
みなさんが始動されたので、私も仕事始めならぬ阿房始めに、昨日(1/5)出かけてきました。
今回も行き先が決まらぬまま走り出し、御殿場から箱根に登り、箱根スカイライン、芦ノ湖スカイライン、伊豆スカイラインとスカイライン巡りをしようかなとも考えていましたが、前回三保の松原を袖にしたことが気にかかり、そちらへ向かうことに決めました。
国道1号を西へ、下道ドライブです。と言っても、沼津バイパス、富士由比バイパスと続き、制限速度60km/hが有名無実の快適道路が続きます。
左側に駿河湾を望んで進んでいくと、興津(おきつ)が近づきました。
阿房列車の内田百閒先生は、旅先の宿屋の名前を文中に記さないとしていながら、初めてその禁を破ったのが興津「水口屋」で、第2編の「区間阿房列車」で名前を明かし、遂には「時雨の清見潟(きよみがた) 興津阿房列車」まで走らせています。
年末に興津阿房列車を読み返していたので、これは素通りできないとバイパスを下りて、興津の町の中は東海道を進みました。

興津は大正天皇が皇太子のとき、清見寺に泊まって海水浴を楽しまれたことがきっかけで、多くの政界人が別荘を構えたり、宿屋に逗留したというかつての高級リゾート地です。
まずは、百閒先生お気に入りの水口屋

東海道に面した入口です。
現在は静岡財界の有力企業「鈴与」が所有して研修所にしていますが、「水口屋ギャラリー」と称して無料で一般公開しています。

門の脇には、由緒を示す石碑が。
昭和32年静岡国体の際に天皇皇后両陛下がお泊まりになったのを始め、宿泊客には、高松宮殿下、三笠宮殿下、秩父宮殿下と皇族方が続き、岩倉具視、原敬、浜口雄幸など政治家が紹介されているものの、偉そうに泊まられた内田百閒先生はまったく触れられず、辛うじて師事した夏目漱石が出てくる程度です。
う~ん、とんでもない世界だ。
水口屋を出て次に行ったのは

東海名区 巨鼇山(こごうさん) 清見寺(せいけんじ)
明治時代の皇太子(後の大正天皇)が海水浴のため逗留したところです。
東名高速を西に向かうと、清水JCTの手前で「清見寺トンネル」という名前を見ますが、これがその清見寺です。

明治時代に軍事上の切迫した事情に追われ建設を急いだ東海道線ですが、狭隘な興津では用地確保が難しく、やむを得ず清見寺の境内を横断して作ったそうです。

そのお陰で、こんな写真が撮れます。

清見寺本堂

清見寺庭園

海側を眺めます。
かつては目の前まで海があり、寺の名前になった清見潟(きよみがた)と呼ばれたところは埋め立てられて静清(せいしん)バイパスも建設されました。昭和50年頃は西湘バイパスもそうですが、海岸線にバイパスを通すのが流行り、産業発展には寄与しましたが、保養地をみんなダメにしてしまいました。
静清バイパスの上に海が見え、その向こうが三保の松原です。
さぞや、すばらしい景色だったことでしょう。
坐漁荘(ざぎょそう)まで歩きましたが、清見寺からはすぐです。
本物は明治村に移築され、ここにあるのは再現したレプリカです。

坐漁荘 玄関
坐漁荘は最後の元老 西園寺公望(さいおんじ きんもち)が70歳~91歳まで過ごした隠居所。ご意見を伺いに要人が東京から興津まで訪ねてくるので、その宿泊所が水口屋だったという訳です。
何を伺いに来るかと言えば、次の総理大臣を誰にしましょうかというような、とんでもないご相談です。

1階居間
華美に走らず、質実さを感じますが、

例えば、障子の桟
縦の桟も、横の桟も、よく見ると面取りが施されています。
ほこりが溜まりにくいのと、桟が細く見える工夫とのことです。
しっかりと手がかかっています。

風呂場を覗くと、小さな風呂ですが、やはり高野槙(こうやまき)です。
窓の格子は竹ですが、中に鉄が通った鉄格子です。風情とセキュリティを両立させる細工です。

ボランティアガイドさんが、しっかり説明してくださって、今日は阿房自動車が阿房で終わらず、すっかりお利口さんになりました。
熱心に勉強したため、13時をだいぶ回っています。
お腹も空き、ここまで来ればもちろんでしょう、由比に戻って桜えびを食べます。

行ったお店は有名な「くらさわや」
由比の町から、狭い旧東海道を薩埵峠(さったとうげ)に向かう途中にあります。

店内の様子。13時半頃でしたので、なんとか入れました。

店の窓からも富士山が見えます。

桜えびかき揚げ定食。
桜えびのかき揚げ2枚を塩でいただきますが、頼めば天つゆも出てきます。
さすがにおいしかった。
富士山も見えているので、こちらに登ります。

由比と興津の間の薩埵峠
今回は由比から車で登りましたが、1台がやっと通れる農作業用の細い道で、さらに急坂です。

薩埵峠への道は右側です。登っていいものか、逡巡しました。
帰りは興津側に下りていますが、車で薩埵峠に行くなら興津側からを強くお薦めします。

薩埵峠からの富士山
駐車場からしばらく歩くと物見台があり、そこで撮ったものです。
粘りましたが、右側の雲はとうとうどいてくれません。

縦構図でも1枚
まあ、これで良しとしましょう。

案内板の説明にもありますが、薩埵峠からの景色はすばらしいですが、海側から東名高速、国道1号、東海道線が集中しているのに、左側には急峻な山が迫っています。この山が崩れたら日本の大動脈がマヒしてしまうので、大がかりな地滑り対策を継続中です。
それにしても、どう見ても危なっかしい印象です。

今回の走行記録
出発 9時30分
帰着 15時59分
6時間半も出かけていたのに、走行時間は2時間17分。
お勉強時間が長かったようです。
今回も三保の松原は棚上げのままです。
制限速度60km/hの下道を走って平均速度43.2km/hは、ちょっと速すぎるでしょうが、楽しく充実したドライブでした。
Posted at 2017/01/06 13:53:46 | |
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