
私と車のつきあいは「クラウンRS」が原点と書き始めたら、想い出がとめどなく沸き返ってしまいました。
親父が買ったクラウンは中古の中古だったので、もちろん手元にカタログはありませんでした。でも便利な時代になり、ずっと後になってネットでカタログの復刻版を見つけました。親孝行のつもりで親父にプレゼントしましたが、「本当にもらっていいのか」ととても喜んでくれました。その時スキャンしたものが私の手元にも残っています。

表紙です。
驚いたことに、当時(1955年)のカタログは写真ではなくイラストです。
特徴あるフロント・ウィンドウには真ん中に支柱があります。まだ1枚の曲面ガラスが難しかったのでしょうが、後期型では支柱がなくなりました。

裏表紙 仕様表
最高出力48HP 最大トルク10kg-m
因みにいま乗っているBMW AH3は340PS、45.9kg-m
まさに夢のようなスーバーカーです。
トヨタはまだトヨタ自工とトヨタ自販に分離していました。

インパネはプラスチックではなく、鉄板です。
速度計の他に4つ付いているメーターは、水温計、燃料計、電流計と油圧計だったと思います。
インパネはシンプルです。ラジオもカーステレオも温調も何もありません。
注目は頁右下の写真。初めて見る方も多いでしょう、腕木式の方向指示器です。ハンドルスイッチを入れると前後扉の間(Cピラー)から腕が上がるとともに、ランプが点灯します。寿命が短くなるのでランプを点滅させるという発想はなかったのでしょう。カタログには、「自動的にウインカーが復元します」とありますが、うちの車はランプが消えても腕は落ちないことがあり、後席の窓から手を出してたたき落とすのが私の役割でした。

クラウンRSの最大の特徴は、観音開きドア。後ろのドアが後ろ側を支えに前から開きます。


この頃は「堅牢なシャシー」が大事な謳い文句。
舗装路が少ないばかりでなく、悪路は岩が出て床を擦ることさえも結構ありました。
シートはいまとは作りが違い、ふんだんにバネが使われています。

エンジンです。
OHV(オーバーヘットバルブ)で、48馬力であることを誇っています。

堅牢なフレームに載った車体というのが、当時のセールスポイント。

懸架装置
クラウンの懸架装置は、かなりおごったものだったようです。
部品の説明

スターターが付いていることを自慢した時代ですが、このスターターは力が弱く頼りないものでした。
トランクにはクランク棒というものが標準装備されていて、スターターでエンジンがかからないときは、クランク棒を取り出し、車の前からエンジンの軸に差し込んで、ゆっくり2回転くらいさせた上で腰を入れ、エイヤッと引き上げるとエンジンが手動でかかるという仕掛けです。
この始動方法の信頼性は高く、母は結構めかした格好をしながらクランク棒を使ってエンジンをかけていて、その技を自慢にしていました。

もちろんMT(マニュアルトランスミッション)。
新技術のシンクロメッシュでダブルクラッチを使わないで済むというのがウリでした。

後輪は板バネ。
当時の道路事情では、致し方ない選択でしょう。

定員は前席3名、後席3名でフラットなベンチシート。
カタログに「フォード並の大きさです」と謳うところは時代を感じます。

カウル・ベンチレーターと三角窓
エアコンが発達したいまでは見かけませんが、当時のベンチレーションは走りながら外気を取り入れるもので、まだ外気が心地よかったこともあり快適な装備でした。
中でもカウル・ベンチレーション。ダッシュボード下のレバーを押すと、フロントウィンドウ前の空気取入口が開いて、足下に涼しい風が入ってきます。非常に効果的な装備でした。

サイドブレーキは運転席の右側で、ベンチシートと扉の間にありました。
標準では、ラジオもヒーターもありません。
大人6名が乗って、とにかく走るということが大切であって、その他の装備は必要という発想もなかったでしょうし、お金もなかったのでしょう。
60年前の車がどんなものだったか知っていただきたくて、長々と書いてしまいました。
60年前の我が家の車 いまの私の車
トヨペットクラウンRS BMW ActiveHybrid3

最大出力 48HP 最大出力 340PS
最大トルク 10kg-m 最大トルク 45.9kg-m
60年間の進歩はすばらしく、つくづく良い時代を生きたと思います。
今後にも期待しています。
Posted at 2015/08/02 13:24:34 | |
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