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2021年01月24日 イイね!

【SS】君の名を呼ぶ時(4)

上野くんは、優しい。
私が彼について評価を与えるとき、最初に出てくる言葉がそれでした。
高原学校で一緒の班になった時は、バーベキューで火の番を担当してくれて、みんなの分を焼いてくれたことが、最初に意識した時でしょうか。
通学の電車の中で、上野くんのお友達と話していた時に、ふざけてでしょうか、その人が私に触れようとした時、身を挺して庇ってくれたことがありましたね。
通学の方向の関係もありますが、よく一人になってしまう時に、一緒についてきてくれたことも思い出の一つです。


 この日、食事を終えて会計をする算段になった時もそうでした。
「あ、ここは俺出しますよ」
「申し出はありがたいのですけど、それは無しで行きましょう。お互い変な貸し借りがあるとやりにくいだけですからね」
 男の人からすると見栄を張りたい場面なのかもしれませんが、それに甘えてばかりではいけないと私は思いました。
 なぜかといえば、これから同学年になるという事、それに尽きるわけです。
 私は、あくまで対等な関係でありたかった。
「それもそうか」
「学生も多いでしょうから、別も対応してくれると思います。それで行きましょう」
「了解っす」

 食事の後は、近くにあるスーパーに寄っていく事にしました。
 お互いまだ冷蔵庫の中は空っぽのようです。
「さて、せっかくですし、食材の買い出しして行きませんか?」
「そうですね。明日からはなるべく自炊しないと」
 学食もあるでしょうけど、やはり大学生たるもの自炊しないといけません。
 お昼は学校で食べることもあるかもしれませんが、朝晩は自分で作ろうと思っています。
 ここでも、上野くんはサッとカゴを持ってくれています。
 素なのでしょうけど、こういった所が嬉しい。

「自炊かぁ・・・自信ないなぁ、俺」
「あら、今までは料理やってこなかったのですか?」
「そうなんですよねえ。なかなかやる機会無くて」
「男の子だとそういうものなのかもしれませんね」
 恥ずかしそうに頭を書きながら答える上野くん。
 個人的な意見ですが、実家暮らしで自分で料理する男の子は珍しいのではないかと思っています。もちろん、興味ある子もいるでしょうけど、大多数ではないのではないでしょうか?
 上野くんも同じようですね。ちょっとだけ安心しました。
 なぜかって?
 女の子より男の子の方が料理できる、とあっては、悔しいじゃないですか。
 やはり、自分の作った料理を食べてもらって、『おいしい』と言って欲しいのです。
 ふふっ、女の子の夢ですね。

「うちのじいちゃんはめっちゃ料理やってたなぁ。釣ってきた魚捌いたり、良くイモフライとか作ってくれたし」
「釣りもやるのですね、おじいさま。上野くんもやっていたのですか?」
「一度だけ連れてってもらったことありましたけど、ぜーんぜんダメでしたねw 後は、釣り堀に家族で行ったことがある位かな」
「釣り堀ですか。おじいさまとは、どこで釣りを?」
「利根川ですよ。うちのじいちゃんは、川釣りをやってたんです。専用の冷凍庫があって、アユとかワカサギとかいろいろ入ってましたね」
「そうなのですね。私やったことないので、詳しくは分からないのですが・・・」
 そういえば、中学高校時代には、おじいさまの話をよくしていましたね、上野くんは。
 おじいちゃんっこで、よく遊びに行っていた、と話していたことを思い出しました。

「そうだ、虹口さんは、料理やるんです?」
「少しだけですけどね。こちらに来る前に、一人暮らしをするということで、母に基本は教わってきました」
 一人暮らしをするなら料理は必須ですからね。
 実家に居た頃は、お手伝いに毛が生えた程度しか料理はしていなかったので、こちらに来る前に教わっておいたんです。
「ベースがしっかりしてると大丈夫じゃないですかね。俺、それも無いんでw」
「ふふっ、なら一緒にお勉強しましょうか」
 その内、一緒に料理するようになったりして、なんて。
 部屋も隣ですし、おすそ分けから始まって、とか。
 いけませんね、妄想してしまいます。
「そうっすね。でもまずは生肉に触れるようにならないと」
「え?」
「いやー、生肉のあの感触が凄く苦手で。だから、とりあえず飯はキャベツとレタス千切っておかずにすればいいかなーって」
「あのですね、精進料理じゃないんですから・・・」
「ハムならまだ触れるので、それも入れればいいんじゃないですかねw」
「いやいや、ダメに決まってるじゃないですかそんなの」
「まあ、なんとかなるっしょ」
 ケラケラと笑っていますけど、それで良いわけないでしょうに。
 もっと食生活にも気を使ってもらわないと困ります。
 そうだ、私が作れば・・・。
「・・・なら、私が作ります。そんな食生活させられません」
「いやそんな、作ってもらうとか、手間かけさせるわけには」
「私にとって練習にもなりますから。おすそ分けだと思ってください。それに、味の保証もできないわけですし」
「う~ん、本当にお願いしてもいいんですか?」
「はい。腕は無いので、練習に付き合ってもらう形にはなってしまいますが」
「俺が自分で作るより遥かにマトモでしょうw」
「ふふっ、どうでしょうね?」
「じゃあお願いします。あ、でも食材の半分は出させてください。せめてそれくらいは」
「分かりました。早速お買い物しましょう」

う~///
改めて思い返してみると、私、とんでもないこと言ってます。
再会できただけでなく、隣の部屋で、料理まで作ってあげることになるなんて・・・。
なんだか、ドラマみたいな展開です。
でも、そんな関係も嫌ではない・・・かな。
いささか展開が早すぎる気がしないでもないですが、それとて私が望んだことです。
今は、隣に入れることが嬉しい。
きっと、私の居場所はここにある。
受験時代に覚えた心の寂しさは、今は既に無く、暖かさに満ち溢れています。
これもきっとあなたが居てくれるからなんですね。
『上野くん』



つづく
Posted at 2021/01/24 20:05:39 | コメント(0) | トラックバック(0) | SS | 日記
2021年01月15日 イイね!

【SS】君の名を呼ぶ時(3)

女の子と食事に行くというのは、人生初めての事だった。
それがまして、旧知の間柄だった相手なら。
当然、嬉しくはある。
嫌いな相手と長年の付き合いを持ったりはしないからだ。
ただ、この時は戸惑いの方が大きかった。
そりゃそうだろう。親しいと思っていたが、急に居なくなった相手と、大学でバッタリ会って、同じ学年同じ学科、それでもって隣の部屋と来たら、誰だって驚くだろう。
それに、ここで一歩間違えれば、彼女に嫌われたりしないか、という不安もあった。

彼女と再会して思い出したことがある。
それは、忘れていた彼女への好意だ。
彼女が通学の経路を変え、話す時間が無くなったことと、自身の受験勉強の忙しさで忘れていた感情。
再会した彼女と話して、楽しいと思える自分が居る。
この時間を失いたくなかった。

 様々な感情がせめぎあって悶々としながらアパートの踊り場で待っていた。
 どれほど時間がたったのだろうか。あまり待っていない気もするが、彼女が現れたことでその時間は終わりを告げた。
「お待たせしました」
「いえ、そんな待ってないです・・・よ・・・」
 彼女を見て、ふと息が詰まる自分が居た。
「あ、何か変ですかね?」
 それを受け、遙乃は、自分の服装を見回した。
「そんなことないです。虹口先輩の私服初めて見たので・・・」
 そう、私服を見たのは初めてだった。
 彼女との付き合いは、基本的に通学時間とイコールだった。それはつまり、基本的に学校の制服だったことを意味する訳で。
「そう言えばそうでしたね。上野さんは・・・ふふっ」
「ええっ、なんかおかしいですか?」
 何かおかしかったのだろうか?
 確かにあまり着飾った格好ではないが・・・。
「いえ、なんだか上野さんらしいなって。あまり着飾らないの、ホント良く似合ってると思いますよ」
「/// 虹口先輩も、可愛いと思います」
「ーーー///」
 二人して真っ赤になってしまった。
「その、ご飯行きましょうか」
「そ、そうですね」
 ごまかすように、俺は誘ったのだった。

 食事の後、彼女が話を切り出してきた。
「そうだ、上野さん。一つお願いがあるんですが」
「なんでしょう?」
 はて、お願いとは何だろう?
 あまり思いつかないのだが・・・。
「やりにくいかもしれませんが、名字か名前で呼び捨てで呼んでもらえませんか? それと、敬語も無しで話してもらえると」
「あ、さっき話していた同学年だから、ってやつですね。それなのに先輩とか呼ぶのも変な話になっちゃいますよね」
 言われてみればそうだ。
 確かに元先輩ではあるが、これからは同学年なのだ。それなのに、敬語で話していたり、先輩などと言っていたら、彼女が孤立してしまう原因となってしまう。
「そうです。全員に敬語で話していれば別ですが、それもやりにくいでしょう?」
 全員に対して敬語で話す・・・俺には絶対に無理だね。
 素でそうやって話している彼女ならいいと思うが。
「ですね・・・。二人でこうして話しているとつい出ちゃうかもですが、意識するようにします」
「今からでも名前で呼んでもらって良いですよ?」
 したり顔でそう話してきたが、当然名前で呼べるわけがない。
 俺にも名前で呼べる友達がいないわけではないが、当然全員男である。
 女性に対して名前で呼ぶというのは、それなりに特別な関係であるということだ。
 いつかはそうなってくれたらうれしいという気もするが、さすがにまだ早かった。
「う・・・。せめて『虹口さん』、で」
「ふふっ。ではそれでお願いしますね、『上野くん♪』」
「ーーー///」
 その笑顔はズルいと思う。

つづく
Posted at 2021/01/15 21:12:13 | コメント(0) | トラックバック(0) | SS | 日記
2021年01月09日 イイね!

【SS】君の名を呼ぶ時(2)

「へ?」
きょとんとした顔で、悠夜は振り向いた。
当初は誰だか分らなかったのだろう。ついこう言ってしまった。
「えっと・・・誰?」
「あ、ひどいです。そりゃまあ、久しく会ってないですけど」
「・・・もしかして、虹口先輩?」
「ふふっ、はい。私です」
「久しぶりですね。なぜここへ?」
「私も今日、信州大学に入学するからですよ」
遙乃は、入学式の式場を指さした。
「あ、浪人してたんですね。卒業以降の消息知らなかったんで、どうしてたかと思いましたが・・・。学部はどこへ? 人文とかですかね」
「ふふっ、あなたと同じですよ、上野さん。ここにいるということは、あなたも地質なのでしょう?」
「嘘だろ!?」
「ホントです。あの後、理転したんですよ」
「そりゃまあ、文系でもなんとかなる受験科目だったとはいえ・・・めっちゃ頑張ったんですね」
「ありがとうございます。あ、そろそろ行きましょう。入学式始まってしまいますよ」
「いっけね。行きますか」
「はい」
 二人は歩き出した。雪の舞う道を。

学科ごとの諸々の説明などが終わった後、二人は家路につくことにした。
「さて、終わったし帰りますか。スーツ姿は、息苦しくっていけないですね」
「あら、かっこいいのにもったいない」
「え?」
 驚いたように振り向く悠夜。
「ふふっ、何でもないですよ。帰りましょうか」
 それを見て、クスリと笑う遙乃。
 その場でクルリと回った遙乃は、理学部等の入り口に向かって階段を下っていった。

「そうだ、家どの辺です? 近くまで送りますよ」
 理学部等を出た所で、悠夜は遙乃に尋ねた。
「ありがとうございます。えっと、こっちの方ですよ」
 遙のが指さしたのは、概ね南の方向だった。
「おお、それだと俺と同じ方向ですね」
「そうなんですね。もしかしたら家近いかもですね」
「はは。知り合いがいないと思ってたので、それだと心強いですね」
「それ、女の子である私のセリフですよw」
「ですねw」
 談笑しながら、二人は徒歩で家路についた。

 大学横を流れる川沿いを下り、橋が架けられた所にあるT字路に着く。
「あ、私こっちです」
 遙乃が指さしたのは、橋と反対側の内陸方向だった。
「そこも一緒ですね。俺もこっちです」
 この区画には、アパートが比較的多いので、そのどれかだろうとお互い思っていたようだ。
「この辺りいくつかアパートありますし、本当に近いのかもですね」
「実は同じだったら笑いますね」
「そうですねw」

 そのまま歩き続けると、二人は一つのアパートに辿り着いた。
「私ここのアパートです。送ってもらってありがとうございました」
「・・・」
「あの、上野さん?」
 遙乃は、無言の悠夜に首をかしげながら訪ねた。
「俺冗談のつもりで言ったんですけどね・・・」
 少しの間の後、悠夜はボソッとつぶやいた。
「というと?」
「俺もここのアパートなんです」
「うそ!?」
「ここ微妙に斜面になってるし、帰り登りで苦労するより朝登りで苦労する方が良いなと思って、スーパーとコンビニも近いここにしたんですが、まさか同じだったとは」
「あらあら・・・。私もアパート選びの時、まったく同じこと考えてました」
「まさか・・・」
 悠夜は、アパートの2階へと向かった。
 立ち止まった部屋の表札を見ると、そこには『虹口』とある。
「ここまで同じだとは・・・」
「え、上野さんの部屋、ここの隣なのですか?」
 追いついてきた遙乃が聞いた。
「引っ越しのドタバタで表札出すのを忘れてたんですが、まさかこんなことになっていたとは」
「だから気付かなかったんですね・・・。でもよかった」
「なぜです?」
 胸に手を当て、一呼吸付いた遙乃。
「先程、上野さんが言ってましたけど、やはり異国に一人、と言うのは少し心細かったんです。まして、私は浪人していたので、みなさんより一つ年上ですし。隣と言うのは本当に驚いていますけど、それでもやはり、知っている人が近くにいてくれるというのは心強いのです」
「そうでしたか。でもまあ、俺にできることなら任せてください。コメの買い出しとか、ストーブ用の灯油買いに行くときとかw」
 照れ隠しか、ガッツポーズを取る悠夜。
「ふふっ。その時はお願いしますね」
「ひとまず、部屋戻って着替えましょうか。よかったら、この後一段落したら、晩御飯でも一緒にどうですか?」
「そうですね。ご一緒します」
「では、17時ごろでどうでしょう?」
「夕食にはいい時間ですね。そうしましょうか」
「ではまた後で・・・じゃなかった。連絡先交換しませんか? もし家空けてたら困りますし、今後使うこともあるでしょう」
「あ、忘れてました。連絡先知らないと今後不便ですものね」
 悠夜と遙乃は、お互いに携帯を取り出した。
「考えても見れば、お互い見知った時間は長いのに、未だに連絡先知らなかったんですね」
「確かに。上野さんが中一の頃からですし、5年はあったはずなんですよね」
「やはりあの頃は1学年の差が大きかった、と言うことなんでしょうね。最後の方は、ほとんど話せなかったですし・・・」
 最後の言葉は、少し小さく話した悠夜。
「でも、これからは同じ学年ですから」
「ははっ、何か変な感じしますね。ああ、他意は無いですよ」
 慌てて取り繕う悠夜。
「大丈夫ですよ。年が違うのに同じ学年になるという違和感は、私もありますから。ある意味、浪人生の特権です」
「・・・そうかもですねw」
「さて、踊り場で話していては邪魔になってしまいますね。戻りましょうか」
「ですね。ではまた後で。俺ここで待ってますから」
「分かりました」
 そして、二人は各々の部屋に戻っていった。

つづく
Posted at 2021/01/09 17:22:27 | コメント(0) | トラックバック(0) | SS | 日記
2021年01月06日 イイね!

【SS】君の名を呼ぶ時(1)

誰しも、パートナーを名前で呼んでいる事だろう。もしくは、愛称とか。
それは、名前というものが、パートナー個人を指す呼び方であるためである。
しかし、名前で呼ぶということは、一定の親密さを表すことでもある。例外もあるが、一般には、初対面の人間をいきなり名前で呼ぶことはしない。
では、俺がパートナーである彼女を名前で呼ぶようになった時は?
思い返せば、俺達の関係が始まった時だった。


彼女は、元々俺の先輩だった。
両親が教育方針で揉めた結果、受けられる所も受けられなくなるからと、消極的な理由で受験した中高一貫校。
彼女は、そこの1学年上の先輩だった。
この学校では、中学時代に高原学校、世間一般的な言い方をすれば林間学校かな。そこに1年生と2年生の合同で行く習慣があった。ここでは、班行動をする場面があり、そこで同じ班となったことが、彼女と初めて話したきっかけだった。
彼女との接点は、案外多かった。
彼女は文芸部で、俺はパソコン部。共に、パソコン室を使う部活であったこと。
通学に同じ私鉄を利用していたこと。
お互い話すようになるまでは、さほど時間はかからなかった。
電車の中で話すようになり、往路や帰路の駅までの道で、見かければ声をかけることもあった。
帰路のコンビニでプリンを買って、駅で食べたのをよく覚えている。


だが、こうした時間は長く続かなかった。
中高一貫校と言うだけあり、本校は進学校だった。それはつまり、学年が上がるごとに勉強が忙しくなっていくことを意味する。
そして、それまで同じルートで通学していた彼女は、「勉強のために、通学時間を減らしたい」と言って別のルートで通学するようになり、学年が違うこともあって、いつしか彼女を見かけることすらなくなっていった。
最後に話したのは、彼女の卒業式の日だった。
下学年が全員そろって卒業式を終えた卒業生を出迎える習慣があり、それが最後に話したときだった。
「卒業おめでとうございます」
「ありがとうございます」
ありきたりなその言葉が、最後の言葉だった。


そうこうしている内に、自分も勉強で忙しくなっていく。
既に、自分にはやりたいことがあった。
『地質学を学びたい』
それが自分の決めた進路だった。当時成績が追い付いていなかったため、かなりの難関であったが、無事希望していた信州大学へと合格することができた。
その忙しい時間の中で、俺は彼女の事を忘れていった。


そして迎えた入学式の日。
雪国らしく、入学式のシーズンには、桜でなく雪が舞う、この信州の地で。


声を掛けられ、振り向いたその先には、彼女が居たんだ。




勉強していい大学に入ること。
当たり前のように教えられてきたその考え方は、私にとってよく分からないものでした。
音楽が好きでピアノを習ったり、文学が好きで文芸部に入って小説を書いたり、いろいろしては来ましたが、そのどれもがあくまで趣味の範疇であり、そこから将来のビジョンが見えていなかったのです。
『自分が何をやりたいのか。何のために進学するのか』
そういった道しるべが無く、ただ漠然と文系に進んでいた私は、未来というものが良く分からなかった。
その結果が、受験の失敗と言う事実として、私の目の前に立ちふさがりました。
ただ単に、数学や英語、現代文や古文漢文等をやっているだけでは、大学に受かることはできなかった。
それも当然ですね。私には目標というものが無かったのですから。
そうして進路に悩んでいた時、思い出すのは一人の男の子の事でした。
地震学について、地質学について。
話している内容は、私にはあまりわからないことばかりでしたが、それはもう楽しそうに、目をキラキラと輝かせながら話すその様子は、とても印象に残っていました。
だから、その時私は思ったんです。
彼にもう一度会いたい、と。

心機一転して、私は理系へと転身することにしました。
もちろん、それは非常に困難なことであると理解していました。
幸い、彼が望んでいた信州大学の地質科学科は、文系の私でも受験可能な試験項目でした。
その道の先に、彼が待っていると信じ、一年間、必死に勉強して、遂に合格を勝ち得たのです。

そして、雪の舞う入学式の日。
式場となるアリーナの理学部コーナーへと向かう人の列の中に、見知った背中を見つけました。
直しきれていない癖毛は、昔見たままで。
どこか落ち着かない様子でキョロキョロとしているその姿は、懐かしさを覚えます。
彼と確信した私は、入試以上に緊張しましたが、その背中に声を掛けました。




『おひさしぶりです。私の事、おぼえていますか?』






つづく
Posted at 2021/01/06 19:42:12 | コメント(0) | トラックバック(0) | SS | 日記
2021年01月04日 イイね!

虹口家の人々

これは、以前投稿した『虹口舞衣の消失』の設定集です。
まあ、それに限らずうちの世界における基本設定みたいなものですが・・・。
知っとくと、うちのホームページのお話を少し楽しめるようになる、かも。

【世界構造】
多元並行時空となっており、いわゆるパラレルワールドが無数に存在する。
そのため、少しだけ違いがある世界から、根本的に歴史が異なる世界まで、様々な世界が存在している。『虹口舞衣の消失』では、その内の3つの時間流世界が登場する。

【登場人物】
○上野悠夜(かみつけ ゆうや)
alt

1992年10月5日生まれ
群馬県大泉町出身
AB型
天秤座
右利き
地質学を専攻する。
マイペースでオタク気質の典型的AB型。
両親のケンカに巻き込まれた結果、消極的理由で某中高一貫校に進学した。
趣味がいろいろある中、現実的解として地質学を専攻し、信州大学へと進学。
卒業後は、専攻を生かして地下水の専門家となる。
遙乃と結婚後は、虹口家に婿入りして苗字が虹口となる。
時空理論に詳しい理由は、以下の話にて。
http://sinano470.sakura.ne.jp/ss/jikannressya/jikanressya2.html


○虹口遙乃(にじぐち すみの)
alt

1991年9月12日生まれ
群馬県館林市出身
A型
乙女座
右利き
誰にでも敬語で話すタイプ。精神年齢が割と高めであったことから、ついた渾名はすみ姉さん。
悠夜とは、中学時代の先輩に当たる。
高原学校で同じ班であったこと、部活で同じパソコン室を使う文芸部であったことなどから、通学に利用する電車の中で悠夜と話すようになった。
文芸部であったことから、一応は文系に進んだが、やりたいことを見いだせず、一度受験に失敗して浪人している。
その後、一度は疎遠となっていた悠夜のことを思い出し、心機一転して理転し、悠夜と同じ信州大学の理学部地質科学科に合格する。
卒業後は、悠夜と結婚し、後に娘を設ける。
元文芸部であったことから、小説の執筆が趣味。また、悠夜母からピアノを習っている。
元々料理はさほど得意ではなかったが、大学時代のアパートが悠夜と隣の部屋であったことから、食事を共にする機会が多く、腕を上げていった。
怒ると無言になるタイプ。その場合、悠夜が根負けして謝るパターンが多い。
alt

alt

alt



○虹口舞衣(にじぐち まい)
alt

2018年12月21日生まれ
長野県松本市出身
AB型
右利き
射手座
悠夜と遙乃の長女。
学年トップの学力に加えて悠夜よりも力があるハイスペック娘。
悠夜の友人たちの影響により、昆虫や工業系にも強い。
男勝りなところがあり、スカートは絶対に履かない主義。ただ、肩まで伸ばした髪と母譲りのカチューシャは譲れない。
悠夜の英才教育の結果、普通に男子たちの話題に混ざれる。しかし、そのせいか女性として見られていない節があり、モテないことを嘆いている。(妹の智未曰く、理想が高過ぎ)
どんな趣味や性格をしていようと必ず味方に付いてくれた父親にゾッコン気味。幼いころから悠夜にベッタリであり、そのままに成長した結果、重度のファザコンを患っている。
『虹口舞衣の消失』には、別時間流世界から来た銀河連邦宇宙艦隊特務中尉の舞衣が登場する。こちらの舞衣は、かなり異なる歴史をたどった世界の出身であり、やや性格が異なる。
altalt



○虹口智未(にじぐち ともみ)
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2020年10月3日生まれ
長野県安曇野市出身
A型
右利き
天秤座
悠夜と遙乃の次女。
舞衣の妹と思えないほどふつーの女の子。
舞衣と出身が違うのは、智未の妊娠発覚時に元住んでいた松本市のアパートから安曇野市の一軒家へと引っ越したため。ちなみにこの一軒家は、空き家となって売りに出されていたものをリフォームしたものである。
あまりに性格が違う二人だが、おかげで干渉することが少なく、姉妹仲は良好。
大学時代まで舞衣と同じ部屋だった。
卒業後は、舞衣の勧めもあり、先に結婚することになる。
http://sinano470.sakura.ne.jp/ss/sumino/tomomi/top.html
遙乃の両親をこちらに呼ぶつもりであったが、群馬に残留することを希望したため、両親用に確保してあった部屋に夫婦で住む。
趣味は、料理とピアノ。
料理は母遙乃から、ピアノは祖母(悠夜母)から習った。
髪形は、上で結ぶポニテにすることが多い。
多元時空世界的には、非常に珍しい存在であり、ほとんどの世界では存在していない。
『虹口舞衣の消失』で舞衣が元居た世界は、智未が存在する極めて貴重な世界である。
altalt



とりあえず、ざっとした紹介まで。
Posted at 2021/01/04 23:08:07 | コメント(0) | トラックバック(0) | SS | 日記

プロフィール

「会社からの帰路で強化型リアクターテープ試してみたけどだめだこりゃ。
助手席の根元に差し込んでみたけど、運転席ので十分っぽい。
なんか伸びないし加速のパンチがない。
やっぱ全体の帯電バランス今が最適解なのかもなあ。」
何シテル?   07/29 19:10
長寿と繁栄を。 sinano470です。 名前の通り信州人ですが、厳密には移民勢です。 現在愛車は、SUBARU LEVORG。パーソナルネームは...

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