「さぁ 行くか」
男はポンとハンドルたたき、彼の愛車に語りかける。
彼の愛車は「すっ」と発進した。
もう10月の中旬・・・
18時を過ぎれば、あたりはかなり暗くなる。
そんな中、彼の愛車はヘッドライトを点灯させ順調に走りつづける。
しかし、いつもよりかなり遅い速度である。
そんな彼と彼の愛車を、つぎつぎと後続車が追い抜いていく・・・
それでも男は一向に気にする素振りもみせず、自分のペースで愛車を進めていく・・・
日中は汗をかくくらいの陽気であったが、日が沈むといっきに空気が冷たくなる
そんな冷たい空気も男には心地よいらしい
しばらく走ると、
レインボーブリッジが見えてきた。
しかし、夜なので、そのカラーを確認することができない・・
道路は少し上りになっている。
「カチ」 「カシャン」
シフトを繰る男・・・
「う~ん この足に伝わるダイレクト感がたまらないなぁ~」
男は呟きながら愛車を走らせた。
出発してから30分ほどたっただろうか・・・
男は愛車を左側に寄せ止めた。
「よっ!」
男は掛声を掛けて、愛車を持ち上げる・・・
ついた先は・・・
「ゑび寿」さんである。
そう 彼は愛車の「ラン」ちゃんに乗って走ってきたのである。
「ラン」ちゃんを店内から見える位置に置き、男は店内にはいる。
「ゑび寿」・・・
3か月振りだろうか・・・
男が店内にはいると
「いらっしゃいませぁ~」
「あらぁ お久しぶりですぅ~(笑」
っと 奥さんが声をかけてくれる。
男も「ご無沙汰しておりましたぁ~(笑」
と返事をし、カウンターに席をとった
「え? もしかしてご自宅から自転車できたの?」
っと お冷を差しだしながら奥さんは驚いている。
奥さんは男がどこの人間かは知っている。
男の住んでいる町から、このお店までは45キロほどであろう・・・
「いやいや 会社からですよ」
「メダボ対策にちょっと自転車始めたんです」
と男が苦笑いをしながら答える。
「この前、同好会のあのまるボウズの方が来られたんですよぉ(笑」
・・・・ みんな抜け掛けをしているようだ
客は男一人であった
男は、このあと奥さん、ご主人と10分くらい世間話をしていた
ラーメンの注文もせずに・・・
途中で奥さんが気づいて
「あっ 注文聞いてなかった」 「ごめんなさい」
別に男も楽しい話をしていたので、気にもしていなかった
う~ん 何しにきたんだ この男は・・・
まぁ それほど居心地のいい空間だったのだろう
でっ 仕切り直して、ラーメンを注文
でてきたのは・・・
「わんたんめん 大盛り、煮たまごトッピング」である
最近、男は「ワンタン」にハマっているらしい
小倉で食べたワンタンがいたく気に入ったようだった。
あのお店に比べれば、ワンタンの具は少なめである が、味はそこそこがんばっている
皮の部分も「ちゅるん」の喉にはいっていく
男がラーメンを食べ始めると、奥さんも気を使って話しかけてこなくなる
しかし、男が話をふると、のってきてくれる。
久しぶりの「ゑび寿」のラーメン
比較的コクのある魚介系醤油ラーメンである。
「あ~ 腹にしみるなぁ~」 と男はつぶやく
男は満足そうな笑顔を浮かべていた・・・
食べ終わると、また奥さん、ご主人と世間話が始まる
事故で、お店の前の道路が通行止めになり、開店休業になったとか
自宅で飼ってるにゃんこの話しとか・・・
楽しい時間を過ごしていると、「ガラガラ~」
奥さんが「いらっしゃいませぇ~」
他の客が入ってきたのだ
男はすっと席を立つ。
出発の準備をし、奥さんがお客さんにお冷を出し終えるの見計らってレジへ
「ごちそうさまでした」 と 料金を支払う
「ありがとうございました」
厨房からご主人の声が聞こえる。
「ありがとうございました」
「帰りは気を付けてくださいね!」
っと奥さんが気遣ってくれる
「ゑび寿」・・・
ここは「らーめん」だけではない なにか温かいものが感じられるお店である。
「らーめん」+αを楽しめる数少ないお店である
男は身も心も温まった状態で、「ラン」ちゃんを走らせる
空気が冷たいが、全然きにならない
逆にその冷たさがここちよい
30分後、ちょうど片道10キロを走り、無事、会社に到着した男であった
彼の顔には疲労感はなく、満足感が浮かんでいた
つづく
Posted at 2009/10/15 21:37:21 | |
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