
「ふぅ~」
男は深いため息をついた
洞海湾の潮風が心地よい
そう 男は若松のポンポン船に乗っていた
周りには部活帰りの学生、会社帰りのサラリーマンが雑誌や携帯を覗き込んでいる
この船は自転車も載せる事ができる
男は一台のロードレーサーに興味を持ったようだったが、すぐに周りの景色に視線を移した
快適な船旅も5分ほどで終わった。
船着き場からJRの駅へと歩く男・・・
男の視界に赤くはためく暖簾が飛び込んできた

ここはJR戸畑駅とポンポン船の船着き場の間にある「八福」さんである
「ここよってかん?」
男は同僚に声をかける。
「いいよ」
そう 男は今日も独りになれなかったのである
男は以前からこの店を知っていた
しかし、営業中にこの店の前を通る事が出来なかったのである。
お店に入るおっさん二人
店内は狭い
高齢のおじいちゃん、おばあちゃんが切り盛りをしていた
注文をする男
しばらく、同僚と仕事の話をしていた
「おまちどおさま」
男の目の前に、シンプルなラーメンがでてくる
美味しそうなラーメンである
あっというまにラーメンをたいらげるおっさん二人
「ご馳走様でした!」
店を出て、「どうだった?」と同僚に問いかける。
「あの値段であの味なら有りだなぁ」
同僚も満足していた様子だった
そうだろう
男が注文した「チャーシュー麺」は450円なのだ

味も申し分ない
男もかなり満足していた
一人ならおかわりをしていただろう・・・
しばらく会話も無いまま駅に向かって歩く男たちであった
一時間後、男はホテルの部屋で今日の会議の資料をまとめていた
「さぁ そろそろ行くか」
男は何かを印刷したコピー用紙をポケットに押し込んだ
小倉駅を右手に駅前を歩く
昨日とは筋がいっぽん違っている
そして、ちゅうぎん通りに出る
そのかどっこにお店はあった

「永楽」さんである
創業は昭和46年よいう老舗のお店だ
なのに、男はこの店は始めてであった
この男の情報網も大したことはない・・・
お店は横に細長い店内はカウンターだけである
男は携帯をいじっていた
「お待たせいたしました」
出てきたラーメンがこれである
九州の細めんはすぐにゆで上がるのであろう、混んでいなければ「お待たせ」というほど待たないのである
ここのラーメンもシンプルである
このラーメンもすぐに完食
「ご馳走様でした」
男は店を出て、道なりに歩いていく
もう一軒チェックしていたが、残念ながら営業は終わっていた
男はそのまま紫川のほとりを散策していた
二時間近く歩き回っていただろうか
端から見れば、デカイ図体のおっさんがうろうろしているのである
パトロール中のお巡りさんと何度かすれ違ったが、職質されることはなかった。
最も男もおどおどした様子はまったくなく、堂々と胸を張って(お腹をつきだして)歩いていたのである
また商店街に戻り、さらなるラーメンを求めたが、お気に入りで営業しているお店はなかった。
「しゃーない 帰るか」
ホテルに向かって歩く男・・・
また男の視線の先に、とある文字が
「テイクアウトはこちら」
男は案内看板に吸い寄せられる様に歩いていく
その看板の前、男は居酒屋の呼び込みのお兄ちゃんと話をしていた
「お待たせいたしました」
若い女性から品物を受けとる
「ごめん じゃましたね」と男
「いえいえ 次回はうちでお願いします」
若い兄ちゃんは笑顔で答えてくれた
ホテルに戻り、途中だった仕事を続ける男
そのパソコンの横には・・・
「餃子の王将」のテイクアウトセットが
仕事を終え、大浴場ですっきりした男
部屋に戻ると、「餃子の王将」の香りはが充満していた
男はこの香りを身にまとい、眠りにつくのであった。
つづく
Posted at 2012/06/01 12:08:39 | |
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