春の足音といのちを探して

辛いとき、悩んでいるとき、もやもやしてるとき。
そんな時には、いつも車や自転車たちが傍に居てくれた。
アクセルを踏めば加速する。
ステアリングを切れば曲がる。
言葉は無くとも、対話は成立する。
週末の俺は、そんな対話を必要としていた。


出発した夜は、雲がほとんど無い明るい空だった。
普段は闇に隠れてしまう山の輪郭や雪形が、割とはっきり見える。

明るい月の光に包まれて、向かった先は丸3か月ぶりの北陸の地。
時は冬の終わり、春との狭間。
信州より一歩速いであろう、春の足音といのちを探しに。



朝一番に入場した目的地。
いしかわ動物園は、桜はまだ咲き掛けの春の陽気。
ぽかぽかお日様見守る陽だまりの下、動物達はグデていた。
陽気に眠気が誘われるのは、人も動物も変わらない。





その瞳は、何を訴えているのだろう。
ガラス越しの君の言葉は、俺には分からなかった。







食事は命の源。
カロリーメイトやサプリでも生きてはいけるけど、料理を食するのとは意味が違う。
異国の地で食べる食事。
その色は、ブラウン色。



旅の終わりは、いつもの数字とにらめっこ。
余剰給油分があったから、いつもより0.84L多い胃袋を持った君。
その針の動きと数字の増え方は、たった１L違うだけでずいぶん違ったものになる。
夏タイヤに履き替えてから、こうして二人で旅をするのはこれが今年最初。
これまでは、誰かしら友達も一緒に乗っていたから。
ちょっと胃袋は大きかったけど、でもやっぱり君は裏切らなかった。

4/1 639.0km 89773km SynergyF-1 @147円 36.20L 17.65km/L
対カタログ燃費達成率：122.6％(14.4km/L)
対タンク給油率：84.2%(43L)

燃費を取り戻す。
それは、俺と君の最後の約束。

春の訪れは、開幕の合図。
ここから、始めるんだ。
俺たちが織りなす最後のステージを。

さあ、連れて行って。
あの道のかなたへ。
低燃費という数字と共に。