
「ボスン!」
男はシートに座り、ドアを閉める
音がいつもの愛車と違う・・・
20分ほど前のことである。
お昼のチャイムがなり、女性職員はお昼へ
部屋には男と男の上司の二人が残った。
二人とも無言のまま仕事を続けていた
沈黙を破ったのは、男の上司であった。
上:「今日、お弁当持ってきてるよね?」
男:「持ってきてるよ」
上:「会社の近くでラーメンのおいしいところってないの?」
男:「あるけど、片道で20分かかるかなぁ」
上:「休み時間中に戻ってこれないじゃん」
男:「そだね」
パソコンにデータを入力しながらそっけなく答える・・・
しばらくして、上司が
上:「定食とかおいしいとこないの?」
男:「あるよ」 相変わらず そっけない・・・
上:「会社から近い?」
男:「近いよ」
上:「行かない?」
男:「えっ いまから?」
上:「そう」
男:「休み時間中に帰ってこれないじゃん」・・・・
・
・
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男は上司の愛車・ゴルフの助手席に座っていた。
その店は「マルシン」
会社から5分もかからない 洋食をメインとする定食屋さんだ
外観からはお店には見えない。
実際、男もこの店の前を毎日通勤していながら、3年間気づかなかったくらいだ。
もっとも、昔は赤い「営業中」の看板がこんなに新しくもなく、サビでぼろぼろの上、一年中おもてにでていたのであった。
しかし、このお店は評判がいい
男もこの店の「チキンカツ定食」が大好きなのだ。
お店に入り、テーブルに座る。
奥さんがお茶を持ってきてくれるが、上司はまだメニューとにらめっこをしていた。
「あれ?」 と上司・・・
「どしたん?」
「このメニューもあるじゃん」
「あるよ」
「おいしいの?」
「おいしいよ」
ふたりの目の前に、「らーめん」が並んでいた
上司は「らーめん」に「ごはん」に「オムレツ」である。
おとこは「らーめん大盛り」に「ごはん」である。
昨日、高岡で食べたばかりなのに・・・
ここは普通の洋食屋さんである。
しかし、ここのラーメンも また おいしいのである。
ラーメンの大盛り・・・
どんぶりが大盛り用ではないので、盛り付けはちょっとおおざっぱである
見た目的にはおいしくなさそう・・・
しかし! である。
むかし懐かしい中華そばでおいしいのだ。
シンプル イズ ベスト!
変にあれやこれやと弄った創作ラーメンよりも、こんなラーメンがおいしいときもあるのだ。
ずばずばと麺をすする男二人・・・
半分ほど食べただろうか
ここで男の箸がとまる。
おもむろに手にしたものは・・・
ラー油である。
途中でラー油をいれることで、和風らーめんが、中華風らーめんに変わるだ!
いっぱいで二度おいしい・・・
シンプルなラーメンであるが、シンプルゆえにこんな楽しみ方もできる。
「あ~ おいしかったぁ~ おなかいっぱい!」
上司も満足したようだ。
昨日のこってり、今日のあっさり・・・
ラーメンの奥深さに感銘しつつ、助手席に乗り込む男であった・・・
つづく
Posted at 2010/12/10 16:35:30 | |
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