイナーチェンジ以降では広く選択可能となりましたから、完全リンクとも言い切れないのですが、まぁセットとしてよいと思うところです。
もう一つ、1976年末の変更では、内装のカラーコーディネート化が広く採用されています。
それまではシート生地やドアトリムの色は変えても、ステアリング、インパネ、シートベルト等は黒ということが殆どだったのですが、この時以降、各部品は内装色で統一されることとなったわけです。もっとも、今はまた、コスト縮減の観点から黒のみに戻されていたりもしますけれどね。
このカラーコディネート、それまではどちらかといえば傍流だったブラウン内装での効果が大きくて、エクストラインテリアをより効果的に映すことに寄与していました。内外装のデザイン自体は、排ガス規制前と大きな変更がされていないとしても、内装を見た時に確実に新しさを感じさせるものがあったのです。
長くなりましたが、ここまでの全てがエクストラインテリアのインパクトとしたいところです。
このインパクトはトヨタのみに留まらず、他社にも波及することとなりました。
日産(スカイライン・セドリック/グロリア)、三菱(ランサー)、マツダ(ルーチェ)、ダイハツ(MAXクオーレ)あたりは、名称・仕様共にトヨタの仕掛けたムーブメントに乗ったのだと認識しています。
エクストラインテリアは、先に書いたクラウンを除けば、標準グレードに吸収される形で、比較的短期間で収束していきます。その後は、特別仕様車として設定されることも多かったですけれどね。
思うにこのエクストラインテリア、排ガス規制への適合に追われてモデルチェンジが伸びていた時代に、過渡期の商品力向上を担ったということなのかもしれません。そうした点では、同じく新世代エンジンへの繋ぎとなった初期ターボと似たものを感じたりします。
考えようによっては、内装の仕立てや色遣いというのは、クルマの商品力を形作る上で大事であるという見方が出来るかなと。
また、ここまで書いてきたとおり、内装の仕立て、特にシートに関しては、大きな変異点をこの時期に見出すことも可能だったりします。
何より日本人の多くが考える豪華な内装をイメージ作ったのはこの時だと思うわけです。80年代に起こるハイソカーブームというのは、豪華な内装を特徴としていましたが、その豪華さというのは間違いなくここが端緒であると言えます。その後、長い時間を経過しましたが、現在もクラウンロイヤル、カローラアクシオ、アルファード/ヴェルファイア等のモケットシートには未だに続く伝統を感じたりもします。
そんなこんなでこの話、お題としてはエクストラインテリアという一見とても狭いスポットなのですけれど、俯瞰して見れば、色々な視点から語れる話だったりもするのです。