2014年05月20日
・展着剤について、先日みんともさんの日記で展着剤が出ていて「有機リン系殺虫剤の乳剤に展着剤なんか入れるんかやぁ?」と思って調べてみた。とは言え、結論から言うなら、それは組み合わせOKの仕様なので、私がそれに対してとやかく言う気はなくて、勉強って意味でね。まず大前提として、界面活性剤による付着効果は実験によると「下がる」そうである。普通ワックス層(クチクラだっけ)が撥水性なので、界面活性剤で親水性を得れば付着量が増えそうだが、実際は撥水状態の方が水滴が大きくなって薬液の保持量が増えるのだそうだ。まあ、植物の形やワックス層の強さで異なると思うので、垂直に立ってる稲なんかはどうなんだろうね?ブドウだとない方が付く。元から撥水力が低いのだそうだ。
・では有機リン系の殺虫剤と混ぜてメリットがあるか?これ、スミチオンの説明に「残留して食べた虫なども殺す、忌避効果」がうたわれており、実際残留農薬検査でこれは検出され問題になるので「残る」っちゃ「残る」。浸透性があるとも言ってるし、ガットサイドSのようにペーストに塗り込む事も出来る。てか水和剤は粉末なので、その状態だと確かに残ると言えるし、書いたような効果もあるだろう。しかし一般に有機リン系はガス化して効く感じが強く、接触しないでも揮発ガスで効果があると感じている。まあ、虫に接触すると効果発現が早まるので、恐らく速やかに動物細胞にも吸収されるのだろうが、直接当てるなきゃダメって感じでもないなぁ。そこらへんはサリンやVXと同じだろう。そして、乾燥状態になると、ほとんど毒性は出なくなると思っている。つまり、乾燥状態で植物をカバーしてもほとんど殺虫効果はないだろうし、接触毒として虫が弾くから効かないって事もあんまり無いとは思う。ま、おまけでその機能があっても邪魔ではないぐらいか。あとは微少な害虫に対しては薬液カバー率があがるのでメリットはあるという意見もある。
・ま、しかし、それ以上に今ほとんどのスミチオンは乳剤だ。水和剤もあるんだけど、それは展着剤なり他の乳剤と合わせて使う前提でのレシピ、やっぱり乳剤化した方が効果は出るとメーカーは考えているようだが、乳剤に展着剤ってのは過剰というか重ね掛けになりゃせんか?という気もする。
・で、これらを調べて居て、いい勉強になったのがデランと展着剤(うちの使い方だとマイリノー)。梨の黒斑病に登録があるデランだが、これは表面張力を上げて耐雨性を高めたために、カバー率が低くて風媒病には逆に効果がなかったが、展着剤を入れたら発病が3~12%(1/30~1/8)に下がったという実験データーがあった。おお、ブドウだと入れなかったよ、ヤバイじゃん!となったが、付着量は1/6とダダ落ちである。雨に対してはとことん弱くなっているが、元が強いからなんとか持ってるかな?って所だと思われる。そしてブドウで怖い晩腐病は雨媒病なんで、ほんとどうなんですかね?もう一つもの申すと、デランは逆に耐雨性を意識しすぎてると思う。使った人は分かるだろうが、デランフロアブルは混濁液が濃すぎて薬液量が外から見られないほどだし、開封後内部で固形物がすごい発生してフィルターに詰まったり溶け残ったりする。要は濃すぎるんである。これが展着剤を入れる前提での物だったらブドウの場合は邪魔なので濃度1/2にして投入量を1/3にしても良いという事になりゃせんだろうか?同時に使うミクロデナポンはカーバメート系だから別にカバー率とか言わんし。
・ちなみに・・・展着剤で私が一番信用していない物がアプローチBIで、こいつが悪いってんじゃなくて、これを入れる防除でトラカミキリが死なないという事があるんだが、実験を見ると確かに浸透力は上がっているみたい。実際、秋に使えば効果あるよって人もいる。そのアプローチBIならジベに使えば効果あるんじゃない?と以前から思っていたら、なんと登録が追加されていた、と思う。いつもこいつの適用みてる訳じゃないし。んで、これが面白いのは、ジベだとタブーの降雨を前提に考えられている事。注意書きに「雨が降らなかったら房が伸びないから、使用適期を外すな」という意味不明な文章があるのだ。雨が降るなら普通やんないし、適期にやっての話だろ?と思うんだが、いい言い訳が思いつかなかったとしか考えられない。んでも、気象条件が最悪の年にジベやんなきゃいけない!って事になったら、アプローチBI入れて見るってのも一つの手かなと。
・仕事は朝遠方デラ園、苗木園、スチューベン園を消毒、背負い噴霧機がつまって時間がかかった。先日入れたフィルターどころか、その下の元のフィルターまで全部詰まっていた(が、ノズルには流れなかった)。原因は消毒タンクにしているドラム缶が錆びて汚れが大量に出たからで、これは前前から問題だと思っていたが放置していたので、今日は洗って乾かして、後で塗装する予定。ま、一番いいのはポリのタンクにする事だが、あれ最近売ってないんだよな。なぜ水タンクではなくドラム缶を愛用しているかと言うと、水タンクは吸い残しが多く軽トラの荷台だと安定させるために無駄に荷台を占有し、200リットルサイズの物が割高で買う気がしないからである。ま、それでも200リットルサイズなら小さいし、一個買ってもいいかもな、500リッターは3個もあるんだが。
・デラのジベの花粉チェックは明日以降でBA4という物だったが、今晩から雨なので明日の雨上がり以降になるし、優先は再処理かな、こっちは半日仕事だし時間的に本来は今日やってるべき作業だし(これまた雨のため延期している)。という事で時間が妙に空いたので、畦畔の草刈やって巨峰の房ごせをやって、最後にジベ処理した木に水散布しておいた。アストロの背負い噴霧機はへんな癖があって、時々蓄圧が全く働かなくなってレバー押してる間だけ噴射したりする。その場合、液を全部使い切って空気を吸うとピューピュー言いながら復活する。多分加圧タンク室の弁がなんか噛んでるんだと思うが謎だ。巨峰は摘房と新梢の振り分けを兼ねていて、今やると効率いいなーと思う。とは言え、それほど早く進む作業でもないので、ジベ処理に余裕がなければ無理してやれとまでは言えない。あと少しすると4倍ぐらい手間になるんだろうけどね。今頃第一支線が動いているのを見つけて修正など。
・ワイナリーに本を届けるついでに、新リリースのマスカットベリーAの2013を買ってきた、試飲した印象だと醸造の人が言うように果実味があって酸味がすっきりとした軽くて飲みやすいワインだと思う。あと、メルローが在庫を時系列で2007,2008,2011,2012(だったと思う)で並べていたので比較試飲したが、5年前の2007はちゃんと味が丸くなっていて成熟したのを感じる。最新の2012はまだ要素がバラバラな印象を受けるが、若い活気があっていい。2008はとある所で気象に恵まれなかった年と聞いたが、そのせいか、糖やタンニンが薄く酸だけ目立つような感じもしたが、若いワインと言われたらそうだと思ってしまいそう。最近になってやっと、メルローのワインを試飲するとグラスが欲しくなるぐらい美味しく感じられるようになってきて、ここのワインのキャラも分かって来た気がするが、本当に素直というかブドウをそのままワインにしましたって感じがする。作った感がなくて、ブドウのあるがままを醸造したというか、そういう言葉はありふれているんだろうけど、結構難しいと思うのだ。醸造手が見えないって訳でもないし、ワインになって変わる要素もあるし、ブドウそのものと言ってもジュースとか果実味って訳でもないし、その年の出来の一番いい形を表現させてあげるって感じかなぁ。これ、農家さん、すごい嬉しいはずだよね。
・あとはピノグリの畑で作業してたので、ちょっと見てきた。ピノグリは最近栽培がはじまった品種で、昨年末にやっと残りの苗が届いて全部が埋まった程度である。割と礫質の平地の低い場所に植わっているが、生育が盛んで合っているとは思われている。ただ、今年は萌芽の不発というか、結果母枝じゃなくて根本からヒコバエみたいに出てきている芽が多い木が散見された。食用の感覚からすると、何故こんな陰芽が出るんだ!?って感じだが、もうモヤシのようにわさわさと出て、当然上の方の生育が悪い。まあ、モヤシかきとれば追いつくだろうけど、ピノ系は頂芽優勢とかないんだろうか?水分不足でオーキシンが登りきらなかった?ここのワインの特徴はブドウそのままと書いたが、味の特徴としては酸が綺麗というのが言える。比較的標高が高い所で寒いので、酸が成熟しても残りやすく、そのシャープではつらつとした酸味がここの個性だ。うちのリースリングは全部の苗が発芽、今年は生育させるべく房は取って時々潅水して成長を見ている。
Posted at 2014/05/20 19:44:40 | |
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